第5話 この音のせいかな
土曜日。
二人は奏の家で再会した。
妙な緊張感がある。
お互い相手を認めてしまった。
負けたくないという気持ちもある。
そして、あの高揚感。
色々混じっている感覚だ。
颯太はギターケースを肩から下ろした。
「今日は俺も愛器持って来たぜ」
ケースを開く。
「初めて買ったエクスプローラだ」
大切そうに抱えながら笑う。
「ずっと育てて来た」
奏はエクスプローラをじっと見つめる。
「まぁ、いつかGibsonのレスポールを手に入れる予定だけど」
「なんで、レスポール?」
「いや、ギター少年の憧れだろ。レスポール!」
奏は首をかしげた。
「そうか?」
「俺は弾きやすいから使ってるだけ」
「くっ」
颯太は悔しそうな顔をする。
奏はエクスプローラをもう一度見た。
「でも、エクスプローラもかっこいいな」
「直線的で尖ってて」
自分のレスポールを軽く持ち上げる。
「俺のレスポールは曲線的だろ」
「ツインギターしたら映えるな」
「見た目だけじゃん」
「同じギターじゃつまらない」
奏は笑った。
「まぁ、良いや」
ライブ用のレスポールを手に取る。
「早速、やるか」
「おぅ」
奏はパソコンから曲を流した。
「この曲なんだけど、率直な意見を聞かせてくれ」
「どんな映像が思い浮かぶ?」
颯太は少し考えた。
「そうだな。初めは緊張してる。不安と期待が入り混じっている感じ」
「サビ前でロケットが轟音を立てて飛び立つ瞬間みたいな」
「んで飛ぶ。一直線に空に」
「サビは宇宙で重力から解放されて叫んでる感じ」
「そっからはずっと最高」
奏は何度も頷いた。
「うん、わかる。わかるよ」
少し考え込み、続ける。
「それで、これに歌詞があったとしたら誰が歌ってる?」
颯太は目を閉じ、曲を頭の中で鳴らした。
「ツインギターの前に一人いるよ」
「パワフルなシャウトしてる」
「うん」
「でも綺麗な声だ……」
「うん?」
「女性ボーカルのが似合う」
奏は少し黙り込んだ。
「……声が聞こえた?」
「うん」
「すげぇパワフルだった」
「ツインギターに負けないくらいの存在感」
奏は感心したように息を吐く。
「なるほどね」
「初めは男性ボーカルをイメージして作ったんだよ」
「この違いはなんだろう」
颯太はギターを構えた。
「たぶん、この音のせいかな」
高音の綺麗な音が部屋に響く。
奏は目を見開いた。
「なるほど」
「考え変わったわ」
「ならここでハーモニクス入れよう」
「良いね」
その日も二人はギターを弾き続けた。




