第246話 伝染病(感染症)=水痘症(水疱瘡)の流行は終息しました♪ だけど…(泣)
「エリカちゃ~ん♪ ヴィランに来て下さったのね~♪」
どすぅっ!
「ぶぐぇっ!」
講習会を終え、王宮内に用意された宿泊部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、私を見付けたロザンヌ様が私にトペ…
いや、タックルをブチかましてきた。
久し振りに会ったと思ったら、いきなりかい!
と思ったのも束の間。
練習だか特訓でもしてたのか、ロザンヌ様は私が身体を起こそうとするのを絶妙なコントロールで阻止して馬乗りになる。
これ、MMA(ミックスド・マーシャル・アーツ:総合格闘技の略称)なら、まず間違い無く負け確定の体制だぞ!?
それはともかく、私はロザンヌ様に馬乗りになられたまま、何とか言葉を絞り出す。
「ロ… ロザンヌ殿下… 私に会った事に対する表現なのは理解しますが… とりあえず… 全力でタックルをブチかますのは… 遠慮して下さいますかねぇ…?」
今年で18歳になるロザンヌ様は身長が160㎝を超え、体重も40㎏を超えていると思われる(さすがに正確な数値を言うのは憚られる)ので、タックルの威力は身長130㎝体重25㎏の私にとって、かなりのダメージだ。
だが、ロザンヌ様は…
「あら~♪ それでは、お風呂でエリカちゃんを癒さなくてはいけませんわね♡ お母様が用意して下さってますから、すぐに参りましょう♡」
と、タックルのダメージで動けない私を引き摺って、風呂まで連行(?)して行ったのだった。
…絶対ワザとだろ!
マリアンヌ様と結託して、私を風呂に拉致する計画を立ててやがったな!
その後、私はロザンヌ様とマリアンヌ様から好き放題に全身を洗われて疲労困憊になり、翌日の診療の殆どを講習を受けたヴィランの魔法医達に任せる事になったのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「何をやっているのだ、お前達は…」
イルモア王国国王アインベルグは、呆れ切った表情でマリアンヌとロザンヌに問い掛ける。
2人は…
「「申し訳ありませんでしたぁああああああっ!!!!」」
と、ド派手に土下座をかましていた。
ちなみに私はと言うと、2人の〝お風呂攻撃〟の所為で体力と精神力を使い果たし、1日中ベッドから起き上がれずにいた。
まぁ、以前の講習でヴィランの魔法医達の意識も変わったらしく、全員が休日前の診療で魔力を使い切り、ひたすら最大魔力容量の底上げに尽力していたんだとか。
そのお陰でヴィランの魔法医達の最大魔力容量は、全員が講習前の2倍~3倍前後に膨れ上がっており、私不在でも2日ぐらいなら水痘症(水疱瘡)の治療は滞りなく行えたのだとか。
これなら私が出張らなくても良かったのでは?
と、思う方も居るだろうが、事はそんなに単純ではない。
なにしろヴィランの魔法医は、ちょっとした怪我やちょっとした病気(例えば風邪)なんかの治療には長けているが、所謂伝染病(感染症)に関する知識は皆無だったりする。
十数年前にも水痘症(水疱瘡)が流行ったそうなのだが、当時の魔法医達は成す術が無く、患者を隔離するしか出来なかったのだとか…
知識、無さ過ぎだろ!
