Avsnitt 24 見習い教師は気付いた
「先生の名前は?」
「最初に自己紹介したと思ったんだけど」
「Hinako Nishie」
「あ、そうだった」
服に着られすぎてる印象強くて名前忘れてた。
席に着いた先生だけど俺とエメリを見て、違うテーブルで食事してる女子を見て。
首を傾げてみたり、箸を持ってランチいじってるし。何がしたいんだろう、この先生。
「あのね」
なんか言いたそうな。
「男子と女子、仲悪いの?」
気付くんだ。こんな若い先生でも。担任の先生は全然知らん顔してるのに。
完全に分断したかのような、誰も口利くでも無い、無視してる感じがするって。
「Inga problem」
「えっと、日本語……」
「問題無いです。って言ってます」
「あ、そう。で、でもね、なんかやっぱり」
気になったんだろうな。男女仲の悪さが。
でも、もう改善する意思は無いし、言うだけ無駄だろうし。俺とエメリが付き合ってる、それを問題と思ってるんだから。取るに足らない男子と美形の女子。しかも外国人が冴えない日本人男子を相手にしてる。それが気に食わない。
感情から来てるんだから、理屈で理解するのは無理でしょ。
「Praktikanten behöver inte delta」
「え?」
エメリの発言で俺を見てるけど、さすがになんでも分かるわけじゃない。仕方なくエメリに意味を問うと。
「実習生が関わる必要無いです」
突き放してるなあ。でも、クラスの女子になんか言っても無駄、ってのは分かってるだろうし。
「あ、えっと、でもね。このままだと良くないかなあって」
「原因は女子です」
「そうだよ。草柳は被害者だし」
「当事者無視して別れさせようとしたんだから」
男子が庇ってくれてる。そんなに親しくはしてなかったけど、見るに見かねてってのもあるんだろう。エメリも悲しそうな表情してたし。そっちの方が気になったかもしれないけど。
とにかく、俺を嫌ってエメリから引き剥がそうとした。それが元で揉めたのだから、何とかしたいなら女子に言えと、男子が口を揃えて言ってる。
「あいつら見た目だけで判断してる」
「イケメン以外付き合う資格なし、なんて思ってんだろ」
「先生も女子だから、あいつらに迎合したり?」
「ありそうだよな。男の先生じゃ無いと」
飛び火した。ちょっと戸惑ってるし。
「イケメン?」
「美男美女じゃ無いと許せないんだろ」
「並の男と付き合うなんて、って」
「あの、そう言ったの?」
高校生にもなって見た目だけが価値基準、なんてのはさすがに無いでしょと。女子の方を見て、やっぱ首傾げてるし。
俺を見て「顔? 悪いと思わないけど」とか言ってる。
「ちゃんと話し合った方が」
「無駄だっての」
「あいつら問答無用だから」
「自分たちで鏡見たこと無いんだろ。だから草柳のことを言えるんだよ」
他人のことを言えるほどに可愛いとか、美人なのかって話しだそうだ。
「あの、だからね、見た目じゃなくて、違うところに問題が」
「じゃあ、草柳は性格が腐ってんのか?」
「じゃなくてね」
先生、無駄だから首突っ込まない方が。担任だって知らん顔してるし。
何も進展しないまま休憩が終わった。
「女子からも話聞いてみるから」
「無駄ですって」
「先生も取り込まれるのがオチだよな」
「所詮女子だし」
男子の誰も期待してないのを感じ取ったみたいだ。ちょっとしょげてるし。まだ大学生だもんなあ。信頼のある先生とかなら、まだ期待もするだろうけど。実習生ってまだ教師でも無いから。
男子が戻る前に女子はさっさと教室に戻ってる。
それを見た先生は困った表情してるし。
教室に戻る際、エメリが「熱血漢って言うのかな」だって。
「熱血教師? だと思う。漢って男って意味だし」
「そうなんだ。日本語は難しいね」
スウェーデン語も難しいけどね。
