その鳥、極彩色につき
※この先注意。
男性キャラクター同士の過度のスキンシップ描写があります。苦手な方は飛ばしてください。
教会の椅子から入った空間をまっすぐに進むと、暗がりの通路に出てきた。煉瓦で出来た通路の道の真ん中には水が流れ、何とも不気味な場所だ。
「はぁ……また君か僕の睡眠を妨げるのは。火力調整と言う言葉を君は知ってるのかなシオン?僕は前に教えただろ、それじゃあ護衛対象を巻き込んでしまうし、君のパーツが焼ききれちゃうよ」
「ウワッ!?びっくりした……」
ここの地下の人達は音もなく近づいてくる人ばっかりなのかな。中性的な顔立ちに水色ベースのくせっ毛。前髪とインナーカラーにピンクのメッシュが入っている。それに、ぶかぶかの白衣を肩からずらして羽織っている。……何だろうこのマスコットみたいな子は。こんな少年が教会に居たんだ……え、しかも今飛んでた?
「はじめまして。えっと、かわいいってよく言われませんか?」
「いやいや、そんな事は無いよ。お世辞でもありがとう」
ニコリと笑みを浮かべながら会釈をする。本当にかわいい人は言われ慣れてしまうのだろう。
「ミニュイ、ん〜!心配してくれるの、ところで俺の事、見てた?ねぇ、ねえってば」
今のカザリさんからは犬耳としっぽが見える。目にも見えない速さで大好きな主人であるミニュイに飛びつく大型犬のようだった。
「はいはい。あぁもう、重たい!おい、もたれかかって来るな。機体の温度上昇を感知したから来てみたら……全く、自分の身体は大切にしなよ〜」
兄弟のように気遣うミニュイと呼ばれる少年。カザリさんのことは大切な存在なのだろう。
「あ〜もう、ミニュイってば久しぶりに会えたのに塩対応すぎるよ!……でも、研究の邪魔しちゃったかな、ごめんね?」
「いや、それは一旦区切りもつけたし問題無い。僕が気になったのはもっと他のことだよ」
「えっと、これは緊急事態だ。こんなの……夜中に入ってくる向こうが悪いでしょ」
「そうかな、向こうにも夜中を選んだ理由があるんだろ。で?これはどう説明するつもりかな」
ミニュイと呼ばれる少年はカザリさんによって破壊された通路を指さし、キッと睨む。
「う、これはどうしようかなぁ。アハハハ本当に……はい」
「ハァー……君はまた神様に四肢欠損にでもされたいのか。天使が神聖な教会を破壊するってどうな……のわッ!?って抱っこするな!」
「悪かったよ、反省してるから。この通ーり!」
カザリさんのスキンシップってオーバーなとこあるよなぁ。あと片手で軽々持ち上げちゃったり腕の力とかどうなってるんだろ。
「いやぁ、仲睦まじいことで。後はお二人でごゆっくり……」
「あ、ちょっと四季先生〜!助けてくれよシオンが!」
私が先に歩き始めてもまだ続く言い合いにはさすがに付き合っていられない。というかさっきから何を見せられているんだろう。
こういう時気まずいから……帰っていいかな。
「いやぁ……ミニュイの調整が最高だからつい」
「あーはいはい。そうやってカッコつけるな、もう……ッ!何で僕の顎に手を添えッんんんんん!?」
何だこのペットと飼い主みたいな光景。……両方マスコットキャラ感あるよなぁ。物理的に口封じをするなんて、人目に付くところでイチャつく人ほんとに居るんだ!?
