第247話 エリカの伝染病(感染症)講習。その結果は…?
「まずはヴィランから来た魔法医と、それ以外の街等から来た魔法医に別れて下さい」
私が指示を出すと、リビングに集まった魔法医達は『理由が分からない』と言った表情をしながらも、素直に別れる。
ウン、ここでグダグダ言う様なら、適当な誰かにハリセンの一発も食らわせてやるトコだったが、素直でよろしい♪
「さて、まずはヴィランから来た魔法医達には私の伝染病(感染症)に関する講習を受けて貰いますので、このままリビングに残っていて下さい。ヴィラン以外の街等から来た魔法医達は、ここに居るライザさんに最大魔力容量を鑑定して貰います。そして、充分な最大魔力容量を有している人のみ最大魔力容量の底上げを免じ、私の講習を受けて貰います」
言ってライザさんを紹介するが、魔法医達はライザさんに懐疑的な眼を向け…
「何なんですかな、その御仁は?」
「エリカ殿の名声や功績は存じ上げておりますが、ライザと言う名は聞いた事もありませんぞ?」
「然り! その様な者に我等に対する判断を任せるなど、納得出来ませんな!」
等々…
ブー垂れる魔法医達に、ミラーナさんが一喝。
「貴様等! 自分達の実力に自信を持つのは良いが、過信するんじゃないっ! このライザちゃん… いや、ライザ殿の本来の姿はドラゴンであり、他者の魔力を視る事が出来るんだ! そのライザ殿が鑑定し、最大魔力容量が充分でないと判断を下した者はエリカちゃん… いや、エリカ殿の講習を受ける前に、自らの最大魔力容量を底上げする事をミラーナ・フェルゼンの名に於いて厳命する! 文句のある者は前に出よ! アタシの剣の錆にして──」
「錆にするんじゃないっ!」
すぱぁああああああんっ!!!!
ずどべちゃぁあああああっ!!!!
私の振るったハリセンの一撃で吹っ飛んだミラーナさんは、見事にリビングの壁(天井近く)にめり込んだのだった。
また修理費が嵩むなぁ…
それはともかく、壁にめり込んだミラーナさんを見た地方出身の魔法医達は…
「「「「「全てエリカ殿の指示に従います!」」」」」
と、一斉に見事なまでの土下座を嚼ましやがったのだった。
何故だ……?
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ライザさんが地方から来た魔法医達の最大魔力容量を鑑定している間に、木工業者のグランツさんを呼びに行き…
道中で事の顛末を説明した上でリビングに上がって貰い、状況を見て貰った。
そして、最初に発した言葉が…
「そりゃまぁ、こんな状態を見ちまったんじゃなぁ… 王都の魔法医達は、少なからずエリカちゃんの事を知ってんだろ? だけど、地方の魔法医達は知らなかった… その上でこれだからなぁ…」
言って見上げるグランツさんの目に映る物…
それは、未だにリビングの壁にめり込んだまま、ピクピクと痙攣しているミラーナさんの哀れな姿だった。
いやまぁ…
ライザさんは魔法医達の最大魔力容量を視て貰ってるし、アリアさんには診療所での診察・治療を任せてるし、ルディアさんはギルドで仕事中だし…
私は勿論、ミリアさん、モーリィさん、更には魔法医達の誰も、天井近くにめり込んでるミラーナさんを剥がせるだけの身長は無かったからなぁ…
そこで考えたのがグランツさん。
彼なら2m近い身長と、日々の作業で鍛え上げられた力があるから、簡単にミラーナさんを剥がせると思ったんだよ。
実際、軽々と剥がしてたし。
メインは修理に関してだけど、これに関しては自業自得と言えなくもないので素直に支払った。
金貨1枚… 1日の稼ぎが吹っ飛んじゃったよ…
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「それでは、本日の講義は以上です。講義の最初に言っていた通り、毎月『6の付く日』から『4の付く日』が講義、『5の付く日』が試験になります。その試験に合格した人は王都、もしくは自身が魔法医として活動していた街等に戻って下さって構いません。しっかり勉強し、早く帰れる様に精進して下さいね♪ お疲れ様でした♪」
私はお辞儀をし、講義室代わりにしていたリビングを後にする。
が、講義を受けていた魔法医達(数人の地方から来た数名を含む)は私が出て行った後、グッタリと机に突っ伏していたのだった。
そんなに厳しかったかな…?
