Avsnitt 23 見習い教師がやってきた
つつじを見てたけど、さっきの「こら」が気になった。
「seじゃないの?」
「見る、見たとかには se, tittaがあるけど、若者言葉でkollaもあるの」
「機械翻訳で調べると小切手とか出る」
「そういう時は違う辞書を使った方がいいよ」
続けて「こらこら」は「見て見て」になるのか。知らないと勘違いするな。
日本語に聞こえるスウェーデン語は他にもあるとか。
「Skynda på!」
「死んだぽー?」
「そう聞こえるでしょ」
ネット言葉みたいな。
「Skyndaで急ぐ。英語のHurryと同じ意味。påが付くと急げ、とか急いでって急かす意味になるの」
「じゃあ、Hurry upと死んだぽーが同じ」
「もともとpåは英語のatと同じで前置詞だけどね」
他には「Påskynda」で加速とか促進の意味になるらしい。ネイティブに近いレベルに到達するには、相当な時間が必要そうだ。
今の言葉もまた機械翻訳だと、なんか違う意味が出てくるし。難しい。
「あとね……sexってあるんだけど」
「せ……」
「意味は違うんだよ。数字の六」
「あ、そうなんだ」
なんか、口にし辛い。スウェーデンでは数字でも、日本だと別の意味に取られちゃうし。なんか人の多い外では迂闊に口にできないかも。
それにしても、ちょっと照れてるエメリが可愛い。俺もたぶん顔が赤くなってるかも。
少し寄り道した感じだけど、今日はここまでにして帰ることに。
すでに時間も三時だし。
植物公園を出るとバス停がすぐ。調布駅北口行きのバス停で暫し待つ間、ちょっと疑問に思ったことを。
「エメリは渋谷とか新宿に興味無いの?」
「Nja」
「微妙なんだ」
「すごいとは思うんだけど」
人混みもそうだけど、騒々しいのが苦手だそうだ。騒音の少ない静かな環境や、空気のきれいな場所がいいらしい。
まあ、お世辞にも渋谷とか新宿は、環境面でいいとは言えないな。最新のトレンドとかに興味があれば、楽しい場所なんだろうけどなあ。俺も興味無いし。
待ってたらバスが来て乗り込む。
座席は高齢者で埋まった。座れないなあ。
「混んでるね」
「帰る時間が重なったからだな」
並んで吊革に掴まり駅まで。で、駅で京王線に乗り途中乗り換えて、自宅最寄り駅まで。
下車して改札を抜けると腕が絡まって、手も繋がれて。なんかいいんだけど、エメリって、こういう場合は恥ずかしがらない。
俺は少し恥ずかしいんだけどな。
そして家の前。あれだ「Kyss」だよ。毎日やるって宣言したから、もうね、逆らっても無駄でエメリの唇がしっかり。
唇が離れると手を振ってる。
「Hej då vi ses」
「ヴィセース」
手を振って家に入るエメリを見送り、自分も家に入って行く。
ただいま、って言うのと同時に母さんが、リビングから顔出してるし。
「デート楽しかった?」
「まあ」
「テストの結果はいつ?」
「明日以降」
結果次第では小遣いの増額はあり。ただし入学時より落ちていたら、本気で減額するそうだ。学生の本分である勉強をしっかりやって、その上で要求するのが筋だからと。
そう甘くは無いよなあ。
「学年一位を目指してもいいんだけど」
「無理」
「超進学校でも無いでしょ」
「だから、母さんの子どもだよ?」
こう言えば、ぐうの音も出ない。とは言え、毎回前回より上積みになると、いずれ行き着く先は全科目満点になる。絶対無理じゃん。
どこかで行き詰るよなあ。
部屋に戻り明日の支度だけはしておく。
翌日、玄関を出るとエメリが待っていて、朝のあいさつを済ませて駅に向かう。
「結果は今日から分かるんだよね」
「たぶん。あ、でもエメリは日本語問題無いの?」
「Nej。分からない言葉がいくつかあったよ」
「それで大丈夫なの?」
