第27話 俺も好きに弾きました
翌日の昼下がり。
達磨と大地は、奏の家へ向かって歩いていた。
「奏の様子でも見に行こうぜ。」
達磨が何気なく口を開く。
「昨日のプレイ、いつもと違かった。なんか吹っ切れた感じがしたし。」
その言葉に、大地も小さくうなずいた。
「そうだな。あいつまで暴走したら大変だよな。」
少し考えてから続ける。
「颯太の様子は仲間に見に行ってもらうわ。」
二人はそのまま商店街へ入った。
昼間の商店街は買い物客でほどよく賑わい、どこか穏やかな空気が流れている。
すると前の方から、見慣れた姿が歩いてきた。
「あれ……。」
達磨が目を細める。
「奏じゃねぇか。」
ギターケースも持たず、手ぶらで歩く奏がこちらに気付いた。
「おっす。調子はどうよ?」
達磨が手を上げる。
奏も軽く手を挙げて応えた。
「いつも通りだけど。なんかあった?」
大地が一歩前に出る。
「いや、奏の昨日のプレイが気になって。いつもと違う感じがしたから。」
その言葉に、奏は少し笑った。
「やっぱわかりました?」
そして昨日のライブを思い返すように空を見上げる。
「昨日の颯太はヤバかった。想像の斜め上いってて。」
少し間を置いて続ける。
「だから合わせるのやめたんだ。」
達磨は苦笑いする。
「そうだろうな。あれは予想できねぇ。」
奏もうなずいた。
「だから俺も好きに弾きました。」
その表情に迷いはない。
「結果、さらに良くなりました。」
そして歩いてきた理由を思い出したように笑う。
「今、散歩しながら思い出してて、『Impact』と『KAMINARI』はまだまだ進化できると思います。」
達磨は感心したように短く返す。
「おぅ。」
少し沈黙が流れたあと、今度は奏の方から質問した。
「それより、大地さんの昔の仲間って何者ですか?」
大地は少しだけ笑う。
「ただのかわいい後輩だよ。」
奏は首をかしげる。
「そんな感じはしなかったですけど。」
すぐに肩をすくめた。
「まぁ、いいや。」
そして笑顔で続ける。
「お礼したいんで、次のライブ呼んでください。」
軽く手を振る。
「それじゃ。」
奏はそのまま商店街の奥へ歩いていった。
後ろ姿を見送りながら、達磨がぽつりとつぶやく。
「いつも通りだと。」
少し笑って続けた。
「才能って怖いな。」
大地も苦笑する。
「俺らは帰って練習しますかね。」
空を見上げながら肩を回した。
「体動かさないと逆にやばい。」
達磨は大きくうなずく。
「そうだな。」
二人もまた、それぞれの練習へ向かって歩き出した。




