Avsnitt 29 結局、変化は無かった
あれから少し時間が経つと、俺自身はどうでも良くなった。
今日は俺の部屋で一緒に勉強するエメリだ。座布団に座り胡坐をかく、けど、なんかあんまり様になってない。ちょっと姿勢が変だからかも。
幸いスカート姿じゃないから、気にしないで済んでる。もしスカートでそれをやられると、視線が吸い込まれるかもしれないし。
勉強中に例によって例の如く、フィーカにしようとかで、すぐ休憩しちゃうけど。
「吹っ切れた?」
「そうだね」
「Men stämningen i klassen är densamma」
「ちょっと分かんない」
クラスの雰囲気は変わってない、とか言ってる。
そりゃそうだ。女子の側は俺に一切謝罪しない。むしろ野見山さんは悪くないとか、そんな感じで擁護する有様だし。まあでも、野見山さんは、そのお陰でクラス内での孤立を避けられた。
そうなると男子の中には「おかしすぎる」とか「謝りもしないのかよ」と。
女子の身勝手ぶりから、一部対立が激しくなった。放っておけばいいのに。
「そう言えば、海外の人って、謝罪したら負けみたいに見える」
「Jag undrar」
「どうかな、って、でもそう見える。日本人はすぐ謝罪するでしょ。国際舞台でも」
でも、海外の人は国際舞台では謝罪しない。中国もそうだし欧米も。韓国に至っては日本相手だと謝罪なんて絶対しない。敵視して逆切れする有様だし。
日本人の場合は、内弁慶だから外国にはすぐ謝罪する。国内では謝罪は早々しない。まず否定してみて反応を見て、どうにもならないと謝罪になる。
マスコミは特に謝罪しないし。負けだと思ってるんだろうなあ。
「en man som är ett lejon hemma och en mus utomlands」
「えっと、なにそれ?」
直訳なら「国内ではライオン。外国ではネズミ」だそうだ。つまり「内弁慶」ってことらしい。
内弁慶を表す言葉があるんだ。三文字で済む日本語とは違うけど。
「そう見えるのは確かかもね。でも、それが礼儀正しいって評価になってる」
「代りに舐めてかかってるでしょ」
「押し通すのも外交だからね」
なんでも「はいはい」と言うことを聞けば、都合よく利用されるだけ。「Nej」と強く言えない限り、都合のいい存在でしかない。
「Där makten är herre, är rättvisan tjänare」
「ごめん。よく分かんない」
「無理が通れば道理引っ込む、だよ」
もちろん直訳すると全然違う。「権力が主ならば正義は従になる」になるとか。
日本人も国際社会で、もっと強く出た方がいいそうだ。最初にうんと強く出て、相手の出方次第で次の一手を出す。そうやって交渉するのが当たり前だからと。
最初から下手に出れば、舐めて掛かられるのも当然。すぐ頭を下げるから、日本は与し易い相手と見られる。
「あとは譲れない部分は譲らない」
「日本はすぐ譲っちゃうかも」
「和を尊ぶだっけ? だからかもね」
なんでも丸く収めようとする。割を食ってもなんでも、纏まればそれでいい。だから日本は損ばかりしてるんだ。
「日本は女子の方が譲らないかも」
「Just det」
そうだね、だって。まあクラス内の女子を見れば、そう見えるよなあ。
「外交向きだよ」
「そう?」
「外交官を女性にすれば、日本はもっと外交的優位に立てるかも」
「でもさあ、クラスの女子だと」
バカ過ぎて話しにならないんじゃ、と思う。賢さと強かさがあって、根回しもきちんとできてて、準備を万全にして臨めるなら別だけど。
揉めるだけで何も決まらないなんて、返って国益損ねそうだし。
「不利になる条件は飲まなくて済むよ」
「代りに何も得られない」
「底上げが必要だね」
フィーカを終わらせて勉強する、けど、エメリがこっち見て「Är det inte svårt?」って。まあ、つらくないかってことだろうけど。
