↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SEED  作者: 泣きピエロToY
第四章「努努-ゆめゆめ-」
PR
21/84

第21話 ここがゴールじゃないから


Justice Judgment――通称『JJ』は、新しいセットリストにも慣れ、ライブを重ねていた。


ライブの本数は確実に増え、初めて見る顔よりも見覚えのある顔が客席に並ぶことが多くなった。


ライブハウスのスタッフにも名前を覚えられ、終演後には「次も楽しみにしてる」と声を掛けられる。


そんなある日の練習。


スタジオへ入ってきた奏は、一枚の封筒を手にメンバーを見渡した。


「雑誌の取材来てるけど受ける?」


ギターを肩から下ろしていた達磨と、マイクスタンドを調整していた姫希が同時に顔を上げる。


達磨・姫希

「どこの雑誌?」


奏は封筒の宛名を見ながら答えた。

「ファイヤーGIGて雑誌。」


その名前を聞いた瞬間、達磨の表情が一変する。


「うぉースゲー。ファイヤーから取材ってマジか。」


姫希も思わず目を丸くした。


「マジ凄い。表紙乗る?」


奏は苦笑いを浮かべる。


「内容は知らない。次のライブ後どう?て聞かれた。」


ドラムセットの後ろから話を聞いていた大地が頷く。


「受けようぜ。」


颯太は少し照れたように笑った。


「本棚に並んでる雑誌だよ。それに載るの? どうしよう。」


楽器店で何度も手に取った音楽雑誌。

そこへ自分たちが載る。

そう考えるだけで、胸の奥が落ち着かなかった。


四人の反応を見た奏は、小さく頷く。

「じゃあ、返事しとく。」


その一言で話はまとまった。

そして迎えたライブ当日。


ステージ袖には機材を運ぶスタッフが行き交い、客席からは開演を待つざわめきが聞こえてくる。


チューニングを終えた奏は、メンバーを見渡した。


「終わったら取材な。」


みんな

「りょーかい。」


返事はいつも通り。

達磨も、大地も、姫希も、普段と変わらない。

だが、一人だけ落ち着きなく周囲を見回している人物がいた。


颯太だった。

奏はその様子を見て吹き出す。


「みんないつも通りで安心した。」


そう言って颯太を見る。


「落ち着きないのもいつも通り。平常運転だ。」


図星を突かれた颯太は苦笑いを浮かべるしかなかった。

そのやり取りを見ていた達磨が笑いながら口を開く。


「奏は雑誌全然意識してないな。

なんでだ?」


奏は迷いなく答える。


「ここがゴールじゃないから。」


短い言葉だった。

しかし、その一言だけで十分だった。

張り詰めていた颯太の肩から力が抜ける。


そうだ。


雑誌に載ることが夢だったわけじゃない。

自分たちが目指している場所は、もっとずっと先にある。


颯太は静かに深呼吸をすると、いつもの笑顔を取り戻した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。