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Avsnitt 8 言葉で伝える必要性

 部室でエメリと会話を交わすけど、なんて言うか、全然意図したものが伝わらない。言わずとも人の気持ちを汲む、そんな文化が無いんだろうなあ。

 なんでもかんでも言葉にして伝えないと、一切合切理解する気が無いんだよ。表情を読んで態度から察する、それが日本人。欧米人はある意味合理的。でも日本人の感覚とは相容れない。

 言い合っても仕方ないから「とにかくやめるから」と言って、顧問の先生から退部届を受け取る。


「やめるのか?」

「はい」

「下手なのを気にしてるのか?」

「してません」


 無理に続ける必要は無いが、エメリと一緒に来て仲良くやってた。その点で惜しいと思うと言われた。


「外国人の感性に触れるいい機会なのにな」


 その感性は俺とかけ離れてる。対極みたいなもの。合うわけが無いし、エメリは知ろうともしないんだし。こっちから歩み寄らない限り、向こうから歩み寄る気は無い。これも欧米人の特徴なんだろうな。

 周りが自分に合わせるのが欧米流。日本人は真逆で自分が周りに合わせる。空気読むって奴だ。


 その場で受け取りさっさと書いて先生に渡すと「戻ってくるのはありだからな。待ってる」だそうだ。

 戻ることは無いけどね。


 部室をあとにすると吹奏楽部の部室に足を運ぶ。

 そして入部届を出した。


「楽器は何ができる?」

「トランペットを少し」

「そうか。うーん……そうだな。サックスはどうだ?」

「やったこと無いです」


 唇の形状がトランペットに向いてない、だそうで。サックスの方が音を出しやすく、運指もリコーダーと同様だから、覚えるのも楽だぞと先生に言われる。

 チャレンジするのも悪くは無い。難しくないって言うなら。


「じゃあ、サックスで」


 担当はサックス。


「ソプラノ、アルト、テナー、バリトンとあるんだが、一応希望は聞いておこうか」

「よく分からないんですけど」

「音が高い方からソプラノ、アルトってなるんだが」

「いえ、そうじゃなくて、扱いやすさとか」


 全部一緒だとか。

 軽量なのがソプラノサックス。バリトンは使うことも無いから、考えなくてもいいんだがとか。だったら選択肢に入れないで欲しい。


「カッコイイのはアルトかテナーだな」

「でしたらアルトサックスで」


 楽器は学校の備品を使う。いずれ本気で取り組む気になったら、買えばいいそうだ。

 部員に紹介され、今日はまず慣れることに。

 楽器を手にすると、キーの数が多過ぎる。


「これって」

「抑えるのはキーパールのある部分。左は人差し指、中指、薬指。右は人差し指、中指、薬指、小指になるから」


 吹奏楽部のサックス担当の先輩から指導される。

 リコーダーと同じ、って意味はなんとなく理解した。全部抑えると「C」になる。面倒なのは、♯や♭にはそれぞれ対応するキーがあること。基本のポジションにプラスして覚えるとか、トランペットに比べると実に細かい。ハイキーやローキーに、まさかオクターブキーまであるとは。

 サックスを持って構え方も教えてもらう。サムレストとサムフックに親指を掛けて、斜めに構え持つ感じ。ストラップももちろん使う。


「自由だけどね。自分が演奏し易いように構えればいい」


 マウスピースの咥え方。音の出し方を教えてもらい、とりあえず音を出してみるけど。

 出ないじゃん。「ふしゅー」って感じで空気が抜ける音。


「最初は仕方ない。すぐ慣れるって」


 こんな感じで時々指導されながら、この日の活動を終えた。

 帰宅はクラスメイトの男子と一緒に。


「初日、どうだった?」

「分からないことだらけ」

「サックスやってんだもん。なんかの間違いかと思った」

「先生が勧めたからなあ」


 学校最寄り駅で別れると自宅まで車内でひとり。

 車窓を眺めていると近寄る存在が居る。


「海斗」


 エメリだ。

 まだなんか言いたいのか。でもさ、俺に希望無いし努力も無駄。だったら構わないで欲しい。

 シカトしてたら。


「急に距離取ってる」


 なんで、と疑問を抱いてるらしい。

 自分で言ったんじゃん。無理って。その言葉はマジで心をぶっ壊された。泣きたくなるくらいに。そして同時に自分の気持ちにも気付いて。

 どれだけ落ち込んだかなんて、エメリが理解するわけも無いよな。所詮は外人だ。


「美術部やめちゃった。合わないのは分かったけど、どうして私まで無視するの?」


 普通さあ、玉砕したら顔合わせられないでしょ。それとも外人はそんなの気にしないの?