クラスの女子に無視されて、あげく俺が悪いみたいになってる。謝罪もない。
そんな状況を許してていいのかって。でも、対処不能。
「Du behöver inte oroa dig. でいいのかな?」
「海斗がそれでいいなら、これ以上言わないし、何もしない」
心配無用、って返事したけど、意味は通じたみたいだ。少しは上達したのかも。
この日の勉強も終わり、エメリが家に帰る。帰り際にキスされたけど。
翌日、教育実習生が「悪化してる」とか言い出して、改善に乗り出そうとしてた。担任は匙投げてるから、同じでいいんだけど。
個別に対処するそうだ。こんな状況を放置して、実習を終わらせたくないんだって。真面目だなあ。でも、その真面目さも教師になると、どっか行っちゃうんだろうな。担任の先生も新人の頃は真面目だったと思う。続けるうちに手を抜くんだよ。
ただ、担任の先生もまた「うちのクラスの女子はバカ過ぎる」とか言ってた。
よりによって、なんでバカばっかり集まったのかと、嘆いてたけど。
エメリ曰く「親が謝ることをしない人」だそうだ。だから子もそれに倣う。倣うって言うか、謝ることを知らないんだろうな。
それから数日もすると、ちょっと驚いた。
「あの、なんかごめん」
ひとり謝ってきた。もちろん教室内じゃなく、エメリと一緒に帰る時にだけど。
「周りに流され過ぎてた。草柳が悪いわけじゃ無いんだよね」
だそうで。
ばつの悪さからだろうけど、少しはそう思ったならいいや。
謝ると足早に駅に向かって行った。
「見習い先生かな?」
「かもね。言われて気付けただけマシだと思う」
その後も連日、謝る女子が居て。
全員じゃ無いけど、とりあえず謝る女子複数。今さらだけどね。仲良くはできないな。どうせ本心からの言葉じゃない。実習生に言われて謝った程度の話。
エメリも仲良くする気は無いらしい。彼氏をとことん貶めて、どうして仲良くできるのかって。上辺だけで気持ちが籠ってないから、そんな謝罪ならしなくていいと。
俺も同感。
表面的には諍いも収まった感じになったけど、俺とエメリはクラスの女子から、思いっきり距離置いて以前のようには接してない。あ、俺はもともとだ。
エメリは代わりに他のクラスの女子と軽く、先輩とはしっかり付き合ってる。
俺はと言えば、もともと女子とは縁が無かったから、吹奏楽部の先輩だけ。
「海斗」
「なに?」
「Låt oss gå på en ny dejt」
デートのお誘い。
気分転換に海にでも行かないかって。
「海水浴?」
「Det är trevligt att leka på stranden」
ビーチで戯れるのもいいんじゃないかって。別に泳ぐ必要は無いけど、夏休みに行こうよって。
エメリの水着姿かあ。なんかいいなあ。スタイルいいし。
「どこか行きたいところある?」
「きれいな海」
「東京湾だと汚いし、湘南もきれいとは言い難いし」
何よりイモ洗い。かと言ってプールを所望してるわけじゃないし。プールもイモ洗いだからなあ。
少し遠出しないと希望に添えないかも。
「伊豆は?」
「日帰りできるの?」
「きついかも」
「Något oanständigt beteende?」
えっと、意味分かんない。
「如何わしい行為は?」
一瞬、思考が飛んだけど。
「な、無いから!」
「Ingen handling?」
「だって、まだそう言うのは」
冗談だって。
真顔でそういうことを言われると、心臓飛び出そうになるって。
ただ、スウェーデンは性に関しては、かなり大らかな国なのだそうだ。
「Mer, oj, där!」
「え?」
「マルメ市でね、ゴミ箱から出る音」
以前日本のマスコミが取り上げたとか。ゴミを投入すると、女性の官能ボイスが出るんだそうだ。「もっと、あ、そこ」だそうで。
エロっ。




