自習の時間
写真を眺めているとメールが来た。島崎からだ。
『美紗ちゃん、大丈夫?』
私はすぐに返信した。
「大丈夫。ありがとう」
そろそろショートホームルームが始まる。教室に戻らなければ。
ショートホームルームは特に何もなかった。
1時限目は歴史だった。けど、先生がいなかったので自習となった。
先生は余計なことに自習課題のプリントを用意していた。私は解く気なんかなく教科書をぼんやりと眺めていた。すると、ある1ページにこんなことが書かれてあった。
ーー16世紀から18世紀にかけて、ヨーロッパに現れた政治形態。国王は中央集権的統治のための官僚と直属の常備軍を支柱とし、弱体化した貴族階級と資本の本源的蓄積期にあるため未発達な市民階級とを押さえ、無制約の権力を振るった。(参考、百科事典マイペディア)ーー
これは、『絶対王政』だ。
どこか似ているな、と思った。
あの女子たちが国王だとすると、他のクラスメートが国王に忠実な家臣や個性を押さえつけられた奴隷。私はそれに従わない反逆者といったところか。
似ているどころかそのままだ。
その時、教科書にスッと影が射した。顔を上げたら木下香がニヤニヤしながら立っていた。他の5人も私を取り囲む様に立っていた。
「何?」
いきなり蹴っ飛ばされた。私は壁に後頭部を打ち付けた。さらに、木下香は私の机をひっくり返し、中身が散乱した。他の5人は私を見て嘲笑っていた。
そして、木下は私の胸ぐらをつかんでドスのきいた声で言いはなった。
「あんたウザいのよね。さっさと消えてくれない?」
こんなことを言われる筋合いがわからない私はすぐに噛みつき返した。
「いきなりなんなの?人の机倒してから…。まず謝るのが礼儀ってものじゃないの?」
「あんたに払う礼儀なんてないの」
「払う払わない以前に何でこんなことしたの?」
私は殴り合いになるのを覚悟した。
その時、男性の先生が廊下の窓から顔を覗かせた。
「おい、何をやっているんだ?」
木下はチッと舌打ちをして手を離した。
他の5人はしゃがみこみ、散乱した教科書を広い始めた。
「机が倒れたんで一緒に片付けをしているだけです」
有住が先生に向かって軽い口調で言った。その右足はわたしの足を踏んでいた。
先生は『そうか』とだけ言って、その場を去っていった。
雰囲気がシラケたのか女子たちはそのまま去っていった。消しゴム半分に折られた。




