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小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


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255/258

第254話 スージィへのエリカの年齢の説明に四苦八苦するミリアと、初めてのクリームシチュー

 ロザミアに戻った私は、アリアさんと(とも)に毎日ハンター達(時々一般の人の怪我や病気)の治療に明け暮れていた。

 そんな中、ユーリ君(モーリィさんの(おい)っ子)の定期検診の日が来たのだが……


「エリカおねー()ちゃ~ん、こんにちは~♡」


 モーリィさんの妹であるパティ(パトリシア)さんの第一(だいいっ)()(長女)であるスー(スージィ)ちゃんが、ダッシュで私に抱き付いて(タックルして)くる。


 毎度の事なので、私は瞬時に身体強化魔法を自身に(ほどこ)し、スーちゃんの全力タックルを受け止める。


「いらっしゃい、スーちゃん♡ 今日はユーリ君の定期検診だから、付いて来たんですね?」


 私がスージィちゃんを抱き()め、頭を()でながら聞くと、全力の笑顔で私を見上げて言う。


「うん♡ ユーリのけんこーしんだん(健康診断)もだけど、エリカおねー()ちゃんに()いたかったから♡」


 やっぱり天使や♡

 私が不老不死じゃなかったら養女に貰い受けてたぞ♡

 いや、不老不死なんか関係ないだろ!


「パ…… パティさん! 良かったらスーちゃんを私の養女に──」

「落ち着いて下さいっ!!!!」


 すぱぁあああああんっ!!!!

 ずどべちょぉおおおおおっ!!!!


 アリアさんの(はな)ったハリセン・チョップの一撃(いちげき)で私は診察室の床にめり込み、1時間ばかりパティさん達を待たせる事になったのだった。

 勿論その(かん)(ほか)の患者さん達はアリアさんが()る事になり、私は全ての診療が終わった(あと)に土下座して謝る事になったのである。





 ────────────────





「うん♪ ユーリ君は順調だし、スーちゃんも問題ありませんね♪ 2人共、健康過ぎるぐらい健康ですよ♪」


 診察を終えた私が言うと、ジャックさんもパティさんもニッコリと笑い……


「ロザミア…… と言うか、イルモア王国で一番の魔法医と言われているホプキンス先生からそう言って貰えると安心だね♪」


「ホント、ホント♪ それに、近所(すぐ裏手)に住んでるから、何かあってもすぐエリカちゃんに対処して貰えるしね♪」


 最近、ジャックさんは私の事を『ホプキンス先生』と言う様になった。

 ロザミアは勿論、(ほか)の街でも『ホプキンス先生』なんて呼ばれた事は無いんだけどな(苦笑)


「そんな『ホプキンス先生』だなんて、(あらた)まった言い方しなくても()いですよ。そもそも誰からも『先生』とすら呼ばれた事なんて無いんですから」


 私が()れつつ(てか、()れるだろ)言うと、ジャックさんは少し考え……


「それは変じゃないですか? ホプキンス先生はロザミアだけじゃなく、ヴィラン(王都)でも多くの患者を治療してるんでしょう? 普通に考えて、『先生』と呼ぶのが当然だと思いますよ?」


 と、真剣(マジ)()で言ってきた。

 私は軽く()め息を()き、自身の考えを話す。


「そう言ってくれるのは(うれ)しいんですけど、私自身の考えでは〝地域に根付(ねづ)いた親しみ(やす)い町(街)医者〟でありたいんです。なので、他人行儀な『ホプキンス先生』とか『エリカ先生』なんて呼ばれるより、年配の人からは『エリカちゃん』、スーちゃんみたいな子供からは『エリカお姉ちゃん』って呼ばれたいんですよ。その方が親近感を持てるでしょう?」


 私の意見に、ジャックさんは再度考えて言う。


「なるほど…… 言われてみれば、確かにそうですね…… では、これからは僕も『エリカちゃん』と呼ばせて貰います」


 ……半分(わか)ってるけど、半分(わか)ってねぇな……


「呼び方はそれで()いです。で、ついでと言っちゃ~何ですが、敬語も()めて貰って()いですか? 敬語で話されるのって、なんだかムズ(がゆ)くて……」


 そう言うと、ジャックさんは驚いて言う。


「えっ? でも、エリカちゃんはモーリィ義姉(ねえ)さんより2つ歳上(としうえ)で、もうすぐ30歳だって聞きましたけど……?」


 ピキィイイイイイイン……


 私の中で何かがキレた。


「それ…… 誰から聞きました……?」


 私の()の色が変わったのが(わか)ったのか、ジャックさんは数歩後退(あとずさ)りながら言う。


「えぇと…… 勿論、モーリィ義姉(ねえ)さんからだけど…… あ、ミラーナさんからも聞かされたっけ…… そこに居るアリアちゃんやルディアさん、それに鍛冶師のプリシラさんと弟子のサミュエルって人は、何故か言葉を(にご)してたなぁ…… マークさんも『女性に(とし)を聞くのは失礼だぞ』って言って、教えてくれなかったっけ。とにかく、エリカちゃんの(とし)を教えてくれたのは、モーリィ義姉(ねえ)さんとミラーナさんだけだよ…… あ、ミリアさんとライザちゃんにも聞いたけど、困った様な表情をするばかりで何も教えてくれなかったっけ……」


