第256話 ルディアさんのクリームシチューはギルドで好評♪ その影響はホプキンス総合診療所で……
いつの間にかルディアさんの後ろに立ち、腕組みしつつ笑みを浮かべるギルドの食堂のオバちゃん。
ルディアさんはニコニコ笑顔で私達の前に、自ら考案したクリームシチューを並べる。
ちなみに主食はパンである。
「はい♪ エリカちゃんとアリアちゃんは一杯ずつね。でも、食べられるなら、もう一種類食べて欲しいかな? 感想もお願いね♪」
まぁ、一杯なら問題なく食べられるし、皿に入ってる量を考えれば二杯ぐらいなら何とか食べられるかな?
「ルディアちゃんの作るクリームシチューは一杯でも充分な量だと思うけど、エリカちゃんもアリアちゃんも激務なんだろ? なにしろ住人の半数以上がハンターやってるロザミアの魔法医なんだからさ♪」
そう言って豪快に笑うオバちゃん。
そんな笑顔を見せられたら、ちょっとぐらい無理してでも二杯目を食べなきゃってなっちゃうじゃん……
ちなみにミラーナさん、ミリアさん、モーリィさんの3人の前には……
「ハンターは身体が資本ですからね♪ 最低でも三杯、出来れば四~五杯は食べて、頑張って下さいね♪」
と、食べ飽きない様に、具材や味付けを変えたクリームシチューを三皿が並べられていた。
勿論、キッチンには別に作られたクリームシチュー二種類が用意されていたりする。
ちなみにだが、ライザさんの前には最初から五種類のクリームシチューが並べられており……
「ライザちゃんには五種類の味見を頼むわね♪ 出来れば、もう五種類お願い♪ ちょっと試してみたい味付けとか具材があってさ、作り過ぎちゃったのよ……」
と、ルディアさんは申し訳無さそうに言うのだが、ギルドの食堂のオバちゃんからは……
「味見については依頼料を払うからさ、お願い出来ないかねぇ? 私達みたいなギルドの職員だと、何かと忖度しちまうかもだろ? 忌憚の無い意見を聞きたいんだよ」
と懇願され、渋々ながら引き受けていた。
ただし、ライザさんからは試食する場所を診療所の裏庭に指定。
更にはドラゴン姿で食べるって条件を付けていた。
さすがに人間形態で食べた時の苦しさは、それだけ辛かったって事か……
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ルディアさんのクリームシチューの試食会(?)が始まって半月が過ぎ、私達の意見を参考に三種類のクリームシチューをギルドで提供する事になった。
基本的にはビーフシチュー、ポークシチュー、アイリッシュシチュー(ラム肉あるいはマトンを使うが、牛肉を使う事も)をホワイトソースを使って煮込んだモノだ。
ちなみに、今日の朝食もルディアさんが作ってくれたビーフ・クリームシチューだったりする。
「毎日、朝からボリュームのある食事でしたね…… けど──」
「美味しかったですし、量も充分♪ これなら朝の部の診療は、何の問題も無く行えますね♪ てか、お昼もルディアさんのクリームシチューを食べたいぐらいですよねぇ♡」
私の提案に、アリアさんも満面の笑みで頷いていた。
しかし……
「「えぇ~~~~っ!? 売り切れ~~~~~っ!?」」
昼食を摂ろうと訪れたギルドで、私とアリアさんは絶望の淵に叩き落とされたのだった。
大袈裟ですね、そうですね……
とにかく、ルディアさんの作るクリームシチューは、どれもこれも好評だったらしく、朝から注文が殺到。
私やアリアさんが出向く遥か前の、11時頃には無くなっていたらしい。
ちなみにだが、私達より少し後にギルドを訪れたプリシラさん(弟子のサミュエルさんを含む)もギルドの新しいメニューの噂を聞いて駆け付けたらしいのだが、そもそも起きる時間が遅い所為で食べらずに落ち込んでいた。
まぁ、私達はルディアさんと一緒に住んでるからいつでも食べられるし、そもそもクリームシチューを教えたのは私なんだから、私自身が作れば良いだけの話。
そう言ってプリシラさん(&サミュエルさん)に、私が作るクリームシチューを食べないかと誘った。
煮込むのに多少時間が掛かるので、そこをプリシラさんに確認すると……
「噂んなっとるクリームシチュー、食えるんね!? そりゃ~是非とも食いたぁのぅ♪ 時間が掛かるんは、煮込み料理なんじゃけぇせや~ないわな♪ 逆に言やぁ、そこで手ぇ《を》抜いたら味が落ちるっちゅ~こっちゃろ? じゃったら、ちぃとぐらい待つんはなぁも気んならんがよ♪」
言ってプリシラさんは、意気揚々とサミュエルさんの首根っこを掴み、引き摺る様にして診療所へと連れて行ったのだった。
おいおい……
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「旨ぁああああいっ!」
私の作ったクリームシチュー(ビーフシチュー仕立て)を一口食べ、感動するサミュエルさん。
しかし……
「旨くて感動するんはええが、おらぶなっ!」
がごんっ!
