↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SEED  作者: 泣きピエロToY
第八章「遠く遠く」
PR
57/84

第57話 この音の出し方は


対バン当日。


長野県の街中にあるライブハウスには、開演前から集まった観客の熱気が充満していた。


重低音が壁を震わせ、開いた扉からはギターの音が漏れ聞こえてくる。


JJの五人が会場へ足を踏み入れた時には、すでに『Re:』のライブが始まっていた。


ステージには五人のメンバー。


ボーカル。


女性ギター。


キーボード。


ドラム。


そして、レフティベース。


五人の音は一つにまとまり、初めて見るバンドとは思えないほど完成度が高い。


達磨は腕を組み、レフティベースから目を離さなかった。


「……あのレフティベース、かなりうまいぞ。あいつだけ異色だ。」


低音の一音一音に迷いがない。

まだ荒さは残るものの、演奏には強烈な存在感があった。


颯太もステージを見つめながら頷く。


「あの女性ギターもかなり上手だよ。」


鋭いカッティング。

歌を引き立てるバッキング。

必要なところだけ前へ出るソロ。

どれも無駄がなかった。


その横で、姫希だけは演奏を見つめたまま、目に涙を浮かべていた。


颯太はその様子に気付き、小さく声を掛ける。


「どうしたの?」


姫希は震える指で女性ギタリストを指差した。


「あのギタリスト……ミホだよ。」


颯太たちは驚いた表情でステージを見る。


「昔、私が組んでたバンドのギター。」


目に浮かんだ涙を拭い、嬉しそうに笑う。


「引っ越ししちゃって解散したバンドの。」


「またギター弾いてる……。」


「良かった……。」


大地が思わず口を開く。


「なんでそのミホちゃんが『Re:』に?」


その瞬間だった。


颯太の口元がゆっくりと緩む。

まるで何かに気付いたように、楽しそうに笑っていた。


「達磨さん、あのベース上手いの?」


達磨は即答する。


「かなりな。まだ荒いけど。」


颯太はステージから目を離さない。


「あの人、ベースが本職じゃないよ。」


達磨が眉をひそめる。


「なんでわかる?」


颯太は静かに答えた。


「レフティベース。帽子。メガネ……顔はわからない。」


視線をベーシストへ向けたまま、小さく笑う。


「でも、この音の出し方は間違いなく奏だ。」


その言葉に、達磨も大地も姫希も一斉にレフティベースを見る。


しかし、帽子を深く被り、メガネを掛けたその姿からは顔までは判別できなかった。


その時だった。

演奏が終わり、ボーカルがマイクを握る。


「皆さん、お待ちかね!」


会場から大きな歓声が上がる。


「JJが到着だ!」


さらに歓声が大きくなる。


ボーカルは不敵な笑みを浮かべた。


「一曲勝負、始めるぜ!」


会場の空気が一変する。


「――『poison girl』!!」


ドラムが鳴り響き、鋭いギターリフが会場を切り裂く。


いきなり始まった、音だけのバトル。

ミホは汗を飛ばしながら必死にギターを奏でる。


レフティベースは重厚な低音でバンド全体を支え、ドラムとキーボードが隙間なく音を埋めていく。


誰一人として手を抜かない。

一曲にすべてをぶつける演奏だった。


そして最後の一音が鳴り終わる。


余韻が会場を包む中、『Re:』の五人は一斉にJJへ向かって指を差した。


「次は、お前たちの番だ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。