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守護遣い-騙り探偵と癒しの守護-  作者: 長峰永地


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クビキリトウゲ⑥

 六


 目が冷めたら、そこは南国だった。

 そんなわけあるか。

「うぱ……うぱー!!」

 目を開けた瞬間に頭をチョコまみれにしたあほちゃんがダイレクトアタック。あっつい!?

「……おはようございます、税金ドロボーさん」

 隣に座った誠から冷ややかな声が降りてくる。

「普段からドロボーしてるヤツに言われると、身に染みるよ」

「まぁ、今回は私のポケットマネーですから。同罪です」

 さいですか。

 身体を起こし目線を合わせると、いつもよりコンシーラーが濃い。

 特に、目の下の辺り。この意地っ張りめ。

「ところで無能さん」

 そういうのは1回までだから笑えるんだよ。

「事の顛末、聞いておきます?どうやってアナタがタダ飯食べられるに至ったのか」

 はいはい、美味しいうどんが食べられて良かったですよ。


 誠の説明は、正直理解の範囲を越えていた。

 無理もない、実際に見ていた誠すら何もわかって無さそうなんだから。

「で、あの一米は?」

「無事ですよ。軽く調書取って、今はもう働いてます」

 図太いねぇ、僕はこうして入院しているってのに。

「アナタが入院してるのはこの子のせいでしょう?」

「うぴー?」

 バレてらー。

「現代医療の優秀さ頼りだよ、何度使ってもちゃんと帰って来れる」

 ログインボーナスが途切れるのだけが難点か。

「ふざけてる場合ですか?今回一米さんがちゃんと話着けてくれたから皆こうしてるんですよ?」

「そこなんだよ」

 1番気になっている言葉が出てきて思わず話を食ってしまう。

「……ふざけてる場合?」

「目を逸らしますか」

 わざとなのか、それとも無意識か。

 解決した事件を蒸し返したくないのはわかるんだ。

 でも、明らかにおかしい。

「佐竹陸衛門って、暴君として臣下の話も聞かなかったから討ち取られたんだろ?」

 一米が自信満々に言っていた気がする。

「死んでから性格が丸くなったとか?」

 怨みで出てくるようなヤツが?冗談だろ。

「そもそもの話、僕たちが生き残れた理由は?」

「それは、仇じゃなかったからでしょう?」

 標的としていたのが米澤半兵衛の子孫、一米はそう訴えた。

「話を聞く限りそんなタマか?」

 えり好みなんかせず、近付いた者すべて斬り伏せていてもおかしくないだろ。

 考えたら僕たちに襲い掛かった時、首を狙っていなかった。

 刀の柄で、鳩尾。

 どれだけ力があろうが、殺すことのできない一撃。

 つまり最初から僕たちを殺すつもりは無かった。

「つまり、こう言いたいんですか?」

 誠はごくりと唾を飲む。

「私たちが会ったあの鎧武者は、佐竹陸衛門じゃない、と?」

 正直その方が合点がいく。

「そもそもの話、今回僕たちが調査してたのはなんだ?」

 それは、首を斬る怪異。

 人が10日で32人も首を落とされたことの調査だったハズ。

 仮に、仮にだ。

 鎧武者がひとりだったとしたら。

 しかも、無差別ではなくえり好みしていたのがたまたまだったとしたら。

 たった10日で32人という数の異常性。

 それだけ人が死んでいる峠だぞ?

 なんで地元の人間は現場を、夜を避けなかった?

「誠、なんであの峠にピンポイントで行ったんだ?」

 背中に嫌な汗が流れる。

 気にしない。

「別にあの場所を目指していたわけでは」

 続く言葉を待つ。

 信じたくない。

「事件の現場に向かう途中でアイツに遭遇しただけで」

「死体の発見場所を見せろ!」

 思わず大きな声が出る。

 最初に聞いておくべきだった。

「びっくりするじゃないですか、えっと……門外不出ですよ」

 誠が取り出したタブレットを凝視する。

 事件の有った峠一帯の上空図、そして乗せられたバツ印の痛々しさ。

「僕らの襲われた場所は?」

 誠の顔も険しくなる。

「ここ、ですね」

 追加したそのバツ印は、今までとどこも重ならなかった。

 改めて図を見る。

 事件発生の日時を追加する。

「……やっぱり」

 日付けごとにソートすると、1日で峠の反対に印が付く日が何度もあった。

「か、怪異、でしょう?距離関係ないんじゃないですか?」

 誠は薄く笑っている。

 自分でも口から出している言葉を信じていないようだ。

「あんな物理的に斬ってくるのに?」

 それにもうひとつ、この上空図にひとつだけ書き込まれた文字。

「……首塚」

 誰の、は無い。

 聞くまでもない。

 その首塚を取り囲むように、円を描くバツ印。

「一米の、資料を見れるか」

「……コピーなら、調書の時に」

 誠ももう減らず口をこぼさずタブレットをスワイプ。

 あのボロボロのスクラップ帳がスキャンされた画像をひとつひとつ読み込んでいく。

「……領主、佐竹陸衛門は討ち入られた際に居合わせた配下を盾に逃げ伸びようとした」

 読み上げる声が自然低くなる。

「特に、側近である米澤喜一郎に自らの鎧を着せると、影武者とした」

 米澤。

 半兵衛、喜一郎。

「喜一郎は、領地を引き継いだ半兵衛の兄に当たる」

 このスクラップを持っていたのは、その米澤半兵衛の子孫。

 一米柚希。

 ヤツは、誰と向き合ったんだ。


「……かっちゃん、やっと線香上げられるよ。遅くなっちまったけど……木刀、返すよ。また、来る……え?」

「……雑兵ガ」

「……」

「斬レ……」

「……ケッ」


 その後、誠から峠の首切事件が続いたことを聞いた。

 事態を重く見た対策室は「処理」を決定。

 首塚を要する山が山火事にあったことを聞いた。

Next Case エンキリハイシン

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