虫と無視、そしてアイスクリーム
6時限目はそのようなことはなかった。
下校のため生徒玄関で靴を履き替えようとしたところ、ローファーからどこで見つけてきたのかゴキブリの死骸が大量に入っていた。
私は迷惑にならないようにトイレに死骸を流した。この時、初めていじめられているということがなんとなくだがわかった。
実際、事務所の方でもやっかみや妬みが皆無というわけではない。こんなことはざらである。
しかし、わからないのはきっかけである。
あれこれ考えてる時に太ももにモゾモゾとくすぐったい感覚を覚えた。正体は先程のゴキブリの生き残りだった。
「§£¢@*$¥£¢£§§@¢!!!!」
生きていたのが混じっていたなんて…。
私はそのゴキブリを逃がし、トイレから出ようとドアノブに手をかけた瞬間、頭に冷たいものが落ちてきた。水だった。
水は断続的に降ってくる。外からは数人の女子の笑い声。恐らくクラスを牛耳っているやつらだろう。
ドアを思いっきり開けてぶち当ててやろうかと思ったが、どうやらゴキブリの運は私に味方している様だった。
「キャッ、ゴキブリ!」
「うわっ!」
「来ないで来ないで!」
私に注がれてていた水が無くなった。それにドタバタ騒がしい。その隙に私は服の絞れる部分は絞った。
さらに、たまたま近くを通りかかった先生が乱入してきた。
「おいお前ら、何を騒いでいる?」
「先生ゴキブリが!」
「よし、どいてろ」
バンバン!と何かで叩きつける音がした。
「…よし、これで大丈夫だ。掃除はそこら辺にしてさっさと帰れよ」
先生は女子たちが掃除をしているように見えたらしい。さっさとトイレから出ていったみたいだ。
このままではまた水をかぶってしまう。何かないかと探しているとゴキブリの死骸が転がっていた。背に腹は変えられないという思いからヘアピンをゴキブリの足につけ、一番近くの女子の足に近づけた。
「ん?キャァッ!」
今のうちにと私はトイレから出て一目散に逃げた。
翌日、私は重い足取りで教室のドアを開けた
上から黒板消しが落っこちてきた。私の頭と鞄を汚して床に落ちた。
クラスは何の反応も示さない。
私は鞄を机に置き、数人の男子と喋っていた島崎に声をかけた。
「島崎君、おはよう」
島崎はこっちを見向きせずに話し続けた。
何もそこまでしなくても…。
恐らく『削除』を恐れているんだ。
席について本でも読もうとすると、お尻に冷たい感覚があった。見ると半分溶けたバニラアイスクリームがスカートと椅子にベットリとついていた。クラスメートは誰一人私の方を見なかった。
私はトイレに駆け込み、汚れを拭き取った。
私が一体何をしたというのだ。少なくとも気にさわることはしていないはずだ。
おもむろに携帯を開いた。トップ画は教室で撮影されたクラスの集合写真だ。その中心には例のグループがいた。
有住巫女。
森上菫。
根元純子。
木下香。
河島夏。
戸倉刹那。
この6人がクラスを仕切っていた。
この時だってそうだ。自分たちだけが写ればいいと思っている。端っこなんてフレームアウトしている生徒が何人いるだろうか。




