第24話 今日、俺らは鬼だから
ライブ当日。
ここはいつものライブハウスじゃ無い。
一見普通のライブハウスだが、雰囲気が物々しい感じがする。
達磨
「飲まれるなよ。ライブをやりに来たんだ。無事に帰るぞ。」
大地
「目を合わせるな。MCも煽らない方が良い。」
颯太
「了解。」
五人は姫希を囲むような布陣で控え室へ入る。
控え室には、すでにファッハプのメンバーがいた。
「おぅ、ダルマちゃん。」
「今日は解散ライブかい?」
「解散したらそのベースくれよな。もう使わないだろ。」
大きな笑い声を残し、ファッハプは控え室を出て行った。
颯太
「そのベース、いわくつき?」
達磨
「バカ違うよ。ただの貰いもんだ。」
奏
「それにしては大事にしてるよな。」
大地
「この箱で人気あったバンドのベースから譲り受けたんだよね。当時、達磨はボロボロのベース使ってた。」
そう言うと、大地は当時を思い出したように笑う。
達磨
「このベースは特別なんだよ。」
奏
「こだわり大事だと思うぞ。俺、レスポールだし。颯太はエクスプローラだしね。」
大地
「俺もずっとスティックだ。」
少しずつ緊張がほぐれていく。
その時、控え室の扉が開き、一人の男が入ってきた。
「大地さん。建物周りは完全に囲みました。中にも三人程入れられます。」
大地
「了解。迷惑かけるけど頼むわ。」
「はい。」
男は一礼すると静かに控え室を出て行った。
颯太
「大地さんて何者?」
姫希
「実は一番怖いのは大地さんだったって事。」
大地
「怖く無い、怖く無い。俺はただのドラマー。」
やがてスタッフがJJを呼びに来る。
いよいよ出番だった。
五人は立ち上がり、ステージへ向かう。
照明を浴びてステージへ上がった瞬間、客席からいきなりヤジが飛んだ。
「クソバンドがー! 引っ込めー!」
「ボーカルちゃん! 俺このあと予定空いてるよー!」
「ダルマー! 金返せー!」
「うちのバンドの運転手やらせてやるぞー!」
えげつないヤジだった。
達磨が言い返そうとした、その瞬間。
颯太がマイクを握る。
姫希が自分の後ろへ下がったことを確認すると、客席を真っ直ぐ見据えた。
「まだ演って無いけど、今日これが最後のMCだ。」
会場が静まり返る。
「今日、俺らは鬼だから。」
一呼吸置き、さらに続ける。
「お前らに休憩は与えない。俺らの音に潰されろ。」
言い終えると、颯太は客席へ背を向けた。
完全にキレていた。
その背中を見た奏は小さく苦笑する。
(もう、暴走してんのかよ。)
そう思いながらも、すぐに口元を緩めた。
「颯太、遠慮はいらない。ぶちかますぞ。」
達磨と大地は顔を見合わせる。
「やっちまったな。」
そう言いたげに苦笑いを浮かべながらも、互いに覚悟を決めた。
姫希は颯太へ向かって親指を立てる。
姫希
「颯太やるじゃん、最高だぜ!」
そう言うと、満面の笑みでステージ前方へ走り出した。




