さすがに訴えてもいいレベル
放課後、私はまっすぐ事務所に向かった。
普段は直で向かうことはそんなにないのだが、この数週間は違った。
JAKSがあるからだ。
JAKSとは、『Junior And Kids Selection』の略称で、『ジャクス』と読む。
JAKSは日本で1、2を争うアンダー18のファッションショーだ。そのため、JAKSは私の様なモデルを目指す少女たちには登竜門となっており、そこで雑誌やテレビの記者の目に止まると…、後は言わなくてもわかるだろう。
そこに出場するために歩き方を練習するのだ。
しかし、やはり心配なのは例の6人のことだ。もしかしたらJAKSのことを嗅ぎ付けて邪魔したり、色々と言ってきたりと可能性がある。私はその気になれば殴り合いも辞さないつもりだ。むしろそっちで怪我する方が余程心配なのだが…。
「美紗!練習に集中しなさい!」
ボーッとしてたらレッスンの先生に怒られた。
数週間後、JAKS当日、オープニング1時間前。
今回のテーマは、『春先に彼氏とデートするなら・・・?』だ。そのため、ハーフパンツや半袖のシャツなどいかにも春らしいコーデの参加者が多数いた。
そして、本日の私のコーデは、カンバッチをつけたブルーブラックのキャップに、チェックのベストに半袖のホワイトのアンダー。さらに、明るめのデニムのハーフパンツ。シューズはライトブラウンのハイカットスニーカーをチョイスした。
かなりボーイッシュだが気にしない。
今日は飛鳥さんや春樹君をはじめとする事務所のみんなが見に来てくれる。なぜかはわからないが島崎の男子のグループも来るらしい(この前チラッと漏らしたからかなぁ…)。
ファッションショーの前座となる著名なアーティストのライブが始まった。後10分で人生を賭けたギャンブルが始まる。
心臓が張り裂けそうだ。若干の目眩もある。早くこの緊張から逃げ出したい。しかし、そう感じているのは私だけではないはず。ここにいる出場者全員がこの避けられぬ重圧に押し潰されそうになっているはずだ。
ついに一番最初の子がステージに向かって行った。
次から次にステージに向かって行く。
私の番だ。ステージはピリッとした空気に包まれていた。
ステージの先にあるフラットスペースを歩いている子は観客の大歓声を受けながら懸命なパフォーマンスをしていた。表情は笑顔を装っているが私から見るとかなりひきつっている様に思えた。
私はそのフラットスペースに向かって歩みを進めた。
真ん中まで来たその時、左目の視力を何かが奪った。しかし、それは一瞬のことで視力はすぐに回復した。
私は微動だにせずにパフォーマンスを続けた。
終了後、私の携帯に島崎から動画サイトのURLが乗せてあるメールが来ていた。
その動画を見ると、私の体に電気が流れた様なショックが走った。




