Avsnitt 6 恋に発展することは
恋に発展する可能性は無さそうだ。
エメリから聞かされる内容は、いちいち抉ってくる。
「日本人男性は変態、って思われてる部分は大きいかも」
「変態? なんで?」
「アニメとかコミックは子どもばっかり。性的搾取が酷い、そう見られてる」
サブカル自体は海外でも大いにウケている。ただ気を付けたいのは、セクハラやレイプ紛いのものは公開されないそうだ。日本とは違いチェックは厳しい。
「例えば、高校生とか中学生の恋愛も、性的なものは駄目だから」
堂々とまかり通る日本は、変態性欲者で溢れ返ってる。そう言った印象を抱かれてるらしい。女児なら言うことを聞いてくれそう、と言ったものがありそうだと。大人の女性相手だと尻込みして、支配欲を満たせないせいもあると感じるらしい。
フィクションでも物扱いが相当なもので、見るに耐えないそうだ。
通勤通学電車では痴漢が多く被害者も多く、泣き寝入りが多くあるのも問題。スカートの中を覗く行為も写真に撮る行為も。とにかく変態染みてると。
結果、まず気持ち悪い。
「愛情表現に乏しいのもマイナスかな」
ハグやキスは当たり前。愛情があればできること。なのにそれをしてくれないと、やっぱり愛されてないのかとなるそうだ。
「Jag älskar digって言わないよね」
「えっと、何?」
「I love you」
「ああ、そう言えばそうかも」
シャイなのは理解しても、言葉で伝えてくれないと、伝わらないし積極性が無い。だから魅力を感じないのだそうだ。
「あとね、ひ弱なイメージかな。欧米の人に体格で劣るから、どうしても弱々しく見えるの」
「それはなあ。どうにかしたくても」
「その分、強さは必要かも」
海外で活躍するスポーツ選手は、力を示すから人気も出るとか。
件のメジャーリーガーは体格もすごいからなあ。
「一所懸命着飾ってみたり、化粧して血色良く見せたり」
外側ばっかり気にして中身を鍛え損ねてる。だからモテないんだと力説してる。
頭髪の薄さを気にするのは日本人くらいだとも。
女性にも外見ばかりを要求する傾向が強いと。美人だの可愛いだの。そんな男は世界中の誰からも相手にされない。
清潔感を出すのは悪くない。でも、中性的になっては意味が無い。その匙加減ができて無いから、気持ち悪い人種に成り下がるのだそうだ。
それにしてもマジで凹む。いいところがひとつも無いみたいだし。
「あ、でもね」
なんか少し笑顔になってる。
「日本に来たくて来た人は、日本人男性を求めてると思うよ」
日本の文化に惚れ込み、興味関心の度合いが高い外国人女性は、日本の男性にも興味があるとか無いとか。
共通の話題ができる。文化を教えてもらえる。そう考えるのもあるそうだ。
特に伝統工芸の世界には強い憧れがある。なんでも興味があるから、それに携わる男性ならモテなくも無いと。
「日本にまで来て、欧米人となんて考えないから」
少しは希望があるってことか。
学校に着くと、やっぱり周りに女子が群れてくる。女子人気高いよなあ。
男子より女子の方が接するのに抵抗ないみたいだし。男子はみんな情けないくらい距離置いてるし。
俺って隣同士で良かったと言えばいいのか。親しくできてる分だけ。
でも、朝の話で恋に発展する可能性は無いと自覚した。
授業中、時々目で追ってる自分が居る。
積極性。間違った方向の積極性は煙いだけ。女性が求める積極性は歓迎される。いろいろ考えていたら、先生に怒られたけど。
「シェーンベリばっかり見てないで、ちゃんと授業を受けろ」
お陰で教室内の生徒に笑われたし。なんか恥ずかしい。
エメリはエメリで親指立てて微笑んでるし。少しは気持ちが伝わったかな。
昼休みになるとエメリから「少しは積極的になった?」と聞かれた。
「駄目な部分ばっかり挙げ連ねられたから」
