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小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


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251/258

第250話 魔法医達に渡す参考書が完成♪ だけど……

「そんなに難しい問題でしたかねぇ…?」


 試験に出した問題の書かれた用紙を見ながら(つぶや)く私に、アリアさんは何ヶ所かの問題を指差し言う。


(たと)えばですけど、この問題なんて普通の魔法医には難解なんじゃありませんか? 〝胃腸炎の原因となるウイルスを全て(しめ)せ〟ですけど、世界的に見て小児の発症例の(ほとん)どがロタウイルスに()るものであるって答えは何人か書かれてました。でも、成人ではノロウイルスおよびカンピロバクターに()(いん)するものが最も多いって事ですけど… 間違い無くと言うか多分ですけど、どの魔法医も〝ノロウイルス〟とか〝カンピロバクター〟なんて聞いた事もないんじゃありませんか? 事実、私もエリカさんに教わるまで知りませんでしたから……」


 アリアさんの指摘を受け、講義を受けに来ている魔法医達に〝ノロウイルス〟とか〝カンピロバクター〟の事を聞いてみたのだが……

 アリアさんが言った通り、誰も〝ノロウイルス〟とか〝カンピロバクター〟は勿論、そもそもウイルスの存在自体を知らない魔法医が半数を超えていた事が判明したのだった。

 テメー()、よくそれで医師(魔法医)を名乗ってたな……

 いや、前世の医学がこの世界(異世界)より(はる)かに進んでたって事か……

 私はライザさんに頼み、その日の内に王都(ヴィラン)からカメラを購入。

 翌日、そのカメラを持って、プリシラさんの工房を(おとず)れた。

 私はカメラをプリシラさんに渡し、説明する。


「以前、作って貰った(けん)()(きょう)…… アレにカメラ(これ)を組み込んで欲しいんです。つまり、(けん)()(きょう)でしか見れないモノを写真(フォトグラフ)として残したいんですよね。(たと)えばですけど、私が魔法医の為の学術書? …(てき)なモノを書こうと思ってるんですけど、顕微鏡写真マイクロスコープ・フォト… とでも言えば()いんですかね? それを使った学術書で魔法医達が勉強すれば、(けん)()(きょう)の受注も増えるで──」

「ウチに(まか)せんさい! そりゃ~(けん)()(きょう)にカメラを組み込むんはいたしい(難しい)けぇ、すぐには出来(でけ)んと思うんじゃが… たちまち(とりあえず)カメラの研究もしたいけぇ、1ヶ月ぐらい待っとってくれんね(ないかい)?」


 プリシラさんはカメラを受け取り、まじまじと見ながら言う。

 するとサミュエルさんが…


「師匠! ワシにも手伝わせてつかぁさい(下さい)! ワシも、このカメラとやらに興味が──」

 すぱぁあああああんっ!!!!


 言った直後、プリシラさんのハリセン・チョップがサミュエルさんの顔面に炸裂(さくれつ)


おどれ(お前)なんも(なにも)せんで(しなくて)え~けぇ(いいから)いらうな(触るな)っ! エリカちゃんに納品する品物(しなもん)は、最初から最後までウチがこさえる(作る)! おどれ(お前)こさえさせるんは(作らせるのは)、ウチとエリカちゃんが満足するモンが出来(でけ)てからじゃっ! それも、ウチが監督しながらじゃけぇの(だからな)! ちぃと(ちょっと)でも手抜きしてみい(みろ)! そん(その)(とき)ゃあこん(この)ハリセンじゃなぁて(なくて)、こっちの特大ハンマーでおどれ(お前)どたま()を──」

「そんな物騒(ぶっそう)なモンで、頭を殴ったら死ぬでしょうがぁっ!」


 ずどぱぁあああああんっ!!!!

 ずどべちょぉおおおおおおっ!!!!


 私のフルスイング・ハリセン・チョップを顔面に食らったプリシラさんは、何回か縦回転(たてかいてん)しながら工房の壁にめり込んだのだった。

 勿論、私は依頼料として金貨10枚を支払い、プリシラさんのダメージ(&壁にめり込んだ際の怪我… と言っても、()(きず)程度だったけど…)を治しておきました。

 (がん)(じょう)だな、おい……





 ────────────────





「それにしてもエリカ殿。この()()()()とやらは、なかなかに厄介(やっかい)ですな…」


「確かに… 肉眼(にくがん)で見えないのは仕方無いとしても、血液検査だの鼻や口腔内(こうくうない)粘膜(ねんまく)採取(さいしゅ)して(けん)()(きょう)で検査しないと、何の()()()()に感染してるのか(わか)らないと言うのは…」


