始まりの
「私、アイルみたいに望まない形で監視者になっている人を助けたい」
死んだはずのアイルが目の前に現れたこと、どうしてこうなったのかを知りたい。今度は逃げずに立ち向かえると確信している。
ミニュイは首を直ぐに縦には振らず、口を開いいた。
「今回みたいに簡単に解放できる訳ではないし、その人のことを知る手がかりを探す必要がある。要するに冒険に危険は付き物だ、ってね。……それでも救うの?」
「はい、私はこの施設の子の未来を見据えていたいんです」
シオンはそれを聞いて
「そっか、じゃあ俺もついて行こっかな〜」
「おい!そんな軽く決められる話でもないだろ。色々準備を整えていかないと」
「そういう訳じゃ……俺たちが救った気でそこから出した所で救済になるのかなって」
「え?」
みんなが希望して観測者になっている訳では……?
「僕は希望して監視者レゼルになっていた頃がある。ざっと百年ほどかな、段々と街の一部になって感覚が無くなってきた頃にはお役目を終えていたさ」
「あれは、外側が朽ちた時に役目が終わるものなんだ。手っ取り早く壊して回ればいいさ」
珍しく乱暴な言葉で複雑な表情をして自身を語るミニュイさん。
「……ミニュイは俺の身代わりとして生贄になったんだ。よな?俺が……黒魔法を発動してしまったから」
「まあ、僕らと四季先生が解除したのはこの国の中でもほんの一部だからね」
「アイルさんを取り戻したら生贄となる代替品を取りにアイツがやってくるよ?」
一瞬窓から光が差し、眩さに目を細めた私たちの前に木々の影が落ちる。──刹那、ハーフアップの青年が室内に立っていた。
人間では無いのは確かだ。
「やあ、お呼びだねミニュイちゃん?」
「まだ、呼んでません。供物は僕の部屋から取ってこればすぐにでも……」
瞬きの瞬間でミニュイさんは大きな手のひらに乗せられている。
「お前が今、供物になった方がまだ代わりにはなるんだけどなぁ」
「……っ、僕の判断で監視者から解放しました。申し訳ありません」
噂をすればなんとやら。すぐにやってきたのは話に聞く私たちの神とやらの張本人。二人の反応や言動からも只者では無いことは確かだ。
「それともシオン君が代わりになってくれるのかな?俺としてはまあまあ急ぎで必要なんだよ」
「ッ……それがお告げであれば、俺が断らないのを知っていてのお話でしょうか」
言い終える前に、喉の奥が冷えた。
「別に生身の人間じゃなくていいよ」
その青年はあっさりと言った。ミニュイさんを掴んでいた大きな手がパッと離れ、低く息を吐く。
「今しがた……来ると思っていました」
「だろうね、君はいつも用意をする」
その言葉に、アイルの肩がわずかに揺れた。
「代替品は?」
神は首を傾げる。
「壊すか、連れ出すか、救うか。君たちはまだ決めてないだろ」
──少しの沈黙。
「望まない形で監視者になった者を助けたい」
四季はその言葉を、もう一度思い出す。
「じゃあ一つだけ教えてあげる」
青年は、笑った。
「“解放”された監視者は、二度と“誰かを守る存在”ではいられない」
アイルが、私を見た。──その目は、答えを知っている目だった。




