Avsnitt 25 テストの結果は上々
次々返却される中間考査の解答用紙。
その点数を見て、まずますと思う俺が居るけど、母さん曰く。
「勘で当たった部分と答えられなかった部分。ちゃんと学び直しておきなさい」
だそうで。
それらは理解できてない部分だから、放置すればのちのち困ることになると。先々授業内容は難しくなるばかりで、付いて行けなくなるらしい。いわゆる落ち零れの状態になるそうだ。
母さんも学生時代それで苦労したとか。経験談なんだからちゃんとやれって。
「エメリちゃん。優秀そうだからふたりで、きっちり勉強しなさい」
たまに出掛けるのもいいけど、学生の本文は勉強なのだからと。
口煩いけど、言ってることは間違いじゃないんだろう。
「少しでもいい大学行きたいでしょ?」
「まあ、それなりに」
「だったら、基礎課程はきっちり抑えておきなさい」
予備校なんかで、受験テクニックだけを身に着けるのも結構だけど、人生であれほど役に立たないものは無いらしい。その時の為だけに高い授業料を支払って、入学してしまうと意味のないテクニックだからだそうだ。
「日本の入試システムがそうだから、仕方ない部分はあるけどね」
そんで結論。
「小遣いの増額だっけ?」
「そう」
「まあ、多少は頑張ったこともあるから」
増額決定。もともと五千円にプラス二千円。無駄遣いするな、とは言われてる。エメリとのデート代だから無駄とは思わないけど。むしろゲームなんかに課金するより、よっぽど有意義な使い方だと思う。
ただし、成績が落ちるようなら、小遣いも減額するってのは不文律だそうだ。
増額が決まった翌日、登校する際にエメリの結果が気になった。
「良かった?」
「Vad?」
「テストの結果」
「Bra resultat」
良い結果か。日本語の設問文でも支障無いんだ。入学できたんだし当然か。
「英語も?」
「持って回った変な文章が多いけど、大丈夫だったよ」
中学の時も思ったそうだけど、あの授業内容だと英会話は無理だろうなって。
文法に時間を割いて会話は無し。話せもしないのに文法だけ学んで、意味があるのかと思うらしい。
日本人が日本語で会話するのに、文法をいちいち意識してるのかと。
「確かに」
「だから日本人はいつまで経っても会話ができない」
実践的な英語じゃなく、試験のための英語。だから役に立たないと感じるそうだ。
何年も掛けてネイティブに遠く及ばない。英語が話せるだけで、いまだにすごいと言われる。
スウェーデンでは母国語と、英語の両方は当たり前に使えるのに、だって。
「英語で会話する人も多いし、逆に恥ずかしがる人も居るけど、日本みたいにすごいね、にはならないよ」
至って普通に使う。恥ずかしがる人は英語が下手だから、と言うだけで話せないわけじゃない。
高校以降では英語以外にドイツ語やフランス語も学ぶそうだ。
最近では日本語も学ぶ人が増えているとか。エメリも小学生の時から、アニメの影響を受け日本語を学んでいたんだって。
「Även om det absoluta antalet är litet」
「えっと、分かんない」
「絶対数は少ないけどって」
「まあ、日本語って世界から見れば、マイナーな言語だと思うし」
アニメやコミックが無かったら、見向きもされない言語なんだろうな。
影響力すごいな、日本のアニメ。
学校最寄り駅で、待ち構える男子と合流すると「ヘイ」が飛び交う。イントネーションが微妙に違う男子も居るし。エメリが実践しても真似できないみたい。
もっと親しい感じになれば「Tjena」なんて、あいさつもできるとか言ってる。
まだ、男子とは多少距離がある感じかも。
教室に入ると、相変わらず女子と男子は決別中。
エメリ派男子は俺を中心にしてる感じで、ああでも、ちょっと自意識過剰か。それほどでもない男子は中立かも。女子と最低限の会話は交わしてるから。