 (けん)()(きょう)()わる()わる(のぞ)き込み、感想を()べ合う魔法医達。

 そこで私はカバンから1冊の本を取り出し、(みんな)の前に置く。


「エリカ殿、これは…?」


 魔法医の1人が本を手に取り聞いてくる。


「私が書いた、ウイルスに関する学術書です。これはサンプルですけど、現在ロザミアの印刷所で同じ物を増刷(ぞうさつ)(ちゅう)です。中を見て貰えば(わか)りますが、様々なウイルスの写真(フォトグラフ)と、そのウイルスが引き起こす病気や症状と治療法について(くわ)しく(しる)した参考書ですね。これを読んで勉強すれば、何のウイルスに感染してるか、どうすれば(なお)せるかが(わか)る様になります♪ 1~2週間もすれば、(みな)さんに(くば)れると思いますよ?」


 私が説明すると、魔法医達の表情がパァッと明るくなる。


「そ… それではこの本を(いただ)ければ、エリカ殿の講義や試験を受けなくても──」

 がごんっ!


 私の鉄拳制裁(せいさい)でダウンする、アホな質問をしてきた魔法医。


「そんなワケ無いでしょうが! 本を読んでも、内容を理解して正しい知識を身に付ける為の講義は必要だし、それを確認する為の試験は必要に決まってるでしょうがっ!」


 私がブン殴った魔法医は、全身をピクピク痙攣(けいれん)させながら(しろ)()()いていたのだった。

 強く殴り過ぎたか……?





 ────────────────





「フムフム… この写真(フォトグラフ)と説明内容なら、私の講義を受けに来ている魔法医達に渡して実際の治療に()かせますね♪ 勿論、試験に合格すればの話ですが……」


 私は印刷所を(おとず)れ、()り上がった参考書を見ながら笑顔で話す。

 満足()な私を見て、印刷所の所長さんは安心したかの様に話す。


「いやぁ~、この写真(フォトグラフ)(せい)()が素晴らしかったですからなぁ♪ それにプリシラ殿が協力してくれたお(かげ)で、より(こま)かい写真(フォトグラフ)の再現が可能になりましたからなぁ♪ エリカ殿のお役に立てて、我々も肩の荷が()りましたぞ♪」


 全身から(ちから)を抜き、今にも倒れそうな所長を従業員が(ささ)える。

 私、そんなにプレッシャーを掛けてたのか…?


「いやまぁ…… 所長は『下手な物は作れないぞ… エリカ殿が不満に思う本を作ったりなんかしたら、殺されるかも知れんからな…』って、ビクビクしながら印刷機を回して──」

「殺すかぁっ!」

 すぱぁあああああんっ!!!!

 べちょぉおおおおおおっ!!!!


 私は所長をハリセンでブッ叩き、印刷所の床にめり込ませたのだった。





 ────────────────





 それから10日(とおか)が過ぎ、ようやく出来上がった参考書がホプキンス総合診療所に届けられた。

 待ってましたとばかりに集まる魔法医達。

 と同時に診療所のメンバー達も集まり、各々(おのおの)手に取って読み始める。

 しかし、連日の講義で少しずつ知識レベルが上がってきている魔法医達や、私が(きた)え上げた(?)アリアさんは興味津々(しんしん)で参考書を読んでいたのだが……


「いろいろ(くわ)しく写真(フォトグラフ)付きで説明されてるのは良い()んだけど…」


「やっぱり医学知識の無い私達には難し過ぎるわねぇ…」


「何がなんだかサッパリだよねぇ… ライザちゃん、(わか)る…?」


「ボクも何がなんだか… ルディアさんはどう?」


「私もダメね… だって、ウイルスの写真(フォトグラフ)自体、見たのが初めてなんだもの… 基本的な事すら知らないんだから、説明文だって意味不明なのよね…」


 ミラーナさん、ミリアさん、モーリィさん、ライザさん、ルディアさんが、それぞれ感想(?)を()べる。

 まぁ、予想通りだな。

 医学知識の無い人が医学書を読んでも、(ほとん)ど理解出来ないのと同じ事だ。

 しかも、ウイルスに関する参考書だからな。

 全く(わか)らなくても仕方無いと言える。

 そんな中、1人の魔法医が質問してくる。


「エリカ殿… この〝()(しょう)風菌(ふうきん)〟ですが、私は初めて知りました。これが身体(からだ)に入ると、どのような──」

()(しょう)(ふう)の説明は講義の初日にしただろうがぁっ!」


 すぱぁあああああんっ!!!!


「んぎゃぁあああああっ!」


 めきぐしゃぁあああああっ!


 私のフルスイング・ハリセンで吹っ飛んだ魔法医(確か25歳の若いヤツで、ネルソン・ブランデルって名前だったか?)はリビングの壁にめり込み、ピクピク痙攣(けいれん)していたのだった。


 あぁ…… また(・・)修理費が掛かるぅうううううっ……

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