Avsnitt 18 女子の醜さを知った
エメリと愉しみたい、ってのは本音。そのための成績向上を目論んでるし。
デートの原資を確保するから。
そしてテスト初日。母さんには成績向上で増額を確約させた。
「執念」
「違う」
「いくら?」
「月額二千円」
ただでさえ金がかかるのに、輪をかけて小遣い増額なんて、と言ってるけど。
「じゃあ、バイトして成績落ちたら」
「落ちないようにすればいいだけでしょ」
「勉強時間が減る。母さんの息子だよ」
自分が学生時代、どの程度優秀だったのか。東大楽勝レベルならともかく、そうじゃないなら、息子のレベルも推して知るべしだ、と言っておいた。
トンビは鷹を生まないし、蛙の子は蛙だとも。
「口だけ達者になって……」
こんなやり取りの末に勝ち取ったのだ。現在五千円もらってる。高校生の平均額らしいけど。これに上積み分二千円を足せば、デート代に余裕が出るってもので。
余裕が出た分は貯金して、プレゼントとかも考えてるわけで。
「成績落ちたら元の額から二割減額するから」
五千円から二割って、四千円。かなり手痛いけど、落とさなきゃいいだけの話だ。
玄関を開けると門前にエメリが居て、手を振りながら「Tjena!」って言ってる。
同じように手を上げて。
「シェーナ。エメリ」
「今日からTestaなんだよね」
横に並ぶと腕を絡めて駅に向かって歩き出す。
空を見上げると天気はあまり芳しく無いな。雨が降りそうな。
「傘、持ってる?」
「Paraply? 持ってない」
「雨降りそうだよ。一応折り畳み傘は持って来たけど」
「じゃあ、降ってきたら入れてね」
小さいから無理だと思う。まあ、降ってきたらエメリに貸せばいいか。俺は濡れるけど。
駅に着き改札を抜ける際には腕が離れ、ホームに向かう前にまた腕が組まれるし。
接触が増えるのは悪く無いんだけど、周りの目がねえ。高校生の癖にって感じで。冷ややかな視線が少し痛い。日本人って、こう言うの気にするし。
「エメリは視線気にならない?」
「Varför?」
「ならないんだ」
「気にしても仕方ないでしょ」
自分がどうありたいか、どうしたいか、でしかないそうだ。周りの目を気にして、自分を殺してどうすると。
「日本人って人の目を気にしすぎるのかな」
「気にする。だから海外でマナーがいい、って言われるんだと思う」
「でも、人目が無いとだらしないよね」
「それは、まあ……」
集団時の属性によってか、人の目が無い時に、本性が出るのが日本人かも。
良くも悪くも周りに流されるのが日本人だし。集団の属性が悪い方向を向いてると、周囲への迷惑を一切考えなくなるし。その逆が海外で評価される日本人像。
こんなことを考えるのも、エメリと一緒になってからだな。日本人だけのコミュニティだったら、こんなこと考えもしなかったと思う。
「エメリ」
「Vad?」
「勉強になるよ。一緒に居ると」
「Det var bra」
で、俺を見て「なんの?」だって。良かったね、と言っておきながら、実は何の勉強になったか理解して無いんだ。
国も文化も違う視点があると、考えさせられることが多くなる、って言っておいた。
学校最寄り駅に着くと先輩含め女子が取り囲む。
男子はどうしたのかと思えば、相変わらず遠巻きに見てるだけだし。でも、分かるんだよなあ。女子ばっかりの中に飛び込む勇気はない。俺の場合はエメリに引っ付いてて、勝手に女子が集まるだけ。だから巻き込まれた感じでしかない。
クラスの女子は俺なんて視界に無いし。先輩はともかく、見た目重視だからなあ。
教室に入ると男子から「ハーレム王」とか言われるし。
「毎朝女子に囲まれていいよなあ」
「その認識は違う」
「でも、あれじゃあ入り込めねえぞ」
「エメリ以外は俺に興味無い」
あ、と思った時には遅かった。
