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SEED  作者: 泣きピエロToY
第七章「STAY GOLD」
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第46話 また、あの景色みたいな


「この間の曲、アレンジできたよ。」


颯太は少し緊張した表情でギターを抱えたまま言った。


「聞いてもらって良い?」


姫希の表情がぱっと明るくなる。


「もち。楽しみなんだけど。」


その期待に満ちた笑顔を見て、颯太は小さく深呼吸をした。


ゆっくりとギターを構え、アレンジした曲を弾き始める。


部屋の中に、新しく生まれ変わったメロディーが流れる。


以前の自分なら、もっと自然に指が動いていた。


もっと思い切ったアレンジもできていたはずだ。


それでも最後まで弾き終えると、颯太は静かに息を吐いた。


まだ、あの頃の感覚には程遠い。


それでも、一曲を最後まで形にできたことで、胸につかえていたものが少しだけ軽くなった気がした。


しばらく黙って聴いていた姫希が、大きく頷く。


「凄いじゃん。かっこいい。」


その一言に、颯太は照れくさそうに笑う。


「そうかな。」


「うん。」


姫希は迷いなく答えた。


「まだ本調子じゃないのは知ってる。でも、出来たじゃん。」


その言葉には無理に励ますような響きはなかった。


ただ、目の前の結果を素直に喜んでいた。


「歌いたいから、もう一回弾いて。」


「オッケー。」


颯太は笑いながらギターを構え直す。


姫希はリズムを取りながら歌い始めた。


気になるところがあるたびに二人で止まり、少し直して、もう一度合わせる。


そんなやり取りを何度も繰り返した。


納得のいくテイクが録れると、姫希はパソコンの前に座り、動画をアップロードする。


画面のバーが少しずつ進んでいく。


そして、投稿完了の表示が現れた。


姫希は思わず声を上げる。


「うわぁ、初投稿。」


少し照れ笑いを浮かべる。


「緊張するね。」


颯太はその様子を見ながら笑った。


「初ライブみたいな感じ?」


姫希は少し考えてから首を横に振る。


「それとは違うかな。」


画面を見つめたまま続ける。


「今回は声だけで評価されるわけじゃん。」


小さく息を吐く。


「私の歌が通用するのか不安で。」


その言葉を聞いた颯太は優しく笑った。


「大丈夫。」


姫希が顔を向ける。


「バンドに誘ったとき、俺も奏も姫ちゃんの声にビビッときたから。」


あの日、ライブハウスで初めて聴いた歌声が頭に浮かぶ。


「間違いないよ。」


姫希は少し照れたように笑った。


「ありがと。」


しかし次の瞬間、颯太は苦笑する。


「それより、俺のアレンジ受け入れてもらえるか心配だよ。」


姫希は呆れたように肩をすくめた。


「JJのギタリストが情けないこと言うんじゃない。」


そして、いつもの調子で笑う。


「ダメなら私がやり直しさせてるから。」


その言葉に、颯太は思わず吹き出した。


「厳しいな。」


「当然です。」


姫希も笑いながら答える。


二人の笑い声が部屋いっぱいに広がった。


笑いが落ち着くと、颯太はふとギターへ視線を落とす。


(懐かしい。)


奏と二人で夜遅くまで曲を作っていた日々。


何度も弾き直して、何度もアレンジを変えて。


一曲できるたびに笑い合っていた。


(奏と二人で曲を作っていたのが、全ての始まりなんだよな。)


自然とあの頃の景色が頭に浮かぶ。


ライブハウスの照明。


歓声。


並んでギターを弾く奏。


歌う姫希。


後ろでリズムを刻む達磨と大地。


(また、あの景色みたいな。)


颯太は心の中でそっと呟く。


(みんなで……。)

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