第251話 ミラーナさん達の成長が止まった胸と、パティさん一家の引っ越しの顛末
「次の方、パトリシア・ローレンさん… って、パティさん!? 何かありましたか!?」
次の患者を呼びに行ったアリアさんが驚いた声を挙げ、それに釣られて私も診察室を飛び出してしまう。
「アリアさん! 何かありましたか!? ……って、パティさんと旦那さんのジャックさん、それにスーちゃんにユーリ君? なんでまた皆さん揃って……?」
と、そこまで言った私は、ある事を思い出した。
「あぁ♪ 今日はユーリ君の定期検診でしたね。じゃ、中にどうぞ♪」
私はパティさん達4人を診察室に案内し、ユーリ君の健康状態を診たのだった。
結果は良好♪
ユーリ君の身長も体重は勿論、背骨や四肢の関節も大丈夫。
「うん♡ ユーリ君、健康に育ってますね♪ ついで… と言ったら何ですが、スーちゃんの健康状態も診ておきましょうか?」
私の提案に、ジャックさんもパティさんも揃って頷く。
勿論、スーちゃんの健康状態も良好。
更についででジャックさんとパティさんの健康状態も確認。
結果的に、全員の健康状態が良好である事が判明。
笑顔で診療所を後にしたのだった。
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「すいません、エリカさん…… 私の早とちりで……」
昼食時、患者の名前にパティさん(パトリシア・ローレン)の名前が書かれていた事に驚き、何かあったのかと大声を上げた事を詫びるアリアさん。
「まぁ、仕方ありませんよ。診療所に来て名前が書かれていたら、何かの病気か怪我をしたのかもって思うのも無理はありませんからね。実際には何もありませんでしたし、目的も予定されていたユーリ君の定期検診でしたから♪ それに、スーちゃんの健康状態も確認出来ましたし、両親のジャックさんやパティさんの健康状態も確認出来たのは良かったです。何も気にする事はありませんよ♪」
「エリカさぁ~ん(泣)」
泣きながら私に抱き付くアリアさん。
いや、泣くなよ……
そうして私の胸に顔を埋め一頻り泣いたアリアさん。
やがて私から離れると……
「私…… 何度かエリカさんに抱き付いて泣いた覚えがあるんですが……」
と、何やらモジモジしながら話し始める。
が……
「こんな事を言っては失礼だと思うんですけど……」
と、何やら言い淀む。
「何ですか? ハッキリ言って貰わないと、私としてもモヤモヤしてしまうんですけど……?」
私が促すと、アリアさんは意を決した様に言う。
「初めてエリカさんの胸に顔を埋めた時と今…… エリカさんの胸が全く成長してない──」
「余計なお世話だっ! てか、不老不死なんだから成長しなくて当然でしょうがぁっ!」
すぱぁあああああんっ!!!!
「あ痛ぁっ! ……て、確かにそうですよね。事実、私も不老不死にして貰ってから成長が止まってますし…」
言いつつ自分の胸を揉むアリアさん。
おいおい……
診療所のダイニングだから良いけど、外でそんな事するなよ…?
てか、アリアさんは普通でも1000年生きる長命種なんだろ?
