Avsnitt 26 他のクラスの男子から
「Japanska män är inte bra på att leda」
スウェーデン語では、そう言うらしい。そして俺を見ながら言うんだもん。傷付くなあ。
もっとも、笑顔で言ってるから本気じゃない、そう思いたい。あざけりじゃ無いよな?
「勘違いしてる人も多いよね」
「Ja」
「強引なのと優しくリードする、その違いを理解しないの」
「JaJa!」
エメリと先輩、息が合ってるなあ。
あげく、男女平等を理解しないからだと、言い出してるし。こうなると俺は蚊帳の外ってなるんだよ。女子同士って悪口になると、途端によく口が回る。
帰りの電車で下車するまで、なんか「アホが多い」とか「子どもだから」とか「気付きが無い」「気が利かない」とか、言いたい放題だった。
ついでに「こっちの意思を無視して、引っ張ってやってる俺、カッケーって勘違い」とか「見てて痛すぎる」とも。
間違いなく、俺もその中に入ってるんだろうな。いじけちゃうよ。
下車して家に向かう道中。
「Vad hände? あ、日本語で、うわぁ変で? じゃないからね」
「知ってる」
意外と文句言いだって指摘したら。
「海斗のことじゃないから」
「そう思いたい」
「Tvivlar du?」
「意味分かんない」
疑ってるのかって。
あの勢いで話してればねえ。俺もまた気の利かない痛すぎる奴、そう思ってるのかって。
「Annorlunda」
「違わないと思う」
グイって感じで腕が引き寄せられ、手がギューって感じで握られてる。そして顔を近付けてって、口塞いでるし、離れたと思ったら。
「Om jag verkligen trodde det skulle jag inte vara här med dig så här」
「いや、あの、意味」
「もし本当にそう思っていたら、こうして一緒には居ないでしょ」
さっきのは一般論。俺と一緒に居て楽しい、そして離れる気も無い。そのくらい察して欲しいなと。
もう少し自分に自信を持っていいんだよ、とか言ってる。クラスの女子の印象なんて、一切関係ないのだからとも。あんな見てくれ重視の底の浅い連中、いずれ見た目で騙されて痛い目に遭うだけだって。
「大事なのは内面だよ。外見だけ良く見せても意味無いでしょ」
そうだけど。そうなんだけどさ、やっぱ自分のこともとか思っちゃうじゃん。
家に着くと、やっぱりキスされて見送った。まあ、気持ちはあるんだろう。
翌日、いつも通りしっかり腕が絡まった状態で登校。嬉しいんだけど、まだ恥ずかしさがあるんだよな。
電車内にクラスの女子の姿が見えない。同じ車両に乗るのをやめたんだろう。とことん無視するつもりなんだ。エメリも。
「なんか」
「気にしない」
「でも」
「子どもだから」
学校最寄り駅で長倉先輩と、もうひとりの先輩も合流した。
あいさつしてるけど、どっちの先輩も気にしないのかな。
「心春は気にしないみたい」
「呼び捨てなんだ」
「スウェーデンでは普通だから」
そもそも敬称なんて無いそうだ。日本人のように敬称付けて呼ぶ習慣は、ずいぶん前に廃れてしまい、今はすべて呼び捨て。唯一は王族向けの敬称だけだって。
ただ、それによる弊害も無くは無いとも。
「教師に対しても呼び捨てだから、友達感覚になって態度がね」
「だと思う。日本は上下関係厳しいし」
日本は年上は敬うものって教えられるし。気持ちが籠って無くても言葉だけって、そんなケースも往々にしてあるけどね。
だからその点で見れば、形式ばってるだけの日本と、取っ払ったスウェーデンだと、どっちがいいのかって話しかも。両極端に見えなくも無いか。日本は煩すぎてスウェーデンは気楽すぎる。
「郷に入ればってのは?」
「そうしてもいいけど、スウェーデン語の時は呼び捨てになるよ」
「敬称無いんだっけ」