実習生と担任が教室に入ってくると、やっぱり気にしてない風の担任。実習生はまだなんかしようとしてるのかな。
無駄だと思うけど。
ホームルームが終わり授業が始まると、実習生が教室内をうろうろ。ひとりひとり見て回ってるみたいだ。
エメリのところに行くと、なんか囁いてる。実習生の方を見て教室内に聞こえる声量で「Jaha! Jag överger det」だって。
放棄してるってことだろうけど、実習生だけじゃなく、他の生徒も何を言ったのか、さっぱりって表情。スマホで調べればいいのに。最低限の翻訳はできるんだから。それとも生徒同様、スマホの使用制限があるとか。
それにしても「Jaha」って「Yes」なんだろうけど、表現として砕けた感じがする。
ちょっと面喰った感じで、また他の生徒を見ながらこっちに近付いて来て、やっぱり聞かれた。
耳元で囁かないでよ。くすぐったいから。
「あの、さっきの言葉の意味」
「放棄」
「え、あ、そうなんだ」
担任も放棄してるんだから、首突っ込まなくてもと思わなくもない。お節介な性格してるのかな。それとも教師になるための試練とか。これを解決できずに生徒の指導なんて無理、とか思ってたりして。
まあ勉強だと考えたら教師としての実績になるかもね。
昼休憩の時に実習生は、エメリと決別した女子のグループに話し掛けてる。
きっとあること無いこと吹聴してるんだろう。全部男子が、いや、俺が悪いって言ってるんだろうな。なんか、女子の嫌な面ばっかり見えてくる。
エメリは外国人だからかもしれないけど、日本人の陰湿な感じとは違う。
「気になるの?」
「えっと、何が?」
「Andra sidan」
「別に気にしてない」
休憩も終わり午後の授業も終わると、今日は部活のある日だ。
「Vi ses, Tjenare」
「じゃあ校門前で」
部室に行くと先輩が早速傍に来て「指導? それとも相談?」とか言ってるし。
相談しても埒明かないから指導で、って言って教えてもらう。
この先輩もなんか気さくな人だなあ。でもお陰で付き合いやすいけど。
「だいぶ上達したね」
「そうですか?」
「アンブシュアのコントロールも上達してる。音色も良くなってるからね」
褒められてるんだ。
「もう少ししたらみんなと一緒に練習できるよ」
「まだ無理な気もしますけど」
「大丈夫だって。プロじゃないし、うちの学校、それほどレベル高くないから」
ひとりでやってるとアンサンブルに支障が出るとか。パートごとの練習はもちろん大切。だけど合奏である以上は、それだけでは意味が無いからと。
先輩のアドバイスが終わると、またひとりで壁に向かって練習する。
なんか、この吹奏楽部って先輩以外、馴染み辛いなあ。
部活も終わりの時間になると「じゃあ、帰ろうか」って、先輩も一緒に帰るみたいだ。
エメリが嫉妬しないか、なんて考えながら校門まで向かうと。
「Gillar du det trots allt?」
やっぱそれが好み、とか言われても。
「違うってば」
「Verkligen?」
「マジで」
「Hmm」
今ひとつ信用されてない感じだけど、先輩が「ねえ、日本語で会話してよ」だって。それか都度翻訳して欲しいって。ハブられてるみたいで悲しいとか言ってる。なんかこの先輩、可愛らしい感じ。先輩ぶらないから気楽かもしれない。
「あ、すみません」
「いいけど、あたし分かんないんだから、もう少し気を使って欲しいな」
「あーでも、エメリのあれなんで」
「あれ? ああ、嫉妬」
理解してくれたようだ。
「大丈夫だから。あたしは年下に興味無いし」
「ガキっぽく見えるからですか?」
「違うってば。リードして欲しいから」
「日本人男子はリードが下手」
エメリ。それは事実でも言われた当人が傷付く。
年上も下手だって。