いやまぁ、地球の医療知識を持っている私と比べるのは酷ってモンか…
とにかく私は自分が動けない(ロザンヌ様のタックル、及びマリアンヌ様&ロザンヌ様のお風呂攻撃でのダメージ)為、ベッドからヴィランの魔法医の代表に指示を出し、なんとか2日目の診療は私抜きで終えたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ヴィランでの水痘症(水疱瘡)の診療・治療は、エリカが復帰した事もあって数日で終息。
平穏な日々が戻ってきた。
の・だ・が・…
今回の伝染病(感染症)騒ぎに関し、王宮の魔法医長が謁見の間に呼び出されていた。
「今回、貴殿を呼び出したのは他でもない… まぁ、貴殿だけに責任を問うつもりは無いので安心せよ」
アインベルグの言葉に、ホッと胸を撫で下ろす魔法医長。
しかし…
「しかしだ… 貴殿も前回のエリカ殿の講習会には参加していたのであろう? だが何故、誰も今回の様な伝染病(感染症)に関する質問を講習の時にエリカ殿にしなかったのだ? 勿論、貴殿だけではない事も承知しておるが… ただ、十数年前とは言え、今回と同じ〝流行り病〟… 〝水痘症(水疱瘡)〟と言ったか…? それが蔓延したのは、貴殿の年齢からしても存じている筈であろう…? まぁ、エリカ殿がライザ殿と共にヴィランに来てくれて大事に至らなかった事を考慮し、先程も言った様に貴殿を罪に問うつもりは無いのであるが…」
そこまで聞き、更にホッとする魔法医長だったのだが…
「だからと言って、何の沙汰も無しと言うワケにはいかぬ。3ヶ月間の講習を受けた魔法医の誰1人として、今回の〝水痘症(水疱瘡)〟の蔓延に対し、エリカ殿が来てくれるまで有効な治療を講じられなかったのは事実。故にイルモア王国内の魔法医達には4ヶ月交代でロザミアに出向し、エリカ殿の元で魔法医としての理念、信条、信念、哲学、思想を学ぶ事を厳命する! その上で、エリカ殿が認めた者のみエリカ殿の講習を免じ、今まで通りの魔法医としての活動を認める事とする! 文句があるなら、エリカ殿が認めるだけの治療技術と医学知識をを示してみせよ! 出来ないのであれば、エリカ殿の都合を考慮した上で教えを乞い、実力を示せ!」
アインベルグの言葉は正式にイルモア王国在住の魔法医達への王命として周知され、定期的に各地からロザミア(と言うか、ホプキンス総合診療所)へと研修を受けに魔法医達がやって来る事になった。
私の業務は日々の患者に対する診察・治療に加え、空き時間は各地からやって来た魔法医達(とは名ばかりの、ちょっとした怪我や病気しか治せないド素人:言い方が悪けりゃ研修医)に対する時間の無駄としか思えない連中への講義に、使う必要の無い時間を使う事になったのだった。
────────────────
「時間の無駄… とまでは言わないけど、エリカちゃんの講習を受けに来た研修医だっけ…? 最大魔力容量は以前に比べて増えてるんだけど、それってヴィランで魔法医をやってた連中だけなんだよねぇ… 他の街の魔法医達の最大魔力容量って、以前のヴィランの魔法医達の最大魔力容量と同じぐらいだよ? エリカちゃん的には、どう思ってるの?」
他人の魔力を見る事の出来るライザさんからの指摘に、私は首を捻る。
「う~ん… とりあえず、ヴィランから来た魔法医達には講習を受けて貰うだけで大丈夫だと思うんですけど… 問題なのは、ヴィラン以外の街から来た魔法医達ですよねぇ…」
私が悩んでいると、アリアさんが…
「まず、ヴィラン以外の街から来た魔法医達には、講習を受けるのと同時に魔力容量を増やす事を厳命すべきです! 今回の〝水痘症(水疱瘡)〟の様な伝染病… と言うか、感染症ですか? それに対応するには最大魔力容量が足りなさ過ぎます! 今回はたまたま被害がロザミアとヴィラン、その道中の街や宿場町に限定されていたから良かったですけど… それ以外の街や宿場町に蔓延してたら、それこそエリカさんやライザさんが各地を治療の為に飛び回る羽目になってたかも知れないんですよ!?」
と、怒りの表情で捲し立てたのだった。
まぁ、言いたい事は解る。
そんな事になったら、半年から1年は私がロザミアから離れる事になったかも…
いや、さすがにそれは無いか…
「アリアさん… 水痘症は、そこまで深刻な病気じゃないですよ? 少なくとも、命に関わる様な病気じゃありません。まぁ、1歳以下、15歳以上、妊婦さんの場合には合併症を引き起こす確率が高いですし、皮膚の二次性細菌感染、脱水、肺炎、中枢神経合併症(無菌性髄膜炎や小脳炎等)を来す事があるので、楽観するのは危険ですが…」
「そんな危険があるな尚更です! しっかり最大魔力容量を増やす事を厳命し、その上でエリカさんの講習で知識を深めさせるべきです!」
藪蛇だったか…
私の説明でアリアさんは更に激昂し、私は魔法医達の講習に加え、ヴィラン以外から来た魔法医達の最大魔力容量を増やす為の訓練にも付き合わされる事になったのだった。
トホホ……(泣)




