Avsnitt 19 話をして分かること
俺の部屋に来るというエメリ。
ゴミ箱に招待はできないよなあ。仕方ないから片付けて掃除する時間が欲しいと。
「気にしなくていいのに」
「いや、足の踏み場くらい確保して、足の裏に埃が付かない程度に、きれいにしておきたいから」
「大袈裟だなあ」
「事実しか言ってないんだけど」
午後二時に来て、と伝えて自宅に。
飯食ってから片付けても、一時間もあれば少しはきれいになると思う。
キッチンを覗くと母さんが居て昼飯の準備してる。
「あとでエメリが来るから」
こっち見てにやけてるし。
「部屋、掃除しておきなさいよ」
「そのための時間は確保した」
「日頃から片付けておけば慌ててしなくて済むのに」
母さんが片付けても掃除しても、三日で元の木阿弥なんだとか。維持していれば少しの手間で片付けられるのに、って文句言ってる。それができれば苦労しない。なんか自然にゴミ箱になってるんだから。
昼飯を食べ終わると早々に片付けを、と思ったけど、どこから手を付ければいいのか。
暫し部屋で立ち尽くしていると、母さんが来て「どうせ掃除なんてろくにできないんだから」とか言って、部屋の片付けと掃除を始めてるし。
「あんたはベッド周りと机周りを片付けなさい」
部屋に散乱している服やゴミは、効率よく母さんが片付けて、見る見るうちに床が見えてくる。
足の踏み場ができると、掃除機をかけて埃から解放された。
その間、ベッド上で丸まってた掛け布団や、脱ぎ捨てたパジャマやスウェットを片付ける。
机の上も散らかった文具を引き出しに押し込み、投げてあった参考書なんかも棚に戻しておく。
「あれ? 入らない……」
「適当に詰め込もうとするからでしょ」
もともと収まってたのに、適当に入れるから入らないのだとか。
結局、母さんにやってもらい、部屋に迎え入れる準備ができた。
少しするとドアホンが鳴ったようで、階下に向かいエメリを迎えると「差し入れ」とか言って、手渡されたのは皿に載ったケーキ?
「Morotskakaだよ」
「なにそれ」
「Carrot cake。En klassisk bakad konfekt på Fika」
「定番の焼き菓子なんだ。それも作った?」
当然だと。カッフェと一緒に食べる焼き菓子は、全部手作りなのだそうだ。
母さんの分もあるそうで、渡すと喜んでいたけど。テストが終わったら夕食をご馳走すると約束してた。
でエメリから提案。
「今度一緒に作ろうね。教えるから」
「俺も作るの?」
「スウェーデンだと誰でも作れるよ」
男女平等ってのは、キッチンの作業も全部ひっくるめて。時々、なんか手の込んだものを作って、料理自慢する日本の男子とは違うそうだ。日常の家事すべてを男女、分け隔てなく行うのがスウェーデン流。
炊事洗濯掃除育児。全部共同で行うらしい。そしてそれができる男性なのだとか。
「たまにご飯作って、たまに掃除してみて、結局パートナーに不満を抱かせるだけの、日本人男性とは違うの」
休日だけ少し手を出す程度じゃ、上達するわけもないし、やり方が違うと文句が出て当然だと。
夫婦で毎日分担してやるから、きちんとできるのだそうで。
「できるようになってね」
無理、って言いたいけど、やった方がいいんだよな。
部屋に通すと「Det är inte en papperskorg」って、なに言ってるかいまいち分からないんだけど。
ゴミ箱じゃないそうだ。まあ、片付けて掃除したからね。
座布団を調達しておいたから、そこに座るよう指示して、飲み物だけ用意した。
「これがJapansk kuddeなんだね」
「座布団」
「沈み込まないんだ」
座って感想言ってるけど、使ったことは無いらしい。一般的なクッションは使っていたそうだけど。
で、さっきの続きがあるとか。
