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SEED  作者: 泣きピエロToY
第八章「遠く遠く」
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第60話 強すぎる刺激は、もう毒だろ

打ち上げの賑わいが続く居酒屋『音民』。


料理をつまみながら談笑する中、姫希はジョッキをテーブルへ置いた。


「まだまだ聞きたいことがあるんだけど。」


奏は箸を止め、姫希を見る。


「なんだ?」


姫希は迷いなく尋ねた。


「Xって何?」


奏は間髪入れずに答える。


「改名した!」


その瞬間、達磨と大地が顔を見合わせ、ニヤニヤし始めた。

姫希は呆れたように眉をひそめる。


「経緯は?」


奏は少し胸を張る。


「右から左に変わっても、上と下が変わっても。転がっても、XはXだろ。」


一度言葉を切る。


「俺は俺だ。」


そして真面目な顔で締めくくる。


「だから、奏X。」


「かっこいいだろ。」


大地は深いため息をついた。


「なんなんだ、お前ら。」


そう言って今度は颯太を指差す。


「こいつも最近改名した。」


「颯太Zだと。」


「まぁ、意味は今お前が言ったやつとほぼ同じ。」


達磨は呆れ半分、笑い半分の表情を浮かべる。


「別々の場所にいても、頭ん中は同じか? 厨二病。」


ミホも困ったように笑った。


「やめた方が良いって言ったんだけど……。」


姫希は額に手を当てる。


「ただただダセェ。泣けてくるわ。」


奏は真顔のまま言い返した。


「Xだぞ。」


「謎の男風でかっこいいだろ。」


姫希は奏を見つめ、呆れたように笑う。


「マジで言ってることが颯太。」


テーブルのあちこちから笑い声が漏れた。

達磨はジョッキを置き、ふと思い出したように口を開く。


「じゃあ、バンド名は?」


奏は颯太の方へ視線を向けた。


「颯太に封筒送っただろ。」


颯太は苦笑しながら頷く。


「うん。謎の男からね。」


奏は笑みを浮かべる。


「絶対リアクション起こすだろ?」


「だから、その返事として『Re:』にした。」


姫希は間髪入れずに言った。


「わかりづらい。」


店内にまた笑いが広がる。

大地は隣の男性へ視線を向けた。


「キーボードの人は?」


奏は紹介する。


「もう引退したけど、元プロミュージシャンの本田さん。」


本田は軽く頭を下げた。


「どうも。」


「今回の話を聞いて面白そうだったから。」


「奏君が曲の質を上げたいって、泣きながら頼んできて。」


奏はすぐに否定する。


「泣いてねぇ。」


本田は笑いながら肩をすくめた。

姫希は再び奏へ視線を戻した。


「あと、poison girlってどういう事?」


「spicy girlは私だって颯太が言ってた。」


「poison? 毒? 私が?」


「納得できるような説明しなよ。」


さすがの奏も少し困ったような表情になる。

額にうっすらと冷や汗を浮かべながら口を開いた。


「お前は周りへの刺激が強すぎるんだよ。」


姫希は黙って聞いている。

奏は続けた。


「強すぎる刺激は、もう毒だろ。」


数秒の沈黙が流れる。

姫希はゆっくりと立ち上がった。


「つまり私は毒って事か。」


奏は何も言えない。

姫希は奏を指差した。


「よし、この喧嘩買った。」


「表出ろ。」


奏は慌てて両手を振る。


「それだよ。」


「今、毒出てる。」


その一言で、店内の笑い声はさらに大きくなった。

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