「付き合ってるんだ」
「金髪美人かよ。サイコーじゃねえか」
「ついに陥落させたのかよ。贅沢だよなあ」
いいんだけど、なんか軽く嫉妬されてる感じが。でもひとつ、女子と違って「こんな奴と」とは言わない。男子の方がその点で気楽だな。
とりあえずテストが始まるってことで、大人しくなってくれたけど。
テストが始まると教室内は静けさに包まれる。聞こえるのはペンを走らせる音だけ。みんな机に向かって、真剣に答案用紙に書き込んでる。自分もだけど。
で、思ったのは、高校に入って最初の考査。意外と楽だと思った。
学校のレベルが低いわけじゃない。入試でそこそこの点数で、辛うじて入学できた感じだけど。
でも、目の前にある問題はそれ程でも無い。目標があって取り組んだ甲斐があった、そう思えばいいのかも。
ひとつの科目が終わる度に口々に「どうだった」とか「できた」「できなかった」「楽だった」とか。
エメリがこっちに来ようとして、女子に囲まれて来れないみたいだ。「どうだった」とか「できた?」とか「難しくなかった?」とかね。どうでもいい話に終始してるし。エメリの視線が時々こっちに向くけど、そこに加われる状況じゃ無いんだよね。
なんで女子ってすぐ群れたがるんだろ。迷惑そうなのにお構いなしだし。
そしてまたテストが始まると静けさが戻る。
これを何度か繰り返すと、今日の科目が終了し帰宅できる。全部それなりに手応えはあった。確実に小遣い増額を目論めるかも。
エメリと帰ろうと思って見ると、やっぱり女子が群がってるし。
「あ、海斗、一緒に」
帰ろうとしたんだろうけど、女子の群れにさらわれてるし。逃れられないみたいで。「帰ろ」とか「聞きたいことあるんだよね」とか「話ししようよ」とかで。
俺とは一緒にさせない、そんな意思が透けて見える。
どうせ下車駅は一緒だし。途中までは後ろに居てあとで一緒になればいいや。
一部始終を見てた男子がなんか言ってるし。
「草柳と一緒にしたくないんだな」
「相応しいと思って無いんだろ」
「ありそうだよな。美人にはイケメンと、なんて思ってそうだし」
「勿体無いってか」
醜い。斯くも日本の女子は醜い。なんかすごい幻滅した。
エメリにはそう言ったものが無い。平等や同権ってのがしっかりある。だから見た目やステータス、性別で優劣を付けたり判断しない。
日本の男女平等なんて、絵に描いた餅だよなあ。女子が望む方向に持って行きたいだけ。女尊男卑にしたいだけでしょ。これまでが男尊女卑だったから、仕返ししたいだけなんだよ。
「よっぽど気に入らないんだな」
「みたいだね」
「別にエメリが誰と付き合おうが、女子には関係無いのにな」
「でも許せないんだろ。草柳相手だと」
結局、最寄り駅のホームでも離れない女子。同じ方向の連中が纏わり付いて、俺と一緒にさせないし。
壁作ってガードしてる感じ。余計なことをと思うけど、自己満足なんだろうな。
下車するとなって、やっとエメリと合流できた。
「なんか言いたそうだね」
「まあ」
「私もね、なんで遠ざけようとするのかなって」
「日本人だから、としか」
次からは文句言ってやるんだとか言ってる。
エメリが見てて思ったのは、日本人は男子と女子で別れて行動してると。何を意識しているのか知らないけど、男女関係なく会話ができないのかと。
「バラバラなんだね」
「男女?」
「そう。イベントでも無いと一緒に行動しない」
男女差を意識する頃から、そうなってるんだよね。中学でもすでに男子は男子のグループ。女子は女子のグループになる。男女混合のグループなんて、ほとんど見たこと無いし。
高校生になれば、そう言った男女の垣根って、取れるもんだと思ったけど。
実態はこんなだし。
家の前で一旦別れるけど、あとでそっちに行っていいかと。
俺の部屋、ゴミ箱然としてるんだよなあ。




