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泡沫のアノマリー  作者: 柚木 桜舞
12/16

五百年の問い掛け

これは(シオン)の過去。目を覚ましてからもう五年になる。

 

 事件から──五百年後。俺が目を覚ました所そこは暗闇だった。しかも身動きが取れない。これは何かしらの容器に入っているのだろう。確実にこれは”一度死んでいる”いや、待てよ?死んでいたら目は覚めないはずだ。状況を確認するために体を起こそうとすると、


ガチャっと人からは絶対にしない金属音がした。


……は?


目が覚めた時には俺の手脚が義手と義足に変わっていた。こうでもしないと延命でき無いだろうからすんなりと受け入れられた。


『──対象の意識の覚醒を確認、スキャン開始……推奨、対象との対話。拘束を解除します。実行しますか?』


「実行、当たり前だ」


 何度も聞いた事のある声のはずだったが、それよりも少し幼い声。俺の周囲の視界が明るくなる。


「おはよう!五百年振りのお目覚めは如何かな?」


「……はぁ、俺がカザリ シオンという名前だったのをかろうじで覚えているくらいだな。ところで、アンタは誰なんだ?俺が知っている姿より幼いような。何か大切な……上手く思い出せない」


「それが至って普通の反応のはずだよ。再起動した時にデータは初期化されているんだ」


「再起動……データ?あー、俺は機械(ヒューマノイド)にでも改造されたってとこか?見せ物も大概だな」


「秘匿された技術だ。これから先は誰もが君を手に入れたがるさ」


「それは大変なこった。すぐにでもここから逃げだそうかな……ってなんだこれ」


目眩が酷く、体を起こしているのがやっとだった。


「演算、記録に過去のログ……?ちょっとばかり頭が良くなったということかな。ラッキーじゃん」


 過去のログ、俺が起動するまでに試されたバージョンのデータがある。それらに触れると記憶がずっと流れ込んできて。目から再び涙が出てきた。


あれ、俺はなんでこんな大事なことを?……ああ、そうだった


「凄い!僕の予想よりずっと早い自己理解へのフェーズ移行だ!何を思い出したんだ?」


ミニュイが工具を落とした音が研究室に大きく響いた。俺が急に抱き抱えたからミニュイに被さる形で倒れ込んだのだ。


「ちょっと……え?」

「俺は、お前のことを大切に想っている」


 なんて身勝手なんだろうか。相手の都合も考えずに。

 

でも俺はあれからずっと後悔した。俺の暴走に付き合いきれずに”思考”までは消去しきれなかった。


「……シオン、それは()()()()だ。本当に君の意思なのか?」

 

「ああ、これは俺の意思だ。この気持ちに偽りは無いよ」

 

 俺を見あげるミニュイの表情はどっちつかずで──

ミニュイの容姿が少し幼くなっていること、耳元が鳥の羽のような形に変わっているのも関係するのだろうか。

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