「改善すれば好かれるってことだよ」
「それは理解した。今のままじゃ駄目なんだってのも」
「じゃあ、頑張ってね」
頑張ってどうにかなるなら、頑張ってみるのもありだけど。
気になる感じなのは確かだし。以前は感じなかった感情がある。好きなのかも。
ただなあ、体格差。身長はエメリの方が高い。俺の方が低いんだよ。もう少し伸びてくれればと思うしマッチョじゃないし。もっと鍛えた方がいいんだろうな。
努力しなきゃいけないことが多過ぎる。途中で挫折しそうだ。
食堂のテーブル。俺の前にはエメリが座り。その両隣はいつもの女子メンバー。
男子は時々俺の隣に座る。今日は授業中のこともあって、面白がる男子が数人、同じテーブルを囲んでるし。
「授業中のあれ、傑作だよ」
「エメリに惚れてんのか」
「もう告白したも同然だよな」
告白したつもりはない。ただ見てただけ。見たいからってのもあるけど。
男子の話題に女子も食らい付くし。
「エメリは付き合う気ある?」
俺を見て首を横倒し。何そのポーズ。
「Det är omöjligt」
「日本語で」
「それ無理」
「だよねー」
思いっきり抉る発言。無理って、微塵も希望が無いってことだろ。
告白する前に玉砕。
まったく気が無いのが分かった。淡い恋心は今、打ち砕かれたと言っていいと思う。
頑張ってと言われたけど、意味無いよなあ。眼中に無いんじゃ。
なんかすげえ落ち込んだ。
でも、頑張れば他の女子と付き合える可能性はある、かもしれないんだよな。エメリは無関心でも。少しでも前向きに考えないと泣けてくる。
昼休みが終わり午後の授業中。
ずっと上の空。
なんか「無理」ってのが頭にこびりついてる。剥がせない言葉。
授業のあとに部活あるんだよなあ。凹み方がきついから、今日は帰っちゃうか。気になるエメリだけど今は視線を持って行けない。
言われて気付く感情ってあるんだなあ。エメリのこと好きだったんだ。
なんとなく、いいなって程度なんだろうって、そう思ってた。でも実際には好きになってた。
午後の授業が終わり、部活に向かうエメリだけど、いつも通り声を掛けてくるし。
昼のことがあって、関り合いたくないって言うか、どう対処すればいいのか。
「海斗、部活」
どうする?
ここで引っ込むと外国人は気が無い、そう考えて距離を取るんだろう。無理と言われても挫けず食らい付けば、まだ関係は維持できるんだろうな。
ただ、凹み方がね、尋常じゃないわけで。
とても朝のような感じで付き合えない。
「行かないの?」
もたもたしてたら催促されてる。
エメリを見ると至って普通に誘ってるだけ。ただの隣人。他の生徒より少しだけ親近感を持ってる。それだけの関係、だよな。
「あ、今日は悪いけど、帰りたいから」
「部活出ないの?」
「うん。部長には帰ったって伝えてくれれば」
動作早!
あっと言う間に背中を向けて教室出て行くし。外国人って見切り付けるの早いなあ。日本人なら「どうしたの?」とかありそうだけど。
さすがドライな性格だ。スウェーデン語でドライってなんて言うんだろ。
エメリはさっさと部室に向かったみたいだし、俺は残ってても仕方ないから帰るか。
全身に倦怠感。なんか足重い。鞄も重く感じるし。
下駄箱で靴を履き替えて、校舎をあとにする。
久しぶりな気がする。ひとりで家に帰るのって。
ひとつ、不安なことがあるにはある。このまま疎遠になったりしないのかって。あれだけあっさりした感じだと、関わらないってなれば、心配するより放置するんだろうとか。悪い方に物事を考えちゃうんだよな。
電車に乗り車窓に流れる風景を眺める。
なんか、何かがすっぽり抜け落ちた感じが。失恋って奴か。
家に帰ると母さんが「今日部活じゃないの?」と。
「なんか疲れたから」
「風邪?」
「違うと思う」
「失恋?」
なんで?




