第13話 バンド名きめてなくない?
スタジオに集まった三人は、アンプの電源を入れ、それぞれ準備を進めていた。
チューニングを終えた颯太がギターを肩に掛けたまま奏を見る。
「何曲くらいあればいいの?」
奏は譜面を整理しながら答えた。
「ライブハウスなら三曲から五曲ってところだな。」
「そんなもんなんだ。」
「持ち時間にもよるけど、初ライブなら無理に詰め込まなくていい。」
姫希は椅子に腰掛けたまま二人のやり取りを聞いていた。
奏は譜面を机に置き、二人へ向き直る。
「中途半端な状態ではやりたくない。まずは三曲完成させる。」
「三曲じゃ間がもたないかもよ。」
姫希がそう言うと、奏は少しだけ笑った。
「そこは姫希のMC次第だ。」
「えっ、私?」
突然話を振られた姫希は目を丸くする。
「プレッシャーかけないでよ。」
「期待してる。」
奏は軽く笑う。
颯太も思わず吹き出した。
「アンコール用は?」
「まだいらない。」
奏は即答する。
「まずは三曲をちゃんと完成させることが先だ。」
颯太は納得したように頷いた。
「三曲か……。『DIVE』は決まりとして、あと何やる?」
「この曲、聴いてみて。」
奏は機材を操作し、デモ音源を流した。
タイトルは『ONI』。
力強いギターが鳴り響き、重厚なリズムがスタジオを満たす。
曲が終わると静寂が戻った。
「どう?」
奏が二人を見る。
「いいね。」
颯太は素直に頷く。
姫希も小さく頷いた。
「次はこれ。」
続いて流れたのは『Justice』。
こちらもメタル調の激しい曲だった。
最後まで聴き終えた颯太は腕を組み、小さく考え込む。
「三曲とも激しい曲でやるの?」
「何か問題あるか?」
「この並びなら、『Justice』はアレンジを変えたい。」
奏は何も言わず、颯太を見る。
颯太はギターを持ち直し、静かに弦を弾き始めた。
原曲とは違う入り方。
バラード調にアレンジされた『Justice』は、激しさを抑え、じっくりと聴かせるような雰囲気へと変わっていた。
最後の音が静かに消える。
奏は腕を組んだまま少し考え込む。
「全然違う曲になったな。」
颯太は苦笑した。
「でも、言いたいことは分かった。」
奏はゆっくり頷く。
「少し時間をくれ。」
話が一区切りすると、姫希が口を開いた。
「ライブはいつ頃からやる?」
「『DIVE』と『ONI』、それにコピーを一曲。とりあえず三曲だな。」
奏はカレンダーへ目を向ける。
「来月頭はどうだ?」
「うん。絶対間に合わせる。」
姫希は迷いなく答えた。
「どうにかなるっしょ。」
颯太は笑う。
その言葉に奏はため息をついた。
「お前が一番心配だ。舞い上がって暴走するなよ。」
「暴走しても奏なら大丈夫だろ?」
「バカ。」
奏は笑いながら首を振る。
「暴走がバンドのバランスを崩すこともある。しっかりやってくれ。」
「了解です。」
颯太は笑顔で返事をした。
その時、姫希が思い出したように言った。
「そういえば、バンド名決めてなくない?」
奏と颯太は互いに顔を見合わせる。
そして同時に答えた。
「「Justice Judgment。」」
姫希は一瞬固まり、大きくため息をついた。
「ダサっ。ネーミングセンスのかけらもないね。」
「じゃあ何がいい?」
奏が聞く。
姫希は少し考えてから笑顔になる。
「Pretty Princessとか。」
「却下。」
奏は一秒も迷わず答えた。
「早っ!」
姫希が頬を膨らませる。
颯太は笑いながら言う。
「姫ちゃんのセンスも俺らと同等で安心した。」
「……同じか。」
姫希は肩を落とし、三人は声を上げて笑った。