ロザミアに来て数年しか経ってないんだから、不老不死になってなくても成長してなくて当然だろうが。
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夕食時、アリアさんからの話を聞き、ミリアさん、モーリィさん、ライザさんも、それぞれ自分の胸を揉む。
おいおい、お前等もかよ……
「確かに成長してないわねぇ……」
「不老不死にして貰わなかったら、少しは大きくなってたのかな…?」
「まぁ、ボクはドラゴンだから元の姿に戻ったら胸の大きさなんて関係無いんだけど…… 人間形態だと少しは気になるかな…?」
そんな3人に対し、私は呆れた眼を向けて話す。
「あのですねぇ…… 長命種のエルフであるアリアさんやドラゴンであるライザさんに関しては、人間と身体の成長速度が違うんですから、不老不死になっているいないに関わらず、大きくなってなくても当然ですよ… ちなみに人間であるミリアさんとモーリィさんは、成長してなくても仕方無いですよ?」
「「へっ? そうなの? 何で?」」
ハモって聞いてくるミリアさんとモーリィさん。
「人間の場合、男性だと25歳ぐらい、女性だと20歳ぐらいで身体的な成長は止まるんです。勿論、個人差はありますけどね。なので、24歳で不老不死になった2人の胸の大きさに変化が無くても全く不思議ではありませんし、仮に不老不死にならなくても胸の大きさは変わらなかったでしょうね」
私は夕食の海老天(本日のメニューは『天ぷら定食』:当番は私で、リクエストされた)を口に運びながら淡々と話す。
すると、今まで何も反応しなかったミラーナさんが、自身の胸を揉みつつ言う。
「なるほどなぁ…… じゃ、アタシはこれ以上大きくならない内に胸の成長を止めて貰ったって事かな? なら、アタシはエリカちゃんに感謝しなきゃだな♪」
すると、ミリアさんとモーリィさんがミラーナさんに聞く。
「胸の成長を止めて貰った事でエリカちゃんに感謝…? それって、ど~ゆ~事なんですか?」
「そうそう! 胸は女の武器…… とまでは言わないけど、胸の大きい女を好む男って多いと思うんですけど…?」
あぁ、前世でも〝巨乳好き〟ってのは多かった…… と言うか、一定数居た気がするなぁ……
2人の意見(?)に、ミラーナさんは苦笑しながら答える。
「いや、そもそもアタシって自分より弱い男に興味無いじゃん? それに母上が豊満だから、もしかしたら自分もって思ってたんだよね。で、胸が大きくなったら剣を振るうのに邪魔になるんじゃないかって心配してたんだよ。だから17歳の時、これ以上胸が大きくなる前に身体の成長を止めてくれたエリカちゃんには感謝してるんだよね♪」
話してる途中から、苦笑は本当に嬉しそうな笑顔に変わる。
てか、どこまでもミラーナさんは〝剣士〟であり〝冒険者〟であり〝ハンター〟なんだなぁ……
「まぁ、さすがにエリカちゃんみたいな絶壁状態で成長を止められてたらショックが大き──」
「絶壁って言うなっつっただろうがぁっ!!!!」
ずどぱぁあああああんっ!!!!
「んぎゃぁああああああああっ!!!!」
ミラーナさんの話し具合から、この後の展開を予測したアリアさんはコッソリ窓際へと移動。
私がミラーナさんをハリセンで叩き飛ばしたと同時にリビングの窓を開け、ミラーナさんは診療所に何のダメージも与えず中央広場の噴水とギルドの間の石畳に突き刺さったのだった。
「ミラーナさん、相変わらず学習しませんねぇ……」
窓を閉めながら呟くアリアさん。
慣れてきたなぁ……
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「エリカちゃん、新しい住居が決まったから教えておくよ」
診療所の休日、ギルドの食堂で昼食を摂っていると、パティさんの旦那さんであるジャックさんが来て、住所の書かれたメモを私に手渡す。
ちなみにジャックさん、無事にロザミアのギルドに雇用され、現在は事務員として働いている。
私はアリアさんと共にメモを見る。
その住所を見たアリアさんは……
「ここって診療所の裏手…… それも、他の家を2~3件挟んだ〝ご近所さん〟じゃないですか? よく、こんな中央広場近くの物件を見付けられましたね?」
と、驚いていた。
まぁ、私も驚いたけど……
なにしろ中央広場近辺の物件は、ギルドやホプキンス総合診療所が近くに在るのは勿論だが、〝中央〟と言うだけあって商店街や食堂街も近く、何かと便利なので空き物件への競争率が他の場所の物件より高いんだと不動産屋のランディさんから聞いた事がある。
そんな優良物件、よくゲット出来たな……
「運が良かったって言って良いのかなぁ? エリカちゃんの診療所でお世話になってる? て言うか、一緒に住んでる? モーリィ義姉さんの妹がパティだって言ったら、不動産屋のランディさんだっけ? 凄い笑顔で僕達にこの物件を売ってくれたんだよ♪」
それ、他の希望者からしたら公私混同って思われるんじゃないか?
私と一緒に住んでるモーリィさんの身内だからって診療所近くの物件を売るなんて、どう考えても〝私的〟だろ……
……そう思っていた時が私にもありました。
どう言う理由か、ランディさんやパティさん達に文句を言うだろうと思っていた〝ホプキンス総合診療所の裏手の空き家(勿論、パティさん達が購入した物件だけではないが)〟の抽選に外れた人達の中に、ランディさんやパティさん達に文句を言う人は居らず……
「まぁ、診療所のメンバーの妹と親戚だから仕方無いかぁ……」
とか、
「エリカちゃんと近しい間柄の人達だからねぇ……」
ってな感じで、全員が納得していたのだった。
……それで良いのか、お前等……?