初めて食べたクリームシチューに感動したのかは知らないが、思わず叫んでしまったサミュエルさんに鉄拳制裁を食らわすプリシラさん。
殴らなくても……
いや、ハンマーを使わないだけマシだけど……
って、ここは診療所だから、そもそもハンマーなんか無いか。
「プリシラさん、殴らないであげて下さいよ。誰でも美味しい料理を食べたら叫ぶ…… とは言いませんけど、多少は感動を口にするでしょう? 作った私が言うのもアレですけど……」
私が宥める(?)と、プリシラさんは……
「それもそうじゃのぅ…… エリカちゃん、スマンのぅ……」
と、私に対して頭を下げる。
いや、殴り倒したサミュエルさんには謝らんのかい!
とにかく私の作ったクリームシチュー(ビーフシチュー仕立て)を食べたプリシラさんとサミュエルさんは、満足して診療所を後にしたのだった。
タダ飯食いに来たって感じだったな……
その後、私とアリアさんは夜の部の診療を済ませ、夕食の準備に取り掛かったのだった。
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「あ~~~~、腹減った~~~…… エリカちゃ~ん、今日の晩メシ何だ~い?」
「私もお腹ペコペコ~…… 今日はキツかったから、ちょっとボリュームのあるモノ食べたいって感じね~……」
「私も~…… ハイ・オーガが30匹以上の群れを討伐なんて、ミラーナさんとライザちゃんが居ても重労働だったモンねぇ……」
「ボクも、お腹空き過ぎて倒れそうだよぉ…… 夕食って、すぐ出来る~? 時間が掛かるなら、パンでも何でも良いから食べさせて~……」
ミラーナさん、ミリアさん、モーリィさんは普段通り……
よりは空腹っぽいけど、まだマシと言える。
しかしライザさんは、マジで今にも倒れそうなぐらい空腹も限界っぽい。
私達は昼にビーフ・シチュー仕立てのクリームシチューを食べたので、今夜のメニューはポークシチュー仕立て、アイリッシュシチュー仕立てのクリームシチューを用意していた。
勿論、これは(ビーフシチュー仕立ても含めて)ミラーナさん達がギルドで食べられなかったと思って作ったモノ。
しかし……
「こりゃ~美味そうじゃのぅ♪」
「ですねぇ、師匠♪ これなら何杯でも食えそうですよ♪」
と、誘ってもいないプリシラさんとサミュエルさんが、(何故か)参加していた。
2人に理由を問い質すと……
「いやぁ~、エリカちゃんがギルドで売り切れとった二種類のクリームシチューを診療所の夕食でこさえるって聞いてのぅ♪」
「それなら、是非ともご相伴に与らにゃ~イケンって師匠が──」
がごんっ!
「いらん事、ぬかすんじゃなぁわっ! ……とにかく、ウチ等にはちぃと早い夕食にとギルドに行ったんじゃが、やっぱし売り切れとったよね。ほんで、エリカちゃんにゃ~悪いとは思うたんじゃが、食えんかった二種類を食わせて貰えるかのぅ? ……と思うた来たら、ビンゴじゃったっちゅ~こっちゃね♪」
「ビンゴじゃったっちゅ~こっちゃね♪ ぢゃないわぁっ!」
すぱぁああああああんっ!!!!
「あ痛ぁっ!」
ミラーナさん仕様のハリセンを顔面に食らって『痛い』で済むとは……
さすがドワーフ、頑丈だな。
いや、ドワーフ云々は関係無く、単にプリシラさんが頑丈なんだろうな……
とにかく、その晩は6人(ミラーナさん、ミリアさん、モーリィさん、ライザさん、プリシラさん、サミュエルさん)が食うわ食うわ……
ルディアさんに手伝って貰い、追加で15人分ものクリームシチューを作ったのだった。
食い過ぎだよ、お前等……