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「厳しいなんてモンじゃないと思うけどなぁ…」
「ヴィランから来た魔法医達はエリカちゃんの厳しさを知ってるでしょうけど、地方から来た魔法医達はねぇ…」
「エリカちゃんからしたら常識… って言うか、知ってて当然なのかも知れないけどさぁ…」
「そうですよ… まぁ、私は故郷やヴィランの図書館で徹底的に勉強してからロザミアに来たから、エリカさんの講義… 診療の空き時間に聞かせて貰ったんですが、理解し易かったですよ? でも、何の予備知識も無い人達だと少し… いえ、かなり難しいかと…」
と、ミラーナさん、ミリアさん、モーリィさん、アリアさんからは非難轟々…
とまでは言わないが、そこそこ厳しい意見が。
「ボクは何にも解らないから何とも言えないなぁ… でも、何となくだけど、エリカちゃんの説明が難し過ぎるかも… とは思ったかな…?」
「そうよねぇ… 私は医学知識は全く無いから何とも言えないけど… ライザちゃんの言う通り、もう少し理解し易く説明した方が良いんじゃないかしら? エリカちゃんって、自身の頭が良い分、『なんでこんな簡単な事が解らないんだ!』って雰囲気があるのよね… あ、勿論悪い意味じゃないわよ? 私が言いたいのは、相手の理解力を自身の理解力に合わせちゃダメなんじゃないかって事。つまり、1~10の事を説明する時に、相手が1や2の事すら理解していないのに、それぐらいは当然理解してるだろうと思って、いきなり3とか4の事を説明して、相手が理解出来ると思う? 出来ないわよね? それがエリカちゃんの欠点だと私は思うの… 勿論、エリカちゃんの知識の深さには感心するし、尊敬もしてるわよ? けど、知識の深さと教育は別だと思うの」
ライザさんの意見はどうでも良いが、ルディアさんの意見には考えさせられる部分が多くある。
私は自身の考えを改め、難しい言い回しを少しでも魔法医達が理解し易い簡潔な言葉に置き換え、出来るだけ優しく講義を続けたのだった。
そして勿論、1から順を追ってである。
そうした事で判ったのだが、ヴィランから来た魔法医達ですら、伝染病(感染症)に関する知識を持っていた者は全体の2割ちょっと。
地方から来た魔法医達(ライザさんの鑑定に合格した4人)に至っては、何の知識も無かった。
そんなので、よく魔法医を名乗れたな…
ちょっとした怪我や風邪を治せれば、魔法医を名乗れると思ってたんじゃないだろうな…?
私はその日の講義が終わった後、夕食を共にしながら聞いてみる。
ちなみにだが、ロザミア在住中の宿はホプキンス総合診療所の増えた空き部屋を無料で提供。
ただし1部屋を4人が共用し、ベッドを使えるのは1人。
残りの3人は、床や畳(ムルディア公国からヴィラン経由で、ようやく届いた)に敷いた布団で寝て貰う事に。
まぁ、布団は『掛け布団』『敷き布団』共に、私が寝具店に特注していた物だから誰も文句は言わなかった。
当然だけど、診療所のメンバー全員が同じ寝具を揃えているからね?
それなりに出費は多かったけど、どんな職業だろうと最高のパフォーマンスを引き出す為には快適な睡眠が必要だってのが私の持論。
そしてそれは間違い無いと思っているからね?
快眠無くしては、仕事も勉強も捗らないだろうと思っていたのだが…
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『6の付く日』から『4の付く日』まで講習を続け、試験日である『5の付く日』を迎えたのだが…
試験の結果、全員が不合格。
伝染病(感染症)は、場合に由っては非常に危険な状況を招きかねない為、厳しめの採点…
100点満点中、95点以上を合格としていたのだが…
最高点をマークしたのは、自身の参考までにと参加したアリアさんの99点。
惜しかったねぇ…
風疹の症状で、『発熱』『発疹』までは合ってたけど、『リンパ節腫脹』を書き忘れちゃったねぇ…
「書き忘れたと言うか、もう一つ症状があったな~とは思ってたんですよ… それを考えてる内に時間切れになりまして… 思い出したのは、解答用紙が回収された少し後だったんですよ… なんだか凄く悔しいですね…」
だろうなぁ…
そのミスさえ無ければ満点だったんだから…
それより問題なのは、他の魔法医達。
まだ1回目の試験で、講習を受けた期間も短かったとは言え、最高得点が48点とは…
翌日から、私の講習の苛烈さが増したのは言うまでもない…




