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泡沫のアノマリー  作者: 柚木 桜舞
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光さす方へ

 それから数時間後、教会の一室にて。


「あぁ、どうしよう!?これからアイルとどういう風に話したらいいのか分からない!」


 眠るアイルのベッドの周りをグルグルと回りながら、これまでのアレコレを思い返す。


何とも恥ずかしくて、普通に死にたくなった。

 

「こら、うるさくしちゃダメでしょ四季先生?」

「四季先生が困ってるし……てか嘘でしょ?ここまで来てまだそんなこと言うの!?」


 シオンさんはともかくミニュイさんの表情の豊かさにもツッコミを入れられないほどに悩んでいた。


「フハッ……何それめちゃくちゃ面白いね!学生の恋愛じゃん」


「おい!シオンは一回黙った方がいい」


 はぁ、そんなことはとうに分かりきっている。人間関係を諦めていた人間に何かの奇跡が起きて出逢えたそんな貴重な人なのだ。

 

「こんな状況なかな……k……おっと……急いで赤飯炊きに行くぞ、ミニュイ!」

「ちょっと!おい、巻き込むなぁ!」


 ドアが勢いよく閉められ、部屋に残される。はあ、本気でイラッとしてしまった。やっぱり茶化す人だったんだなシオンさんって……。後で倍にして仕返しするか。と思っていたらアイルが目を覚ました。

 

「えっと?」


「お、おはよう。気分はどう?ここは教会だよ」


「おはよう。教会……四季は教会で過ごしているの?今は何年かな」


「あれから……三年経ってる。私は保育士になったんだ」


「保育士?あぁ、そうだったんだ。きっと私が居ない間に色々あったんだね」

 

 そうだね、話したいことはたくさんあるよ。


「アイルは監視者になっていた間の記憶とかあったの?」


「あまり良くは覚えてないかな。というか今、身体がバッキバキで全く動かないんだよね。あ〜……久しぶりに起きたからお腹がすいたな」


「とりあえず、ご飯にしようか」


 部屋から出るや否や、子どもたちの質問攻めに遭うアイルであった。

 

「えっと、ひとつ聞いてもいい?ここって何の場所……?」


「ここは神様のお家……のお椅子の中だよ」


「え、お姉ちゃん髪の毛長ーい!何でこんなに長いの?」


「ちょっと長い間寝てたら伸びたんだ」


「お姫様みたい〜!三つ編みあとでしていい?」


「今日はご飯一緒に食べられるの?」


「お姉ちゃん後で絵本読んで!」


 子どもたちに囲まれて困惑しているアイルもなかなか見ないのでこれはこれで面白い。

 

「えっと……あのね、ご飯にしてからにしよっか?」

 

 テーブルに並べられたご飯は施設の給食とはいえ栄養、カロリーの計算がし尽くされた健康的なものだ。

 

「それではみなさん、いただきます」

「え、美味っ……」

 

 こういう言葉遣いが荒くなる所が意外で私は頬がニヤけるのを抑えられなかった。

 

「美味しい?口に合って良かったね」


「はい、ここのご飯ってとっても美味しいですね!」

「みんなで畑仕事もして自給自足で作ってるんだ」


シオンさんやミニュイさんともすぐに打ち解けるアイル。そして、被害を受けた子どもたちも給食を食べると自然と笑顔になる。あぁ、こういう時間はやっぱり大切だな。子どもたちを寝かしつけまでして職員たちで記録をつけつつ、お茶休憩をする。そうだ。ちょうどメンバーも揃っているし聞いてみてもいいかな。


……絶対に面白いし。


「ああ、そう言えば。ぶっちゃけ、()()()()()とミニュイさんのお二人は()()()()()いらっしゃるんですよね」


「うんー?……っはははは!急に僕らのことを聞くなんて。どうしたの四季先生」


ミニュイさんは途端に笑顔になった。その笑顔のなんと眩いことやら。

 

「お、四季、とってもいいこと聞いたね!私も気になってました」

 

「で、どうなんだねシオン君……ふふっ」

 

 ミニュイさんは笑いを堪えていたけれど、シオンさんはお菓子を落として口をパクパクさせながら明らかに動揺していた。


「っ……!急になんて事言うんだよ!?日誌に集中しようよ」

 

──いや、割と本気で照れるんだ!?

 

「急すぎるでしょ、いくら何でも!」

 

「いやー、私たちに対して高校生の恋愛とか仰っていたのでさぞかし経験豊富なのかなーって思って!」


 シオンさんにちょっとした仕返しのつもりで聞いてみたけれど。まだまだこの件を揺すって遊べそうだ。

 

「それは悪かったって!でも……え、えっと今答えなきゃダメかな」


「う……嘘でしょ、あんなに熱烈な口封じしておいて僕とは遊びだったのかい?」

「あッ……ぁ、遊びなんかの訳ない!」

 

 なんか無理に聞いちゃってごめんなさい。……未亡人の余裕と貫禄ってすげぇな。と思っていたらパッと満面の笑みを浮かべるミニュイさん。

 

「っふふ、冗談だって。いつか聞かせてって言ってたらさ、人生終わっちゃってさ。こんな機会でも無かったら多分彼は反応すらしなかったよね」

 

 逆にそれだけ答えを待ち続けられるミニュイさんの忍耐力も凄すぎる。

 

「たとえ言葉にしなくても、シオンの態度や表情、まあ……これは特殊な形だけど。あとはデータから何となくは察してるから僕はそれだけで充分に分かっているつもりさ」

 

「もう……それ以上はいいから!ちょっとだけ後にして!?」

 

 逃げたいと言いたいばかりに宿直室を去ろうとするシオンさん。その表現が例えどんなに歪な形をしていたとしても、あとは二人で積もる話でもするのだろう。


私は皆に頼み事をする必要があった。

 

「あの、皆さんに手伝って欲しいことがあるんです」

「お?四季先生からの頼み事って何だろう?」


「私、子どもたちやアイルのように生贄にされている人たちを助けたいんです。でも、私にはシオンさんやミニュイさん、アイルみたいには戦えない。なんの力もないんですが……この気持ちに嘘はありません」


「そうか、そう言ってもらえるのはありがたいよ。僕らはあの襲撃がある日を告げられて、それをどうにか最小限の被害に抑えるべく対策をしてきた」


「この施設に関係する人間や俺たちヒューマノイド、まだまだ関連施設は未だに稼働中。それぞれの場所に生贄として連れてこられて、定のいい実験材料にされている。俺もこの問題を解決したい。少し長くはなるけれど昔のことを話すことにするよ」


そうして、シオンさんとミニュイさんの昔の話が始まる。

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