「仮の話だけど、将来結婚して一緒になるパートナーと、良好な関係を築けるよ」
それがエメリでも違う人でも、だそうだ。円満な家庭を築く上で家事もできない、やろうともしない男性なんて、例え日本でも相手にされなくなるからと。
とは言え、とエメリが言うには。
「スウェーデンだと離婚率が高い」
「じゃあ意味がない」
「違うの。無理して継続するより離婚して、幸福を追求した方が合理的だから」
離婚したからと言って親権者だけが、子育てを継続するわけじゃないと。例え離婚しても子育ては一緒に行う。つまりは法律上の制約からの解放でしかない。
女性が自立しているスウェーデンでは、婚姻生活を無理に維持する必要性も無い。
互いに不満を抱えて生活するなら、さっさと離婚した方が幸せになれる、そう考えるのだそうで。
「日本だと離婚は世間体とか、シングルマザー問題とかで、マイナスに捉えられてるけど」
「親権を持ってる持ってないとか法律で縛るからだよ」
離婚したら子供に会うことも許さない、でも養育費は支払えとか。何かしら歪な構造があるんじゃないのかって。
女性が完全に自立しきれないのも問題だそうで。男女ともに自立できていれば、一方に寄り掛かることもなく済むはずだとも。
「国ごとに違うから、これが絶対正解、なんて言わないよ」
「まあ、日本には日本に合った政策があると思うし」
「でも、日本の女性は幸福感を得にくいんじゃないかな」
だから、学校の女子みたいに相手に要求するものが大きくなると。エメリと釣り合いの取れる男なのかどうか。それを勝手に判断して釣り合ってない、だったら引き剥がせ、なんて思考に至るのだろうと。
女性が自立しにくいから、その分、男性に求めるものが肥大化する。それを無くすには男女平等の推進と同権にすること。
「報酬でも格差があるってMammaが言ってた」
「確かにニュースでも言われてる」
「日本はジェンダー後進国なんだなって」
やっぱSDGs先進国から見ると、日本はいろんなところで立ち遅れてる、そう見えるんだ。
だから学校の女子だけが悪いんじゃなく、社会構造に問題が多いと。
それをちゃんと話して理解させるそうだ。
「揉めない?」
「スウェーデンなら揉めない。でも日本は分からない」
「理解しないと思うよ。社会が変わらないと」
「じゃあ今のままでいいの?」
エメリに見合わない相手だからと、女子が集団で勝手に俺を排除する。エメリに対する親切心でも、それは余計なお世話。自分で考えて判断した相手なのだからと。
自立しきれない女子だからこそ、集団で方向性を定めてしまう。結局、自ら枠の中で立ち回ろうとするだけ。枠を壊す方に舵を切らないと、いつまでも自立できないそうだ。
「幸福の形を枠に嵌めて考えるから、幸福度が低くなるんだと思うんだ」
こうであるべき、こうでなければならない。
女性もまた、そう考えてしまうから、うまく行かないんじゃないのかって。
ジェンダーに関しての考え方にずいぶん違いがあるんだな。
それはそうと。
「あの、テスト勉強少しやりたいんだけど」
「やらないと駄目なの?」
「小遣い増額。エメリと楽しい時間を過ごすため、って言った」
苦笑いしながらも「じゃあ少しは協力しよう」だって。成績大丈夫なのかな。
「テストで赤点取るとしんどいよ」
「Inga problem」
「えっと、それってNo problemってこと?」
「そう」
自信はあるみたいだ。どこから湧いてくる自信なのかは知らないけど。
それでも、ものの考え方とかしっかりしてるし、頭悪かったらさっきの話なんてできないよなあ。
いろいろ話をしてて勉強を三時から始めたけど。
「Fikaにしよう」
「えっと、まだ一時間も経ってない」
「息抜きは必要だよ。前日に詰め込んでも結果は一緒」
さっきの差し入れはすでにない。もう要らないけど。