あと、まだ教師じゃないけど。熱血って言うより、気になった程度だと思う。
午後の授業も終わって、部活に参加する生徒や、委員会活動に参加する生徒が、次々教室をあとにする。
今日は吹奏楽部の活動は無い。まっすぐ帰ることに。
「エメリは」
「無いから帰るよ」
で、一緒に。
教室に残ってる男子生徒に「ヘイドー」って言うと「ヘイドー」とか返してるし。
「Hejdå vi ses」
やっぱ発音が違う。片手は俺の手に。片手は教室内の男子に向けて。
「海斗はテスト、どうだった?」
「今日の返却分は申し分ないと思う。エメリは?」
「Gjorde det」
「時々分かんない」
できた、そうだ。
いつ勉強してるのか知らないけど、ちゃんとできるんだ。やっぱ頭いいのかも。
学校を出ると吹奏楽部の先輩が居た。いつも通り繋がる手を見て「仲いいね」とか言ってるけど。
「今帰り?」
「そうです」
「まだ女子と揉めてるの?」
「揉めてるって言うか、互いに無視って感じです」
ちょっとおかしいって。誰が誰と付き合おうが、そんなの本来関係ない話だし。性格とか破綻してるなら、忠告するかもしれないけどって。顔が少し悪いくらいとか、釣り合い云々でここまで揉めるのは変だって。
原因がもっと他のところにあるんじゃないかと。
「思い当たる節が無いです」
「草柳君、別に不細工じゃないし、性格も悪いわけじゃないしねえ」
露骨に素行不良児なら心配しても、そう言うわけでも無い。理由がさっぱりだって。
「実習生もなんか言ってました」
「実習生? あ、そうか。教育実習の季節だもんね」
実習生も感じ取ってるなら、問題は女子にありそうだと。ただ、じゃあ先輩がなんか言ったとしても、解決はしそうに無いしって。
ちょっと歯痒い感じになってるみたい。
「元からだった?」
「なにがです?」
「邪魔するようになったのって」
そう言えば、最初の頃はそうでも無かった。なんかいつの間にか、って言うか急に引き剥がしが。
「ちょっとは勿体ないって感じでしたけど、最近急に」
「そうなんだ」
なんか考え込んでる感じ。
電車内でも考え込んでるけど、先輩が悩む必要は無いと思う。クラスの問題だし、解決を望む空気は無いんだし。なに言っても無駄だと思ってるから。
雰囲気は悪いけど、一年もしないうちに別のクラスになるし。
「Det är bäst att inte oroa sig för det」
「え?」
「気にしない方がいいですよ。って意味です」
「でも、雰囲気悪そうだし」
意外と心配性なんだな。でもそれだけ面倒見がいいのかも。吹奏楽部でひとり壁に向かって練習してて、唯一声掛けて教えてくれてたし。
下車する時も「実習生を巻き込んで解消した方がいいよ」だって。今のままだと、この先体育祭とか、文化祭でクラスが纏まらなくなるからと。
なんかしら行事の時に困るってことか。でも、今さらって気もする。どうせ譲る気無いんだろうし、女子の方が。俺がエメリと別れれば、なんて条件出されたら意味無いし。
「海斗はどうしたいの?」
「面倒だから今のままでいい」
「Är det okej?」
「どうせ別れろって言われるでしょ」
無意味な干渉は要らないし、余計なお世話も極まってる。マジでうちの女子だけ異常。
「Men något är konstigt」
「変?」
「奇妙」
「確かに妙だけど、俺だから納得しないんだと思う」
これが学校内で一番出来のいい生徒なら、文句も出ないんだろう。イケメンでスポーツ万能、勉強もできるすごい奴とか。そんな万能な奴なんて、居るとは思わないけど。でも、勝手に理想像を描いて「これ違う」感があるんだと思うし。
家に着いて別れ際、やっぱりあるんだよね。キス。
「海斗は他の女子が言うほど悪くない。女子が変なだけ」
慰めてくれてるのか。
定番となったキスのあいさつを済ませ、エメリを見送ると自分も家に。




