第254話 スージィへのエリカの年齢の説明に四苦八苦するミリアと、初めてのクリームシチュー
ロザミアに戻った私は、アリアさんと共に毎日ハンター達(時々一般の人の怪我や病気)の治療に明け暮れていた。
そんな中、ユーリ君(モーリィさんの甥っ子)の定期検診の日が来たのだが……
「エリカおねーちゃ~ん、こんにちは~♡」
モーリィさんの妹であるパティ(パトリシア)さんの第一子(長女)であるスー(スージィ)ちゃんが、ダッシュで私に抱き付いてくる。
毎度の事なので、私は瞬時に身体強化魔法を自身に施し、スーちゃんの全力タックルを受け止める。
「いらっしゃい、スーちゃん♡ 今日はユーリ君の定期検診だから、付いて来たんですね?」
私がスージィちゃんを抱き締め、頭を撫でながら聞くと、全力の笑顔で私を見上げて言う。
「うん♡ ユーリのけんこーしんだんもだけど、エリカおねーちゃんにあいたかったから♡」
やっぱり天使や♡
私が不老不死じゃなかったら養女に貰い受けてたぞ♡
いや、不老不死なんか関係ないだろ!
「パ…… パティさん! 良かったらスーちゃんを私の養女に──」
「落ち着いて下さいっ!!!!」
すぱぁあああああんっ!!!!
ずどべちょぉおおおおおっ!!!!
アリアさんの放ったハリセン・チョップの一撃で私は診察室の床にめり込み、1時間ばかりパティさん達を待たせる事になったのだった。
勿論その間、他の患者さん達はアリアさんが診る事になり、私は全ての診療が終わった後に土下座して謝る事になったのである。
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「うん♪ ユーリ君は順調だし、スーちゃんも問題ありませんね♪ 2人共、健康過ぎるぐらい健康ですよ♪」
診察を終えた私が言うと、ジャックさんもパティさんもニッコリと笑い……
「ロザミア…… と言うか、イルモア王国で一番の魔法医と言われているホプキンス先生からそう言って貰えると安心だね♪」
「ホント、ホント♪ それに、近所(すぐ裏手)に住んでるから、何かあってもすぐエリカちゃんに対処して貰えるしね♪」
最近、ジャックさんは私の事を『ホプキンス先生』と言う様になった。
ロザミアは勿論、他の街でも『ホプキンス先生』なんて呼ばれた事は無いんだけどな(苦笑)
「そんな『ホプキンス先生』だなんて、改まった言い方しなくても良いですよ。そもそも誰からも『先生』とすら呼ばれた事なんて無いんですから」
私が照れつつ(てか、照れるだろ)言うと、ジャックさんは少し考え……
「それは変じゃないですか? ホプキンス先生はロザミアだけじゃなく、ヴィランでも多くの患者を治療してるんでしょう? 普通に考えて、『先生』と呼ぶのが当然だと思いますよ?」
と、真剣な眼で言ってきた。
私は軽く溜め息を吐き、自身の考えを話す。
「そう言ってくれるのは嬉しいんですけど、私自身の考えでは〝地域に根付いた親しみ易い町(街)医者〟でありたいんです。なので、他人行儀な『ホプキンス先生』とか『エリカ先生』なんて呼ばれるより、年配の人からは『エリカちゃん』、スーちゃんみたいな子供からは『エリカお姉ちゃん』って呼ばれたいんですよ。その方が親近感を持てるでしょう?」
私の意見に、ジャックさんは再度考えて言う。
「なるほど…… 言われてみれば、確かにそうですね…… では、これからは僕も『エリカちゃん』と呼ばせて貰います」
……半分解ってるけど、半分解ってねぇな……
「呼び方はそれで良いです。で、ついでと言っちゃ~何ですが、敬語も止めて貰って良いですか? 敬語で話されるのって、なんだかムズ痒くて……」
そう言うと、ジャックさんは驚いて言う。
「えっ? でも、エリカちゃんはモーリィ義姉さんより2つ歳上で、もうすぐ30歳だって聞きましたけど……?」
ピキィイイイイイイン……
私の中で何かがキレた。
「それ…… 誰から聞きました……?」
私の眼の色が変わったのが解ったのか、ジャックさんは数歩後退りながら言う。
