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SEED  作者: 泣きピエロToY
第十章「光の中へ」
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第69話 新しい魂の器


新幹線がホームを離れ、ゆっくりと速度を上げていく。

二人は並んで座り、窓の外を流れていく景色を眺めていた。


姫希は足元の紙袋からお弁当を取り出し、颯太へ見せる。


「颯太、新幹線で食べるお弁当これで良い?」


颯太はお弁当へ目を向け、小さく頷いた。


「うん。」


姫希は嬉しそうに笑う。


「初泊まりデート。楽しみだね?」


颯太は窓の外を見たまま答えた。


「うん。」


車窓の景色は少しずつ街並みから緑へ変わっていく。

姫希はその横顔を見つめながら口を開いた。


「今日、アポ無し突撃なんでしょ?」


「うん。」


「不安?」


「ギター受け取って貰えるか。」


颯太は静かに頷く。


「うん。」


姫希はそっと両手を颯太の頬に当て、自分の方を向かせた。

真っ直ぐ目を見て伝える。


「今から不安がってもしょうがないよ。」


「なるようになる。」


「きっと大丈夫。」


姫希の笑顔が颯太に向けられる。


「今日、姫ちゃんと一緒で良かった。」


姫希は照れ笑いを浮かべた。


「うふふ、照れるじゃんか。」


「でも、颯太やっと笑った。」


新幹線は静かに走り続ける。

穏やかな時間が流れる中、姫希がふと思い出したように尋ねた。


「奏どのくらい弾けるようになってるかな?」


颯太は少し考える。


「ん〜、多分ほぼ完璧に弾くと思うよ。」


「ただ、それじゃ足りないって気づき始める頃。」


姫希は首を傾げる。


「足りない?何が?」


颯太は少しだけ言葉を探した。


「魂みたいなものかな。」


姫希はその言葉を胸の中でゆっくり受け止める。

視線は自然と足元のギターケースへ向いた。


「それでこのギターなの?」


颯太は頷く。


「うん。」


「俺はさ、奏の魂のこもったこのレスポールを受け取ったでしょ。」


一度言葉を切る。


「返そうとしても受け取らない。」


「だから奏には新しい魂の器が必要なんだよ。」


姫希は静かに頷いた。


「何でエクスプローラなの?」


颯太は静かに答える。


「エクスプローラは俺がずっと使ってきたし、昔の奏の言葉思い出したから。」


(形が違うから映える。)


(音も違う。)


(また、ステージで並びたい。)


「だからエクスプローラ。」


姫希はギターケースをそっと撫でる。


「このギターには颯太の魂もこもってるんだね。」


颯太はその手に自分の手を重ねた。


「伝わるかな。奏に。」


姫希は優しく微笑む。


「伝わらなければそれは奏の理解不足。」


「そん時はガツンとぶつけてやれば良いさ。」


颯太は苦笑いした。


「相変わらず過激だね。」


姫希はケースへ手を伸ばす。


「私もこのギターに少しだけ魂込めても良いかな?」


「願掛けみたいな感じで。」


颯太は頷いた。


「うん。良いと思う。」


姫希はケースを静かに開き、大切そうにエクスプローラを取り出した。

傷を付けないよう膝の上で裏返す。

財布を開き、一枚のプリクラを取り出した。


初デートの日に二人で撮った、大切な一枚だった。


少しだけ貼る場所を考える。

そして、にやりと笑った。


そっとギターの裏へ貼り付ける。

指先で軽く押さえ、満足そうに頷いた。


「よしっ!完了。」


颯太は貼られたプリクラを見る。

数秒黙っていたが、やがて吹き出した。


「それは多分ダメなやつ。」


姫希も笑う。


「奏の嫌がる顔、楽しみだね。」

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