第34話 雷鳴が響く
『Impact』が終わった。
最後の一音が消えた瞬間、それまで渦巻いていた歓声が嘘のように止む。
会場から、一切の音が消えた。
何千もの視線がステージへ注がれる。
観客は次に何が始まるのかを待っていた。
颯太はギターを構えたまま、一歩マイクへ近づく。
「みなさん、初めまして。」
「Justice Judgmentです。」
客席から大きな拍手が起こる。
颯太は空を見上げ、少し笑った。
「ちょっと天気悪くなって来そうですね。」
黒い雲が少しずつ空を覆い始めていた。
それでも颯太は笑顔を崩さない。
「でも、一気に行きます。」
ギターを握り直す。
「次――『KAMINARI』。」
その瞬間だった。
遠くの山の向こうで雷鳴が響く。
そして一筋の稲妻が空を裂いた。
まるで曲名に応えるような自然の演出。
観客がどよめく。
しかし、その雷鳴が消えるより早く。
奏と颯太のツインギターが鋭いリフを叩きつけた。
轟音が会場を飲み込む。
悲鳴なのか。
歓声なのか。
叫びなのか。
もう誰にも分からない。
観客の声すら巨大な音の渦へ飲み込まれ、第四ステージ全体が一つの生き物のように脈打っていた。
その頃、別のステージではスタッフのアナウンスが流れていた。
「落雷の危険があるため、本日のライブは中止とさせていただきます。」
行き場を失った観客たちは、音のする方向へ歩き始める。
そしてたどり着いたのは第四ステージだった。
「あっち、まだやってる!」
「JJってバンドらしい!」
次々と人が流れ込み、客席はさらに膨れ上がる。
後ろへ。
さらに後ろへ。
どこまで人がいるのか分からない。
第四ステージとは思えない光景が広がっていた。
『KAMINARI』が終わる。
これで三曲。
誰一人として熱は冷めていなかった。
姫希がマイクを握る。
「flagshipのメンバーいるかー!!」
客席のあちこちから歓声が返ってくる。
姫希は満面の笑みで叫んだ。
「昨日は嬉しかったぜ!!」
「愛してるぜ!!」
「夏フェスーーー!!」
その言葉に観客の歓声が爆発する。
拳が一斉に突き上がり、足踏みと歓声が重なって、まるで会場そのものが揺れているようだった。
姫希は笑顔でマイクを達磨へ渡す。
達磨はゆっくり前へ出る。
ベースを構え、大きく息を吸った。
「一番後ろ!!」
「聞こえるかーー!!」
「うおおおおお!!」
返ってきた歓声に達磨は不敵な笑みを浮かべる。
「あと二曲だ!!」
「聞いてくれ!!」
一度ベースを強く鳴らした。
「俺らの始まりの曲。」
「『DIVE』。」
そして会場を見渡し、静かに続ける。
「そして――」
「俺らの本質。」
「『ONI』。」
ベースが低く唸る。
その音を合図に、JJ最後の二曲が始まろうとしていた。