 ここまで来ると無神経なのが外人。そう思っちゃうよ。

 やっぱりあれだ、侵略を繰り返してきた歴史の持ち主。白人以外はみんな奴隷。そんな歴史を繰り返してきた人種ならでは、と思う。同じ人間として見て来なかったんだし。

 だから相手の気持ちに配慮が無い。


「理由が分からないと、どう接していいのか分かんない」


 気付いて無いんだ。心無い言葉で傷付けたことすらも。

 言いたい気持ちもあるけど、理解なんてできないんだろう。所詮外人。日本人とは根本が違う。


「仲良くできると思ったんだけどな」


 俺もそう思った。もしかして、なんて淡い期待もあったんだろう。今は完膚なきまでに叩きのめされた気分だよ。


「Det finns(デ フィンス) också(オクソ) en positiv(エン ポジティーフ) känsla(シャンスラ)」


 意味分からないってば。


「Berätta(ベレッタ) för mig(フェル メイ) varför(ヴァルフェル) du《デュ》 undviker《ウンヴィッケル》 det《デ》」


 だから、なに言ってんのか通じないんだっての。

 白人って他人に一切配慮しないの? マジで面倒臭い人種。こんなんじゃ、相手を傷付けて気付けるわけ無い。

 日本文化を理解なんて無理でしょ。


 自宅最寄り駅に着くと無言で先に降りる。

 続いてエメリも降りてくるけど、もう何も言う気は無いみたい。これでおしまい。縁が無かったと諦めるのがいいんだよな。日本人男子なんて眼中に無いんだろうし。

 せいぜい同じ人種と仲良くやればいい。


 家の前に来ると「ちゃんと話をして」とか言い出した。まだ食い下がるの?

 面倒。マジで。気持ちを理解する気の無い相手に、何を言っても無駄でしょ。これで好きです、とか言ってさらに無理、とか言われたら死にたくなる。

 そのくらい察してよ。鈍いにも程がある。


「無理って言った」


 エメリに向き直って言ってみたけど、なんかわけ分からんって顔してる。


「無理?」

「無理って」

「いつ?」

「前に教室で」


 女子に聞かれた時に、はっきり無理だと言った、それを言うと。


「無理でしょ。だって、私ひとりの問題じゃない」


 相手があっての話だから、お互いに気持ちが無いなら無理だし、一方通行なら当然付き合うに至らないと。

 つまり、俺の気持ちも知らない状態で、付き合うも何も無いと。だから無理と言ったと。

 何やら気付いたみたいだ。ちょっと驚いた感じで、こっち見てにこにこ笑顔になってるし。


「言ってくれないと伝わらないし、積極的な方がいいって言ったよ」


 まだ恋心にまでは至ってないけど、一緒に居て心地良い存在だそうだ。


「気が合う、ってあるんだよね。海斗は居心地悪くない。だから頑張ればきっとあると思う」


 いろんなことに頑張ってる姿を見せて、積極的に関わってくる。そうじゃなければ、見ることが無いのは当然じゃないのかって。見て欲しいのであれば、見てもらえる言動は必要じゃないのかって。


「それって日本人も一緒だと思う」


 誰とも関わろうとしない人に、あえて関心を示す人が居るのか。そこはどの人種もどんな人も、自己アピールするんじゃないのかって。


「海斗は他の男子よりリードしてるよ。隣同士ってだけじゃないから」


 良い印象を抱いてる。だから積極的に関わって欲しいと。


「Jag vill(ヤー ヴィル) att《アット》 du《デュ》 ska《スカ》 fascinera《ファシネイラ》 mig《メイ》」

「あの、意味が」

「虜にして」


 顔が熱い。

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