そう思っていたらバチンッと鈍い音がシェルター内に響く。ミニュイさんは真っ赤な顔をして怒るがカザリさんは満足げにしていた。
「アハ、平手打ちはさすがに効くなぁ。そんな顔で見つめてくるからこうするべきかなって?」
「ッはぁ、ハアッ落ち着け!……で?また僕に優しく丁寧に修理してもらいたかったなら素直に言ったらどうなんだ?」
「……え、もうバレちゃった?」
「当たり前だろ、バレバレだ。早く破損箇所を見せて」
「いや〜照れるなぁ。ここで見せろだなんてそんな大胆なこと言われても〜」
「ちょ、誤解を招くような言い方をやめろ!……で、そちらの方が四季先生かな?お会いするのは初めてだよね。僕はミニュイ=レゼル。機械工学が専門の研究者だ。ミニュイと呼んでくれ」
「あ、そうですね……。仲睦まじいお二人に挟まる邪魔者になってしまい大変申し訳ないのですが……」
いや、正直帰りたい。お願いします。
「いやいやいや、不穏なルビが見えた気がしたけど。俺たちが悪かったから……って存在ごと消さんとって!?」
「九割お前のせいだろシオン!四季先生、お見苦しい所を見せたね、すまない」
「彼は輝ける宝石と呼ばれる鳥人のヒューマノイドの一人なんだ。これでも成人男性なんだよ」
「え、嘘でしょ成人済みなんですか!?随分お若いのですね」
「訳あってこの姿をしているんだ。僕はどうやら人の目を集めやすいみたいで……目立たないようにわざと小さい姿をしている。まあ、年齢に合わせて姿も変えられるんだが……」
大人の姿に変身したミニュイさんもなかなかに目立つ。
「僕は……あまりこの姿が好きではなくてね」
「こちらも少年姿の面影がありますね」
「……ああ、俺も久しぶりに見たよ」
めちゃくちゃ本気で見ているシオンさんがいた。悲しげな表情でフッと笑いかけながらその見惚れるような眼差しは友達や同僚と言うよりは……。何となく察したのであまり触れないでおこう。
「いやもう、うちの子ねぇこれがもうめっちゃモテるの!これが俺とミニュイが魔法学校に通ってた頃の部活の写真で……」
「文化部だ!お二人の制服の着こなしがめっちゃ良いですね」
服のポケットからアルバムを取りだして見せてくれた。地雷系制服のカザリさん、量産型制服のミニュイさんが写っていた。ご丁寧にシールやホログラムシートでまわりがデコレーションがされている。
「めちゃくちゃ牽制してくるじゃないですか!同担拒否なのに完全に推しの布教用アルバムでは!?」
……いや、俗世の文化に染まりすぎでは。
「どうたん?って何だろう……。ってかこれめっちゃ良くない?俺が作ったんだ〜」
「シオン、お前は僕のオカンか?というか勝手に写真を見せんな。シオンの盛れてない変顔写真出してくるぞ?」
「あら〜、怖い怖い。うちの子がごめんねぇ?」
大騒ぎしながら逃げ回るシオンさんがミニュイさんの写真を持ち歩いていることは本人も知っているようだ。二人の身内のノリについつい笑ってしまう。推しの写真、か。写真なんて仕事では子どもたちの成長を残そうと大量に撮っているけど……。あんなに風景とか撮るのも好きだったのに。プライベートでは一切撮らなくなっちゃったな。
『っフフ、気づいてない』
×××がそう言って勝手に写真を撮るのだ。
「え?アイル──」
「四季先生、どうしたのかな。顔色が優れないようですが」
仕事中に症状が出てきたことはめったにないのに。かなりメンタルがマズイようだ。
「ああ、すいません。事務室で日誌を打ち込んで来ますね。宿直の方に引き継ぎをしないといけなくて。泣いている声が聞こえてきたらすぐにでも動くので……」
色んなことが一日で起きたこともあり、頭がいっぱいいっぱいなのだった。
「そうだった、君は人だから休息が必要だったね。後は僕らで何とかするよ。施設の見守りは任せてくれ」
「ありがとうございます。仮眠後にご一緒させて下さい、よろしくお願い致します」
話しながら歩き進めていると出口に着いた。そこから空を見上げると、大きなオブジェになっていたアイルが前回見た時より傷だらけで、今にも崩れ落ちそうだった。




