Avsnitt 28 HRの議題に上がった
職員室に呼び出された。俺とエメリが。
担任と教育実習生が居て、男女間の対立の原因を問われてるわけで。
「ふたりに問題がある、そう言ってるわけじゃない」
放っておいて欲しい、そう言ったら原因を知って、対策を講じるだけだと。
このままだと、文化祭含め今後の活動にも支障が出る。球技大会や合唱大会もある。クラス内が二分されていると、纏まるものも纏まらない。だから解決しておく必要があるからと。
「でしたら、俺には一切関わらないで」
「いや、そうじゃなくて」
「クラスの女子と関わる気は無いです」
どうせ言うだけ無駄。頭で理解するのと、感情で折り合い付けるのとは違う。感情面がそれをさせない。
無駄だから、どうしてもと言うならば、俺以外で対処すればいいと。
「そもそも原因はなんだ?」
「知りません。女子が俺を許せないだけでしょう」
「なんで?」
「知りません。不細工な奴が美人と付き合ってるのが、心底気に入らないんでしょう」
頭抱えてるけど、それが事実だと思う。女子は一度嫌いになると、二度と好かれることは無い。感情の生き物なんだよ、所詮。
表面的には対処しても、嫌いなものは嫌い。気に入らない奴は、誰が何と言おうと気に入らない。それをどうにかできるはずも無い。
それが女性と言う生き物。
「だから俺は放置で」
ロングホームルームの議題にするそうだ。
とりあえず今は戻っていいと。
「海斗。なんで言わなかったの?」
「なにを?」
「野見山が原因だって」
「言ったら野見山さんが嫌われるよ」
それに面倒臭い。女子の相手するのも、会話をするのさえも。今のままでいい。無駄だし。少なくとも吹奏楽部の先輩と、エメリだけは俺の味方だと思うし。それ以上を望むのは贅沢でしょ。
ロングホームルームになると、実習生の名前なんだっけ? が教室の隅で待機してて、担任が教卓を前に立つ。
「さて、君らは自覚してると思うが」
そう言って切り出すと、男女で溝ができてることに言及した。
「で、何が気に入らないんだ? まず内に溜め込んだものを吐き出してみろ」
席順に発言させるけど、なんかみんなお茶を濁す感じで、本音を言おうとしない。差別とかいじめとか、そう言ったことは絶対しない、そう言われてるからだ。でも、自分たちは本気で差別してきた。だから言えない。
順に立ち上がって適当に喋って俺の番が来た。
椅子から立ち上がり正面だけを見て。
「原因は、はっきりしてます。俺が不細工なのに美人のエメリと付き合ってる。それが許せないのが、このクラスの女子です。ですから俺を外して、他の男子と女子で和解すればいいんです。俺を入れると不愉快なんでしょうから。このクラスの女子は」
先生が苦い顔してる。
「俺としても、不愉快だと思われながら、表面的な付き合いなんて、一切したくありません。エメリと別れれば、少しは納得するかもしれないですけど、俺にその気はないんで。だから俺以外でお願いします」
先生、なんか言いたそうだな。でも無駄だって。女子はそう言う生き物なんだから。
性根の部分が醜すぎるんだよ。
俺が話し終えて着席すると、野見山さんが「ごめんなさい」って泣きながら言い出した。
「あたしが、悪いんです」
わんわん泣きながらそう言ってるし。自分が余計なことをしたせいで、クラスが分断されて、非の無いはずの俺が女子に嫌われた。全部自分のせいだと。
だから、俺と和解して欲しいと泣きながら懇願してた。
本当に反省したのかもしれない。こんな状況になって、自分のしたことが如何に愚かだったか。気付けたから自ら口にしたと。
そうなると、ばつが悪いのは女子連中だ。少々教室内がざわざわして、少しすると先生が遮って静かにさせた。
「野見山さんは、あとで職員室に来てくれ」
まあ、事情を訊かれるんだろう。この場で追及するのも違うと判断したんだろうし。
