第2話 お前ならどうアレンジする?
水曜日の放課後。
駅で待ち合わせた颯太は、そのまま奏の家へ向かった。
「ここ」
足を止めた先にあったのは、大きな門構えの家だった。
「……でか」
思わず声が漏れる。
普通の一軒家ではない。
音楽一家だとは聞いていたが、颯太の想像をはるかに超えていた。
玄関をくぐり、廊下を進む。
「こっち」
奏に案内され、二階の部屋へ入る。
そこは完全に音楽のための部屋だった。
壁にはギター。
アンプ。
エフェクター。
パソコン。
そして、スタンドに並ぶ三本のレスポール。
颯太は思わず見入る。
「好きなの使え」
奏は三本を指差した。
「作曲用、録音用、ライブ用」
そう言うと、自分は迷うことなくライブ用のレスポールを手に取る。
アンプのスイッチを入れた瞬間だった。
何の説明もなく、いきなり弾き始めた。
颯太は一瞬だけ驚く。
でも迷わない。
三本の中から作曲用のレスポールを手に取る。
チューニングだけ確認すると、奏のギターへ即興で重ねた。
コードを追う。
フレーズを返す。
相手が投げれば、自分も返す。
言葉はいらなかった。
音だけで会話が続いていく。
奏がニヤッと笑う。
その表情を見て、颯太も笑った。
演奏が終わる。
「聞いてほしい曲がある」
奏は椅子に座り、パソコンを立ち上げた。
画面いっぱいにファイルが並ぶ。
日付。
数字。
それだけ。
あまりにも無機質な名前が、ずらりと並んでいた。
奏は画面をしばらく見つめると、その中から一つのファイルを選んだ。
「これ」
再生ボタンを押す。
部屋にギターを中心とした一曲が流れ始める。
最後まで聴き終えると、奏は颯太を見た。
「自信作」
短い一言だった。
少しだけ間を置いて続ける。
「お前なら、どうアレンジする?」
颯太は答えず手を差し出した。
「ヘッドホン貸して」
奏は机の上のヘッドホンを渡す。
颯太はそれを耳に当て、もう一度再生した。
一回。
二回。
三回。
何度も何度も同じ曲を聴く。
目を閉じる。
リズム。
コード。
メロディ。
音の流れを、一つも逃さない。
まるで曲そのものを脳に焼き付けるかのように、何度も繰り返し聴き続けた。
奏は何も言わず、その様子を見ていた。