「えぇと…… 勿論、モーリィ義姉さんからだけど…… あ、ミラーナさんからも聞かされたっけ…… そこに居るアリアちゃんやルディアさん、それに鍛冶師のプリシラさんと弟子のサミュエルって人は、何故か言葉を濁してたなぁ…… マークさんも『女性に歳を聞くのは失礼だぞ』って言って、教えてくれなかったっけ。とにかく、エリカちゃんの歳を教えてくれたのは、モーリィ義姉さんとミラーナさんだけだよ…… あ、ミリアさんとライザちゃんにも聞いたけど、困った様な表情をするばかりで何も教えてくれなかったっけ……」
「だよねぇ…… 確かに教えてくれたのはお姉ちゃんとミラーナさんだけで、他の人は何故か目を逸らして答えてくれない…… て言うか、皆『これから仕事だから』『仕事が忙しいから』とか何とか言って、離れちゃうんだよねぇ……」
そんな中、何も知らないミラーナさん達4人が帰宅する。
「あ~~~~、腹減った~~~♪ エリカちゃ~ん、今日の晩メシのメニューは何かな~♪」
「今日はオーガの群れを潰しましたからね♪ 私、お腹ペコペコですよぉ♪」
「ミリア、張り切り過ぎなんだよね♪ まぁ、最近はゴブリンとかホブゴブリンとかばっかり相手にしてたから、鬱憤が溜まってたんだろうけどさ♪」
「ボク、たまには剣を振るいたいなぁ…… オーガ程度じゃ、蹴るだけで2~3匹纏めてブッ殺せるから不満なんだよねぇ……」
私は無言で窓を指差し、私の意図を汲んだアリアさんは窓際に移動。
そして……
すぱぱぁあああああんっ!!!!
「「んぎょえぇえええええっ!!!!」」
私のフルスイング・ハリセン・チョップ2連発で、ミラーナさんとモーリィさんはアリアさんの開けたリビングの窓から吹っ飛び、中央広場の噴水を超えてギルド手前に突き刺さったのだった。
困惑するミリアさんとライザさんに、ジャックさんとパティさんが事の成り行きを説明する。
「あぁ~~~…… それは確かにミラーナさんとモーリィが悪いわねぇ……」
「だよねぇ…… ミリアさんもボクも…… て言うか、エリカちゃんの実年齢に関しては何も言わないってのが暗黙の了解だからねぇ……」
そんな話をしていると、何も知らないスージィちゃんが聞いてくる。
「ミーアおねーちゃん、エリカおねーちゃんってなんさいなの? スーより、ちょっとうえじゃないの?」
ミリアさんは、少し困った表情になり……
「えぇとね…… 難しいと思うけど、エリカちゃんは不老不死なのよね…… だから見た目は変わらなくて、永遠の10歳って言うか何て言うか…… とにかく歳は取るんだけど取らないって言うか……」
と、6歳の幼児には理解するのが難しいであろう説明を始める。
が、結局グダクダになり、助けを求める様に私を見る。
しかし私は……
「さ~て、今日の夕飯はクリームシチューですよ♪ 作り方を知りたい人は、キッチンへ集合です♪」
と、スージィちゃんへの説明に苦戦しているミリアさんを尻目にキッチンへ向かうのだった。
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「エリカちゃ~ん、酷いじゃんかぁ…… 何も言わずにハリセンを食らわせるなんてぇ……」
「そ~だよぉ…… 私もミラーナさんも、ギルドの手前まで吹っ飛んだんだからぁ……」
ブツブツ言いながらも、しっかりとした足取り(頑丈だな、おい……)でダイニングに入ってくるミラーナさんとモーリィさん。
そんな2人だったが、テーブルに並べられたクリームシチューを見ると……
「「何これ、何これ!? 初めて見る食べ物なんだけど!? もしかして、またエリカちゃんが新たに考案した料理とか!?」」
と、ハモりつつテーブルに突っ込んでくる。
「ミラーナさん、モーリィさん。ステイッ!」
「「わんっ!」」
私の一言で床に座り込む2人。
ややあって……
「アタシ「私は犬──」」
「はい、ストップ! スージィちゃんもユーリ君も居るんだから、おとなしく席に着いて下さいね」
激昂しそうになる2人だったが、スージィちゃんとユーリ君の名前を出すと、さすがに静かになる。
更に……
「ミラーラおねーちゃんも、モーおばちゃんも、ごはんのときはしずかにしなきゃメーでしょ!? しずかに|にすわって『いただきます』するの!」
とスージィちゃんに言われ、静かに(ただし会話は楽しみつつ)初めてのクリームシチューを堪能したのだった。