「あいさつだって相手の年齢関係ないし」
誰が相手でも「Hej」が定着。親しい人向けの「Tjena」もあるけど。
「Goddag とか God förmiddag なんて、日中とか午前中に使うあいさつもあるけど、ほとんど使うことも無いし」
こんにちは、と、おはようございます、だって。教えてもらってないから、本当に使われないんだろうな。
そもそも「先輩」に該当する言葉すらない。これは英語も同様だそうで。先輩ってのは「上級生」だから、その呼び方はあっても、敬称のように使う言葉は存在しない。やっぱフランクな感じがする。
それとやっぱりファーストネームで呼び合う。ラストネームで呼び合うことは早々無いらしい。
昼休みに食堂へ行くと、別のクラスの男子が声を掛けてきた。
「草柳、だよな」
「そうだけど」
「俺の彼女がさ、言ってたんだけど」
そう言いながら前に座り話始めてる。
うちのクラスの男女が険悪な雰囲気になった理由。どうも俺やエメリが思っていたのと違うと。
「相談されたんだって」
「何を?」
「草柳のクラスの女子から」
何を、と聞いてるんだけど、勿体付けてるんだろうな。
言っていいのか、どうか考えてたけど、雰囲気が悪すぎて黙っていられない、って。
エメリを見てこっち見て、一緒に座る先輩にも少し視線をやると。
「蹴落としたいらしい」
「は?」
「その子を」
「誰を?」
エメリを蹴落としたい女子が居ると。俺じゃなくてエメリ? なんで?
疑問しか出て来ないんだけど。
「草柳と親しくしてるのが嫌だって」
「なんで?」
「Vad?」
「好きらしい」
邪魔なエメリを蹴落としてしまえば、あとは告白して付き合えるんじゃないか、そう考えた女子が居るとか。それもうちのクラスの女子に。
誰だよ。俺に惚れる女子が居るとは思えない。モテない男筆頭だったんだし。
情けないことに中学時代も彼女無し。小学校では少し親しい相手は居たけど、別に特別意識してたわけじゃない。
そんな俺に?
「いや、でも、おかしくない?」
「おかしいだろうなあ。だって、その子を蹴落としても、草柳が付き合うわけじゃないだろ」
ただ、相談された際に、この男子の彼女が冗談半分で「引き剥がし工作をすればいい」なんて言ったらしい。真に受けられて狼狽えて、迷惑掛けたことを近く謝りたいらしい。
その引き剥がし工作ってのが、俺の評価を落とすこと。女子に女子の評価を落とさせると、のちのちしつこく揉める。でも、俺ならそもそも釣り合い取れてない、と思ってたのが女子だから都合が良かったと。
「だから俺からも謝る。ごめん」
彼女が余計なことを吹き込んだせいだって。
いやいや、でもさ、わけ分かんないっての。
「それでさ、草柳のクラスの女子の半数が、それに乗ったってわけ」
「なにそれ。どの子もバカ過ぎでしょ」
先輩が怒ってる。全員土下座もんだとか言ってるし。
「その主犯格の女子は誰?」
エメリもマジ怒りだ。俺もエメリも女子と対立して、えらい迷惑を被ったわけだし。どれだけ不快な思いをしたか。クラスの女子もそうだし、画策した当事者も泣かせる、とか言い出してるよ。
「俺は話を聞いただけだから、その女子の名前は知らないんだよ」
「じゃあ、その彼女から話を」
「それ、放課後でいいかな?」
と言うことでお詫びを兼ねて、放課後に話をすることになった。
男子が席を立つとエメリと長倉先輩から、ため息が出たようだ。
「Jag borde ha sagt att jag gillade det lydigt」
「えっと何?」
「素直に好きだって言えば良かったのにって」
「だよね。巻き込んで雰囲気悪くして、どう収拾付ける気だったんだろ」
ただひとつ言えるのは、俺を好きだと思ってる女子ひとりに、みんな振り回されたってことか。
どうするんだろ。そんなことして、バレたりしたら逆効果だと思うけど。
バカなのかも。