前後の文から推測して解答してるらしい。特に国語や数学が厄介だったとか。英語に関しても日本の学校教育英語とは、また少し違うから面倒臭いらしい。
「Nativeが使わない英語だから、あれをそのまま使うと恥ずかしいよ」
「だろうなあ」
外国人から見ると、やっぱ日本の英語教育は変なんだ。
変と言われて何年も経ってるのに。きっと点数化し易いようにしてるからかも。
それと教師が用意してる解答と違うと、間違いとして処理される。つまり点数にならない。いくら英会話が達者でも、点数は良くなりにくいのが、日本の英語教育。
意味あるのかってなるよなあ。
「一字一句同じで正解だから」
「融通利かないよね」
「教師って言うか、教育方針が変なんだと思う」
電車に乗ると同級生の女子が居るけど、こっちには近寄って来ない。
なんか、ここまで来るとバカだとしか思えない。レベルが低いにも程がある。
「エメリ」
「気にしてない」
「でも」
「村社会でしょ」
知ってるんだ。
学校最寄り駅に着くと、男子が数人集まってくる。
「エメリ、おっはよ」
「おはようって、なんて言うんだ?」
「God morgon! だけど、Hejでいいんだよ」
「じゃあ、ヘイ!」
笑ってるし。
女子とは仲違いしたけど、その分、男子が楽しそうだ。俺も仲間外れにされたとか、そんな意識をしなくて済む。
邪魔だったんだよなあ。クラスの女子。
教室に入りホームルームになると、早々に実習生が紹介された。
「今日から三週間お世話になります。西江日菜子です」
スーツ姿の女子大生。もともとこの学校出身だそうで。ってことは大先輩ってことか。なんかスーツが浮いてんなあ。俺から見ても着られてる感がすごい。
自己紹介を済ませると教室の隅に。担任が様子を見るようにと指示してるから。
生徒の顔を見て、手元にある名簿だろうか、それを見ながら確認してるみたいだ。
でだ、エメリを見てちょっと驚いてる感じ。目立つもんなあ。顔も髪も目の色も。
ホームルームが終わり退席する実習生だけど、授業が始まると補助として、教室の隅にやっぱり居る。
今日はまず雰囲気に慣れて、先輩教師の授業を知ることだそうだ。
中間考査の結果が返却されて、それぞれ一喜一憂してるけど、俺はと言えば。
心の中で小さくガッツポーズ。よっしゃ、って感じ。
エメリはどうかと思って見ると、視線がこっちを向いて親指立ててる。
授業の合間にエメリの傍に行くと、他の男子も集まるし。
「趣味は?」
「好きな食べ物とか」
「スウェーデンってほとんど知らないんだよな」
「教えてくれる?」
興味は尽きないんだろう。女子に邪魔されて話ができなかったし。やっと機会が巡ってきたって感じで、わいわい楽しそうだ。
男子の好奇心に応える感じで、エメリもいろいろ話してる。
「スウェーデン語のあいさつって」
「朝のあれと昼は?」
「さようならって?」
「Lugna ner dig」
忙しない感じで質問されるから、またスウェーデン語になってるし。「意味は?」ってなってるし。
「落ち着けって」
「分かるのか?」
「少しは」
「すげえじゃん」
俺でも多少は分かる。エメリとスウェーデン語で話しができるように、毎日少しずつ勉強してるし。
感心する男子だけど、エメリがにこにこ。なんか嬉しそうだ。
昼休みになると食堂に移動する。
当然男子もぞろぞろ。エメリと俺の両側とか後ろに多数。
食堂で各自席に着くと昼飯を食べるんだけど、そこに実習生の大学生が来た。
「少しいいかな」
「Snälla tveka inte」
「えっと、どういう意味?」
「どうぞ、遠慮しないで、って意味です」
俺が答えちゃったからか驚いてる感じ。エメリから返答があると思ったんだろうけど。
「分かるの?」
「少しだけなら」
「へえ。スウェーデン語だよね」
「そうですね」
男子が座ってた席をひとつ空けて、実習生の名前なんだっけ?
「えっと、先生の名前って」




