第257話 イルモア王国……と言うかロザミアは平穏。しかし、元・チュリジナム皇国と元・ハングリル王国は…?
ルディアさんの作るクリームシチューが好評を得て、プリシラさんの工房にギルドの食堂から注文が入った。
普通の鍋ではなく、デカくて深い鍋。
所謂『寸胴』である。
何故か設計図は私に任された。
理由は簡単。
異世界にも鍋と言う概念は在るが、寸胴と呼ばれる程に底の深い鍋は無い。
その話を偶然ギルドで昼食を摂っている時に、つい私が『大きくて深い鍋…… それって〝寸胴〟の事かなぁ…?』と呟いたのが原因だったりする。
お前が余計な事を言うからやんけ!
と、思った皆様……
その通りです。
「エリカちゃん…… ウチ、今まで何十種類も鍋はこさえてきたんじゃが、こがぁに底の深い鍋は初めてこさえるのぅ。じゃが、これをギルドの食堂でつこうたら、昼でクリームシチューが売り切れる事はのぅなるっちゅ~こっちゃな? まぁ、ギルドからは三つこさえて欲しいってこっちゃけぇ、問題は無さそうじゃがのぅ♪」
「まぁ、そうなるでしょうね。確かに一つだけだと心許ないですから、ギルドからの注文通りに三つ用意すれば問題ないと思いますよ♪」
何故かプリシラさんの工房で相談を受けている私は、満面の笑みを浮かべてプリシラさんの質問に答える。
てか、ギルドの食堂のオバちゃん、三つも寸胴を注文してたんだな……
まぁ、支払いはギルドだろうし、売り切れる事を見越しての注文なんだろうけど……
てなワケでプリシラさんに寸胴を作って貰っていたのだが、その時フッと思い付いた。
プリシラさんはドワーフだし、寸胴が作れるんなら〝蒸籠〟だって作れるんじゃね? ……と。
蒸籠は蒸し器の一種で、円形の枠に竹や木(杉や檜など)を編み込んだ容器に当たる〝身〟と呼ばれる部分と、それに被せるように取り付けられた蓋の部分からなるものが基本形。
角蒸籠の様に四角形の場合もある。
以前、私が小籠包を作った時は蒸籠が無かったので、出来るだけ大きな鍋に簀の子を入れ(勿論、鍋に入る様にカットした)、即席の蒸籠にして作ったのだ。
まぁ、たまにしか作らないし、どうしてもって時は魔法で蒸したりしてるけど……
さすがに寸胴は要らないけど、蒸籠は欲しくなったのでプリシラさんに注文した。
ちなみに5段重ねを3つである。
仕方無いじゃん。
ウチには大食漢が2人(ミラーナさん&ライザさん)も居るんだから……
それに、滅多に来ないけど王妃様達が来る事もある。
さすがに国王陛下は来ない、と言うか職務の関係で来れないけど。
その時に私が料理を作ると、王宮では食べられない……
と言うか王宮では珍しい料理が多いらしく、王族とは思えない程にガツガツ……
とは言えないが、王族らしく上品に。
しかしミラーナさんやライザさん程ではないが、限界ギリギリまで胃に詰め込んでいるのは明らか。
全員、入浴するまで1時間以上も食休みしているんだから。
それはともかく、蒸籠の設計図をプリシラさんに渡すと……
「ほぉお~~、金属やなぁて、木や竹でこさえる調理器具なんね? こりゃ~おもろいけぇ、ウチがこさえるわぁ♪ サミュエル! 残りの寸胴は、ウチがこさえたんを手本におどれがこさえぇ! 先に言うとくが、手ぇ抜いたモンこさえたらシゴウするけぇの!」
プリシラさんがやる気になってくれたのは嬉しいけど、サミュエルさんに対してのセリフ……
それって脅迫なんじゃ…?
しかし、サミュエルさんは慣れてるのか『了解です、師匠!』とだけ応え、奥の工房へと駆けていった。
いや、それで良いんか、あんた…?
