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小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


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249/259

第248話 エリカと有名税?

「エリカちゃ~ん♪ 久し振りって言う(ほど)でもなぁが(ないけど)、久し振りじゃねぇ♪」


 と、プリシラさんが首を変な方に曲げたサミュエルさん引き()って、満面(まんめん)の笑顔で診療所にやって来た。

 をいをい…

 てかサミュエルさん、顔色が(むらさき)になってるんですけど…?


「何があったのかは()えて聞かない事にしますね… とりあえずですけど、パッと見た感じ… サミュエルさん、首の骨が折れて死ぬ寸前って感じですねぇ… 通常の治療費の銀貨1枚に加え、緊急()(せい)処置の代金… 金貨2枚を請求しますね♪」


「ちょっ! ちょっと待ちない(待ってくれ)っ! サミュエルが死にかけてるんは()()()()()()んじゃが、()(せい)処置の代金が金貨2枚!? 何でそがぁ(そんな)に高いん(だい)!?」


 いやまぁ… 緊急だし、死にかけてる人を()(せい)するって言う重大事案だし、それぐらいは払って貰わないと…

 そもそも緊急()(せい)処置を(ほどこす)すとなれば、それなりに多くの魔力を使うし(私にとっては微々(びび)たるモンだが…)…

 なによりサミュエルさんを()()()()()にしたプリシラさんには、それなりに責任を()って貰わないとな…


 私が説明すると、プリシラさんは渋々(しぶしぶ)ながら治療費を払い、サミュエルさんはギリギリで死地(しち)(だっ)したのだった。





 ────────────────





「サミュエルさん、本当に死ぬ寸前でしたね… プリシラさん、いったい何を──」

「それ以上の詮索(せんさく)は必要ありませんよ。まぁ、私が思うに、()()サミュエルさんが何か手抜きをして、それにブチ切れたプリシラさんがハリセンを使うのを忘れてハンマーとかでサミュエルさんをブン殴ったってトコでしょうね。事実、首の骨が折れてましたし、()蓋骨(がいこつ)陥没(かんぼつ)骨折してましたから…」


 夕食時、私の話を聞いたアリアさんは…


「相変わらず、ハリセンを使う事を忘れてるみたいですねぇ… いつだったか、エリカさんがハンマーを使う前に深呼吸をして気持ちを落ち着け、ハリセンを使う様にって散々(さんざん)言ってたのに… プリシラさん、頭に血が(のぼ)ったら何も考えられなくなってしまうんでしょうか…?」


 と、あり得なくない仮説を()べる。

 私は(かた)い表情で(うなず)くしかなかった。

 が、一応のフォロー(?)は入れておく。


「まぁ、それはプリシラさんの職人としてのプライドとでも言うんですかねぇ… 絶対に許せない部分をサミュエルさんが侵害(しんがい)してしまったんじゃないですか? ほら、私だって問題のある言動(げんどう)や行動をした人をハリセンでブッ飛ばす事があるでしょう?」


「その(ほとん)がミラーナさんですけどね…」


 私の(となり)で食事しているミラーナさんは、固まってしまう。

 まぁ、事実だしな…


「で… でもさぁ… モーリィさんやライザちゃんだってハリセンを食らってるじゃんか… そりゃ、アリアちゃんが言う様に、アタシが食らうパターンが(ほとん)どだってのは理解してるけど…」


 理解してるんなら、少しは()(ちょう)しろよ…

 余計な一言(ひとこと)を言ったり、余計な行動を起こしたりするから私にハリセンでブッ飛ばされてるんだろうが…


「いや、確かにそうかも知れないけど… そんなにハッキリ言わなくても…」


 ハッキリ言わないと理解しないだろうが、あんたは…


「あぅ…………」


 夕食もそこそこに、ミラーナさんはフリーズしてしまったのだった。





 ────────────────





「ところでエリカちゃん… 新聞(しんぶん)って知ってるよな…?」


 翌朝…

 立ち直ったミラーナさんが、朝食の席で私に聞いてくる。

 新聞なんて、当然ながら前世から知ってますよ?

 さすがに前世の事は言えんけど…

 私は(うなず)き答える。


「勿論、知ってますよ? 社会情勢一般ニュースまたは特定分野の出来事をほうじ、対象とする層の中で読まれる事を前提に刊行される紙媒体(かみばいたい)の事ですよね? まぁ、発行元(はっこうもと)ヴィラン(王都)ですし、ロザミアに伝わるのは数日~(とお)()前後はズレますけどね…」


 ミラーナさんも同様に(うなず)き、少し(あき)れた様に続ける。


「ま、数日~(とお)()前後のズレが起きるのは仕方無いだろうな。なにしろ各地からヴィランに情報が集まり、それから発行されるんだから… で、まぁ、新聞に関してはエリカちゃんが言った通りの認識で間違い無い。その上で、だ… この記事を見てくれ…」


 ミラーナさんが新聞を開き、指差した記事を読む。

 勿論、診療所のメンバーも(のぞ)き込む。

 そこには…


『ロザミア在住のエリカ・ホプキンス魔法医が、王都ヴィランおよび各地の魔法医達に講義と指導』


 との見出しが大きく書かれていた。

 そして内容はと言うと…


『エリカ・ホプキンス魔法医の指導に()り、王都ヴィランの魔法医達の医学知識が大きく向上か? また、魔力容量が少ないと言われていた地方の魔法医達の魔力容量も大きく増え、地方での治療活動の活性化も見込(みこ)まれる。今後のエリカ・ホプキンス魔法医の活躍に期待』


 しかも、ご丁寧(ていねい)に私の写真付き。

 その大きさたるや、紙面の4分の1を()めるデカさ。

 ………………………………

 はぁあああああっ!?