結局、結論は出ない。出ないけど、全員、きちんと考えるようにと。
ロングホームルームが終わると、エメリがすぐ俺の傍に来る。
「自分で言っちゃったよ」
「そうだね。反省したと思う」
「Vad ska du göra nu? Med flickorna」
「どうするもこうするも、女子とは付き合わない。顔も見たくない」
なにがあっても、このクラスの女子とは、これ以上どうにもならない。
さっさと帰り支度をして、エメリと教室をあとにすることに。
「帰ろうよ」
「でも、女子見てるよ」
「要らないってば」
「Är det okej?」
いいんだよ。
エメリの手を取り教室を出る。
「Kaito är förvånansvärt envis」
「ちょっと分かんない」
「頑固」
頑固って言うか諦め。世の中、どうにもならないこともあるし。人の感情なんて特にそうだと思う。印象を変えさせるには、相手が、じゃなくて自分が変わる必要がある。そんな努力は無駄にはならないかも、だけど、クラスの女子相手に努力する気は無い。一生あのままでいればいい。
「もういいよ。終わり」
「海斗がそれでいいならいいけど」
少し寂しいとか言ってる。男女分け隔てなく、みんなで和気あいあい、なんて姿を見たかったと。
男女平等なんて絵空事なのが日本なんだね、だって。女子も譲らない、男子も譲る気が無い。どっちも意地を張るから、欧米のような平等は無理だなあと。
「日本人の性根に染みついてるんだよ」
「Det tvivlar jag på」
そうかなあ、じゃなくて、そうなんだって。理解する気は無いんだよ。常に相手が悪いと思って無いと死んじゃうんでしょ。そう言う病なんだよ、って言ったら、さすがに呆れてるけど。
家に着くと、いつものあいさつ。キスして「ヘイドー、ヴィセース」って。
家に入る前に「Jag står på Kaitos sida」って。俺の味方って宣言しなくても。でも、そう言ってくれるとありがたいな。
やっぱ傷付くのは確かだし。あんな態度の女子を見てると。
あの連中は人を傷付けても、なんとも思わないんだろうね。俺が相手だから。
家に入ると母さんが、なんかに気付いたみたい。
「泣いてるの?」
「なんで?」
「涙は流れて無いけど、そう言う表情」
学校で辛いことでもあったのかと。エメリに嫌われたのかって、そうじゃないけど。エメリは俺を支えてくれる。唯一信じられる存在。男女平等の先進国出身だけはある。
「言いたくないんだったら、言わなくていいけど、辛い時は辛いって言わないと」
「大丈夫。エメリが居る」
「そう? あたしも親だからね、支える時は支えてあげるから」
親の愛は他人の愛に勝るんだよ、じゃないっての。マザコンじゃ無いんだから、別に母さんに慰めてもらわなくていい、って言っておいた。
部屋で夕飯まで勉強して、夕飯の時に珍しく父さんが居る。いつも遅いのに。
「今日は早いんだ」
「たまにはな。学校はどうだ?」
「それなり」
「あなた、海斗だけど、学校でなんかあったみたい」
いいっての。いちいち心配掛けなくて。
でも聞かれる。
「なにがあった?」
「男子と女子が揉めただけ」
「それでなんで海斗が落ち込む? 原因がお前なのか?」
「まあ、それもあると思うけど」
さらに聞かれるけど、聞いて解消する問題じゃない。相手が相手なんだから。
「大丈夫。ホームルームで話し合ったから」
「まあ、辛いことなんて、生きてりゃ何度でも経験する。それを乗り越えて強くなるもんだ」
「あなた、そんないい加減な」
「自力で乗り越えられなきゃ、社会で通用しないんだよ」
世の中、そんな優しさなんて無いって。特に営利企業で仕事をすると、優しさなんて皆無。自分で自分を鼓舞して、乗り越えて行くしか無いんだそうだ。