「だよねぇ…… 確かに教えてくれたのはお姉ちゃんとミラーナさんだけで、(ほか)の人は何故か目を()らして答えてくれない…… て言うか、(みんな)『これから仕事だから』『仕事が(いそが)しいから』とか何とか言って、離れちゃうんだよねぇ……」


 そんな中、何も知らないミラーナさん達4人が帰宅する。


「あ~~~~、腹減った~~~♪ エリカちゃ~ん、今日の晩メシのメニューは何かな~♪」


「今日はオーガの()れを(つぶ)しましたからね♪ 私、お(なか)ペコペコですよぉ♪」


「ミリア、張り切り過ぎなんだよね♪ まぁ、最近はゴブリンとかホブゴブリンとかばっかり相手にしてたから、鬱憤(うっぷん)()まってたんだろうけどさ♪」


「ボク、たまには剣を振るいたいなぁ…… オーガ程度じゃ、蹴るだけで2~3匹(まと)めてブッ殺せるから不満なんだよねぇ……」


 私は無言で窓を指差し、私の意図(いと)()んだアリアさんは窓際(まどぎわ)に移動。

 そして……


 すぱぱぁあああああんっ!!!!


「「んぎょえぇえええええっ!!!!」」


 私のフルスイング・ハリセン・チョップ2連発で、ミラーナさんとモーリィさんはアリアさんの()けたリビングの窓から吹っ飛び、中央広場の噴水を超えてギルド手前に突き刺さったのだった。

 困惑するミリアさんとライザさんに、ジャックさんとパティさんが事の成り行きを説明する。


「あぁ~~~…… それは確かにミラーナさんとモーリィが悪いわねぇ……」


「だよねぇ…… ミリアさんもボクも…… て言うか、エリカちゃんの実年齢(じつねんれい)に関しては何も言わないってのが暗黙(あんもく)の了解だからねぇ……」


 そんな話をしていると、何も知らないスージィちゃんが聞いてくる。


「ミ()アおねー()ちゃん、エリカおねー()ちゃんってなんさい(何歳)なの? スーより、ちょっとうえ()じゃないの?」


 ミリアさんは、少し困った表情になり……


「えぇとね…… 難しいと思うけど、エリカちゃんは不老不死なのよね…… だから見た目は変わらなくて、永遠の10歳って言うか何て言うか…… とにかく(とし)は取るんだけど取らないって言うか……」


 と、6歳の幼児には理解するのが難しいであろう説明を始める。

 が、結局グダクダになり、助けを求める様に私を見る。

 しかし私は……


「さ~て、今日の夕飯はクリームシチューですよ♪ 作り方を知りたい人は、キッチンへ集合です♪」


 と、スージィちゃんへの説明に苦戦しているミリアさんを尻目にキッチンへ向かうのだった。





 ────────────────





「エリカちゃ~ん、(ひど)いじゃんかぁ…… 何も言わずにハリセンを食らわせるなんてぇ……」


「そ~だよぉ…… 私もミラーナさんも、ギルドの手前まで吹っ飛んだんだからぁ……」


 ブツブツ言いながらも、しっかりとした足取り((がん)(じょう)だな、おい……)でダイニングに入ってくるミラーナさんとモーリィさん。

 そんな2人だったが、テーブルに並べられたクリームシチューを見ると……


「「何これ、何これ!? 初めて見る食べ物なんだけど!? もしかして、またエリカちゃんが新たに考案した料理とか!?」」


 と、ハモりつつテーブルに突っ込んでくる。


「ミラーナさん、モーリィさん。ステイッ!」


「「わんっ!」」


 私の一言(ひとこと)で床に座り込む2人。

 ややあって……


「アタシ「私は犬──」」

「はい、ストップ! スージィちゃんもユーリ君も居るんだから、おとなしく席に着いて下さいね」


 激昂(げきこう)しそうになる2人だったが、スージィちゃんとユーリ君の名前を出すと、さすがに静かになる。

 更に……


「ミラー()ねー()ちゃんも、モーおば(伯母)ちゃんも、ごはん()とき()しず()かにしなきゃメー(ダメ)でしょ!? しず()かに|にすわ()って『いただきます』するの!」


 とスージィちゃんに言われ、静かに(ただし会話は楽しみつつ)初めてのクリームシチューを堪能(たんのう)したのだった。

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