しかし、そんなサミュエルさんを満足気に見たプリシラさんは、蒸籠の設計図を眺めながら、あれこれと私に細かい部分を質問責めにしたのだった。
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「うん♪ ユーリ君、何の問題もありませんね♪ スージィちゃんも、健康過ぎるぐらい健康ですよ♪」
私がユーリ君とスージィちゃんの定期健康診断を終えて報告すると、パティさんも夫のジャックさんも満面の笑みを浮かべていた。
そんな中、ミラーナさん、ミリアさん、モーリィさん、ライザさん、ルディアさんが聞いてくる。
「なぁ…… アタシ達、一度もユーリ君やスージィちゃんが受けてる〝健康診断〟ってヤツをして貰ってないんだけど…?」
「そうよねぇ…… 私達ハンターって身体が資本だから、ちょっと気になるんだけど……」
「私もさぁ、エリカちゃんがユーリ君やスージィちゃんの〝健康診断〟ってのを定期的にしてるのを見てて、ちょっと気になったんだよねぇ……」
「ボクもだよ…… ドラゴンだから普通の人間よりは頑丈だとは思うけどさ、さすがに350歳近くになると気になるんだよねぇ……」
「私自身はエリカちゃんが高血圧とか塩分過多とかは治してくれたけど、あれから自身の健康状態が気になっちゃって…… 毎月とは言わないけど、年に一回か二回ぐらいは診て貰えないかなって思う様になっちゃったのよね……」
ちなみにアリアさんは、自分で自分の健康状態を診断出来る(私が教えた)ので、何も言及してこない。
ま、自分で自分の健康状態を把握してるんだから、当然と言えば当然か。
私は仕方無く、5人の健康診断を行った。
その結果……
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ミリアさん、ライザさんは特に問題無し。
ルディアさんは最高血圧が120を超えており、年齢的には大丈夫だけど、念の為に血圧を少し下げる魔法を掛けておいた。
しかし、問題が発覚したのはミラーナさんとモーリィさん。
まずはミラーナさんだが、健康診断の結果〝栄養バランスの極端な偏り〟が判明。
こいつ、以前私が注意した『肉の食べ過ぎには注意』『野菜もバランス良く食べる事』って注意、守ってねぇな?
そしてモーリィさんだが……
ミラーナさん程ではないが、肉の食べ過ぎが判明。
私が追及すると……
「いやぁ~♪ ミラーナさんと一緒に食事してるとさぁ、ついつい肉料理を多めに注文しちゃうんだよねぇ♪ だってさぁ、考えてもみてよ? こっちがエリカちゃんに言われたバランスの良い食事っての? それを食べてる目の間で美味しそうに肉料理をバクバク食べてるミラーナさんを見てたらさぁ、私も食べたくなるのも無理はないって思わない?」
うん。
モーリィさんの言いたい事も解らないでもない。
しかし……
「そこは自制せんかいっ!!!!」
すぱぁああああああんっ!!!!
「んにょわぁああああああっ!!!!」
私のハリハリセン・チョップ&絶妙たタイミングでのアリアさんのオープン・ザ・ウィンドウで、モーリィさんは中央広場の噴水に着水。
さらに跳ね飛び、ギルドの玄関前で倒れたまま朝まで誰にも気付かれなかったんだとか……
ちなみにミラーナさんだが、私がモーリィさんを吹っ飛ばした後に他のメンバーから……
「「「「エリカちゃん(アリアさんだけは『エリカさん』だった)の忠告を聞かないのが悪いっ!!!!」」」」
と、4人揃ってのハリセン・チョップを食らい、モーリィさんを遥かに超える距離(パッと見た感じ、ロザミアの街の外まで吹っ飛んでた気が……)まで飛んで消えていったのだった。
その様に私達が普段通りの日常を過ごしていた頃、元・チュリジナム皇国は、元・ハングリル王国も交え、大混乱に陥っていたのだった。




