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SEED  作者: 泣きピエロToY
第九章「アスノヨゾラ哨戒班」
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第63話 窓を開けて


翌日、SNSのニュースは一つの話題で持ちきりになっていた。


『歌い手・姫ちゃんねるの正体が、Justice Judgmentのボーカル・姫希と判明』


『消えた歌姫、ネットに降臨』


ニュースサイトだけではない。

動画サイト、まとめサイト、個人ブログ、SNS。

あらゆる場所でその話題が拡散され、姫希の名前は一気にトレンド入りした。


「再生回数やばいんだけど。」


スマホを見つめた姫希が目を丸くする。


「こんな数字見たことない。」


颯太の家の食卓。

朝食を囲みながら、姫希は何度も画面を更新していた。

見るたびに数字が増えていく。


「お母さん、これでネット代と食費払えそうだよ。」


颯太の母は味噌汁を運びながら微笑む。


「まぁ、姫希ちゃん頑張ってるわね。」


「食費は良いわよ。」


「颯太が払うから。」


「うふふ。」


「えっ?」


颯太は箸を止める。

姫希は吹き出した。


その数日後。

話は、とんでもない方向へ転がっていった。


『JJ姫希 ギタリスト颯太Zと熱愛か!!』

『JJ姫希 颯太Zの家に通い妻状態!!』


ネットニュースは瞬く間に拡散され、SNSは祭り状態になった。


芸能人なんてこんなもの。

颯太Zとか名前ふざけすぎ。

熱愛ショック。

本当なの?

通い妻ってマジ?

JJ復活よりそっちがニュースかよ。


「なんでこうなる!」


姫希はスマホを抱えたまま叫んだ。

コメントは止まらない。


憶測。

決めつけ。

噂。


事実を知らない人たちが、好き勝手に物語を作り始めていた。


姫希はため息をつく。


「なんかみんな、知らないくせに言いたい放題だね。」


隣でスマホをのぞき込んでいた颯太は首をかしげた。


「そんなにZ変?」


姫希は思わず笑ってしまった。


「そこじゃない。」


その翌日。

今度は颯太の家に報道陣が押しかけていた。


玄関前にはカメラ。

道路には中継車。

インターホンが何度も鳴る。


「姫希さん! 颯太さん! いらっしゃるんですよね!」


「少しだけコメントお願いします!」


「熱愛報道は本当なんですか!」


「お二人は交際されているんですか!」


「説明責任は?」


「姫希さん!」


「出てきてコメントください!」


家の中まで、その声は響いていた。

姫希はカーテンの隙間から外を見て、小さくつぶやく。


「家から出られないんですけど。」


申し訳なさそうに振り返った。


「お母さん、ごめんね。」


颯太の母は腕を組み、玄関へ向かおうとする。


「私が一言言ってくるわ!」


姫希と颯太は同時に立ち上がった。


「それはやめて!」


姫希はソファに座り込んだ。


「やばい……。」


「迷惑かけてる。」


「泣きそう。」


その時だった。

家の前へ数人の男たちが現れ、記者たちを押し返すように間へ入っていく。


その直後。

姫希の携帯が鳴った。


画面には、『大地』の文字。


「そっちに後輩送った。」


「隙見て逃げ出せ!!」


「焼肉屋の二階空いてるから、そこへ行け!」


短く、それだけだった。

姫希は携帯を胸に抱く。


「ありがとう……大地さん。」


涙がこぼれた。

姫希は泣いていた。


颯太は拳を握り締める。


「あいつら……姫ちゃん泣かせた。」


「許せない。」


「でも何も出来ない。」


「悔しい。」


唇を噛み締めることしか出来なかった。


その頃。

姫ちゃんねるのコメント欄も荒れていた。


誹謗中傷。

憶測。

心ない言葉。


しかし、それ以上の速さで応援のコメントが流れていく。


姫ちゃん負けるな!

応援してる!

あなたは悪くない!

また歌を聞かせて!

JJの姫はそんなことで負けない!

俺たちは待ってる!


そのコメントを見つめながら、姫希は涙をぬぐった。

ゆっくり立ち上がる。

もう表情に迷いはなかった。


「もう泣かない。」


「戦うよ!」


颯太を見る。


「颯太!」


「spicy girl弾いて。」


姫希はカーテンへ向かった。

勢いよく窓を開ける。


「窓開けて歌ってやる!!」

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