「ミミミミミ、ミラーナさん!? 何なんですか、この記事は!? それに、こんなにデカデカと私の顔写真付きで! しかも〝ロザミア在住〟って、私の所在地まで公表しちゃってるし!」


「わぁ~… エリカちゃん、一気にイルモア(こく)(じゅう)に顔と名前が知られちゃったねぇ…」


「これまではロザミアとヴィランぐらいにしか知られてなかったんだよねぇ… まぁ、マインバーグ侯爵様の(りょう)()の『メリルマート』と、ルグドワルド侯爵様の(りょう)()の『フィクセルバート』では、奥様達の()()()()()()だっけ? それを治した事で、多少は名前が知られてるかもだけど…」


「いや、チュリジナム皇国… 今は崩壊(ほうかい)しちゃってるけど、あの国との(いくさ)で負傷した子爵様が居たじゃない? 確かフェルニック子爵様だっけ? あの人の(おさ)める街、タルキーニだったかな? そこでもエリカちゃんの名前ぐらいは広まってるんじゃない? フェルニック子爵様、かなりエリカちゃんに感謝してたみたいだし…」


 ライザさん、モーリィさん、ミリアさんが口々(くちぐち)に言う。

 まぁ、確かに…

 その程度の数の街で、私の()()()()()は広まるだろうなってのは思ってたよ?

 でも、こうやって新聞に顔写真が掲載(けいさい)されるなんて、夢にも思わないじゃん!

 そもそも()()()()では写真自体が発明されてなかった…

 いや、発明されてたかも知れないけど、そんな事は私に知らされてなかったし!

 ……知らせる必要ありませんよね、そうですよね……

 てか、この新聞に()ってる写真って、間違い無く〝キャサリン様とアンドレ様が結婚された時の記念写真〟から切り取ってますよね!?

 私、写真の使用許可出してないんですけど!?

 これって、(しょう)像権侵害(ぞうけんしんがい)ですよね!?

 (うった)えますよ!


 …えっ…?

 〝(しょう)像権侵害(ぞうけんしんがい)〟って何だって?


 (しょう)像権(ぞうけん)ってのは、は自己の氏名や肖像をみだりに他人に公開されない権利なんだよ!

 スポーツ選手が活躍してる場面とかなら、元々(もともと)顔や名前が知れ渡っているから問題にはならないけど、私は(いち)()(じん)である上に、顔はともかく名前は一部の街でしか知られてないんだぞ!

 それをフルネームで、しかもハッキリ・クッキリ(うつ)った顔写真を掲載(けいさい)しやがってぇえええええっ!

 (しょう)像権侵害(ぞうけんしんがい)でこの新聞の発行元を(うった)えてやるから、覚悟しとけよぉおおおお!


「えぇと…… エリカちゃん…? その()()()()()()()()()()()って何なんだい? アタシも王家の長子って事で法律についても勉強はしてたんだけどさ… 初めて聞くんだけど…?」


「へっ………?」


 私は思いっ切り()の抜けた返事をミラーナさんに返す。

 そして、(しょう)像権(ぞうけん)と、それを侵害(しんがい)する事に対する弊害(へいがい)を説明したのだが…


「あぁ… なるほどなぁ… エリカちゃんの言いたい事は理解出来るし、納得も出来る。けど、写真(フォトグラフ)自体が発明されて()が無いし、そもそも(しょう)像権(ぞうけん)って考えがイルモア王国には無いんだよ… いや、写真(フォトグラフ)自体が()(きゅう)してない国に、そんな考えは無いだろうな…」


 と、淡々(たんたん)と話しながら朝食を口に運ぶ。


 ……おいっ!


「まぁ、写真(フォトグラフ)自体が世に広まり、エリカちゃんの言う〝(しょう)像権(ぞうけん)〟とやらが問題になるまでは、国家としても動けないだろう… ってのがアタシの考えだし、父上も同じ考えだろうな… ま、今は我慢して貰うしかないってトコかな?」


 言いつつバクバク朝食を(たい)らげ、ミリアさん、モーリィさん、ライザさんを(ともな)ってギルドへと出掛けてしまった。

 ちなみにルディアさんは気不味(きまず)そうな表情をしてたものの、仕事があるからとミラーナん達とトモニ(とも)にギルドへ。

 残ったアリアさんは…


「名前と顔が全国(イルモア王国内)に知られた事は………… 有名税とでも思っておきましょう♪」


 何の(なぐさ)めにもなってないわいっ!

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