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SEED  作者: 泣きピエロToY
第五章「閃光」
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第32話 明日もここに来て!


夏フェス当日。


広大な会場にはいくつもの特設ステージが設置され、朝からさまざまなバンドがライブを繰り広げていた。どこを歩いても音楽が鳴り響き、観客は目当てのバンドを追いかけるように会場を行き来している。


颯太はメインステージを見上げながら感心したように呟いた。


「やっぱテレビ出るようなバンドは人気が凄いね。」


何千人もの観客が拳を突き上げ、一体となって盛り上がっている。


姫希もその光景を眺めながら頷いた。


「そうだね。ステージも広いし豪華だね。」


「私たちの第四ステージなんて公園かって感じだったし。」


思わず二人で笑ってしまう。


颯太は肩をすくめた。


「まぁ、良いじゃん。」


「大事なのは中身なんだし。」


その言葉に姫希は優しく笑った。


二人は屋台を眺めたり、他のバンドの演奏を少し立ち止まって聴いたりしながら、フェス会場をゆっくり歩いていた。


すると颯太がポケットから小さなお守りを取り出した。


「姫ちゃん、これお守り。」


「明日台風来ないように。」


そう言って差し出したのは交通安全のお守りだった。


姫希は受け取ると、くすっと笑う。


「うん、颯太らしい。」


「ありがと。」


少しお守りを見つめてから、小さく続けた。


「気圧の変化は喘息持ちにはきついから。」


「助かる。」


颯太は照れくさそうに笑うだけだった。


バンドメンバー全員で過ごす時間も好きだった。


それでも、姫希と二人だけで過ごすこの時間は、颯太にとって少しだけ特別な時間だった。


やがて夕方になり、第四ステージから歓声が聞こえ始める。


いよいよflagshipのライブだ。


仲間でもあり、ライバルでもある彼らのステージだけは見逃せない。


二人は少し駆け足で第四ステージへ向かった。


到着すると、すでに奏、達磨、大地が待っていた。


達磨が腕を組みながら笑う。


「おせえ。」


「フェス前日にデートとかうかれてんじゃねえ。」


颯太は慌てて首を振る。


「デートじゃないよ。」


耳まで赤くなっている。


その様子を見た姫希は、いたずらっぽく笑った。


「デートじゃなかったんだ。」


まさか本人からまで言われるとは思わず、颯太はさらに照れてしまう。


奏は苦笑しながらステージへ視線を向けた。


「flagship始まるぞ。」


五人は最前列近くに並び、仲間のライブを見届けた。


ライブは大きな歓声に包まれながら終盤へ進んでいく。


そして最後のMCの前。


一度ステージ袖へ下がったflagshipのメンバーが再び姿を現した。


全員が着ていたのは、JJのTシャツだった。


観客がざわめく。


ギターボーカルはマイクを握り、笑顔で口を開いた。


「明日、同じ会場、同じ時間にJustice Judgmentのライブがあります!」


客席から拍手が起こる。


「彼らはヤベェぞ!」


「見逃したら絶対損する!」


「明日もここに来て!」


「お楽しみに!!」


最後のMC。


普通なら最後の曲を紹介する時間だった。


しかし彼らは、その時間をすべてJustice Judgmentの宣伝に使ってくれた。


ステージを見つめる五人の胸が熱くなる。


誰一人として言葉は発しない。


それでも分かった。


五人全員の熱量が、一気に高まっていく。


明日のライブへ向けて。


もう全員のスイッチは入っていた。

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