↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/239

1月2週目 三味線④

 屈辱のレースが終わり、反省会という流れになった。こちらも聞きたいことがいくつもあったから、この流れは都合がいい。そう思っていたのだが。


「バカだろ、オマエ」


 開口一番に罵られましたよ?


「レース、カレントに全部任せてただろ。何考えてんだ?」

「いや、俺はまだ水中戦に慣れてないし。任せた方がいいと思ったんだが……不味かったのか?」

「当たり前だ」


 三味線は呆れた目で俺を見ている。そこまで的外れな考えではないと思うんだが。


「いいか。ドラゴンってのは、騎手を乗せ、その指示に従ってレースをするのが普通なんだ。それを「全部任せる」ってのはだな、ただの丸投げ、責任放棄ってやつだ。そんなことをされてムカつかないわけ無いだろうが。慣れてなかろうが、背に乗ったなら騎手として振る舞え。それに俺とオマエの勝負なんだぞ? 自分の勝負で敵前逃亡して、相棒見捨てて逃げんなよ」

「うぐ」

「大体だな。乗ってるドラゴンが苛ついているなら、ちゃんとコミュニケーションを取って、何に苛ついているか知ろうとしろよ。それが“ドラゴンに乗る”って事だろう?」

「マッタクモッテ、ソノトオリデス……」


 いや、専門家に任せるとかいうのは確かに間違った考えで無かったと思うのだが、それ以上の正論に俺はあっさり論破された。

 そうだよな。自分が勝負を受けたんだから、自分の力を見せなきゃいけなかったのに。

 少し考えが(ぬる)かったと、項垂れる。


「レース序盤で岩礁に体をぶつけて俺をけん制した場面があっただろ。あれ、反則な。レースだと思えなかったんだろ、カレントには」


 あー、あー、あー。アレ、後ろに付かれた事に苛立っていたんだとばかり思っていたけど。そういう事か。

 ちゃんとルールを把握してなかったし、問題行動かどうかすら分かってなかったよ、俺。


「あとは、ロクにスキルを使わないし、本気で挑んでるように見えなかったとも言っておくぞ? つーか、オマエ、カレントのスキルは把握してから挑んだよな?」

「……」

「おい。まさかテメェ」

「すんませんでしたぁっ!!」

「……本気でバカだろ、オマエ」

「天の配材のもと、地の理を知り、人を制すれば、すなわち無敵。事前準備をしっかり整え、コースを上手く使い、人の流れの中で自分のやり方を通せる奴に負けは無いってな。事前の1周で『地』はともかく、他は全然じゃねーか」

「天って、もっと違う意味の気がするんだけど? 天運とか」

「バーカ、『天は自ら助くる者を助く』ってな。事前準備をしてねー奴が天運に恵まれるわけなんざねーよ。あるか分からねー何かに賭ける前に、できる事、ちゃんとしろよ」


 さすがに、今のは馬鹿呼ばわりされても仕方が無かった。

 言われた言葉とは違うが、「敵を知り、己を知れば~~」とは有名すぎて、その意味をわざわざ説明する必要もない。つまり、そういう事だ。事前に準備の時間をもらい、情報収集させてもらうべきだったのだ。三味線もそれぐらいはさせてくれただろう。

 ……向こうから言って欲しかった、というのは我儘なんだろうな。



「じゃあ、次は俺の取った行動の説明だな。水中戦では基本の話ばっかだけど、オマエにはちょうどいいだろ」

「お願いします」


 一通りダメ出しされた後は、三味線が使ったテクニックとかスキルの話になる。

 奴の言うとおり、水中戦では基本だろうが、俺には耳に新しい話だ。将来水中戦をやるわけではないが、空中戦の参考になるかもしれないので真剣に聞く。


「まず、オマエが聞いてきた「姿が見えないカレントの位置把握」だけどな。別にカレントの位置を把握してああしてたわけじゃないんだ。水の流れで、一番体力を温存できそうな所を探してただけなんだよ」


 あのレースで一番気になっていた「姿の見えないカレントの位置をどうやって把握していたのか」という疑問だったが、少し予想しえなかった回答が返ってきた。

 でも、言われてみれば「確かに」と思う部分もある。

 見えていないとはいっても、周囲への影響を消しているわけではない。それに、複数のドラゴンが入り乱れる状況ならともかく、今のような一対一ではその痕跡もあからさまになるだろう。

 だが、それが一朝一夕に覚えられるプレイヤースキルで無い事もまた確かなのだ。この間ニャンタ師匠に課せられた訓練で俺も同じことに挑戦したのだが、最後まで「水の流れを読む」などという芸当はできなかった。

 「んー」と、言いたくなる程度に悔しさと羨ましさがあるのだが、それ相応の経験を積んだからだと思えば何を言っても無駄である。考えても仕方のない事とここは割り切り、話を次のものに移した。


「じゃあさ、カーブでメチャクチャ差を詰められたけど、あれって何をやったんだ? 俺の方はコースのライン取りを完ぺきにしたはずなのに、どうやってそれを上回ったんだ?」


 これ、結構重要。水スキルを全て把握しているわけではないが、カーブを高速で曲がることができるスキルなら攻略サイトの情報で抑えているはず。有効な有名どころはちゃんと覚えているのだし、漏れなど無かったはずだが。


「あれはブレスを撃ってその反動で急停止を掛けただけだぞ? そこまで珍しい話じゃないはずだが?」

「……は?」

「空中戦では珍しいかもしれんが、水中戦では定番の使い方だ。それにカーブのコース取りを三次元的に、上下方向にも距離を取れば減速は最小限で抑えられる。お前のコース取りって、二次元的だから無駄が多いんだよ。そこはカレントに任せておけば似たようなコース取りをしたと思うけど。変なところで手を出すよな、オマエ。完全に裏目じゃねーか」


 ぐおぉぉ。

 あれか? 今回、狙ってやったことが全部無駄? というか、マイナス方向に働いてないか?

 さすがにこれは落ち込む。力が抜け、両手を地面につけて――最初からついているけど――項垂れる。

 三味線は面白そうに俺を見ているが、慰めてくれることはない。俺も男に慰められたいと思わないからどうでもいいけど。



 他、細々(こまごま)とした話もしたが、頭には入ってこなかった。

 三味線のご自慢、シーフードサラダや刺身、魚介鍋などで多少上向きにはなったが、やる事なす事すべて悪い方に転がったという事実は変わらない。

 最後にもう一回レース形式で戦い、さっきよりはずいぶんマシな戦いをできたのでそれを慰めに、俺は自分の牧場に戻っていった。





 なお。

 戻った時にキティのおかげで機嫌を良くしたパヴァがお出迎えをしてくれたのだが、また新しいドラゴンの臭いをプンプンさせる俺に再び不機嫌になり、翌日は全く訓練も何もできなくなってしまった。

 「パヴァは浮気で怒ってたのに、また浮気したー!!」とはパヴァ側の言い分で、それを忘れて直接ログアウトしなかった自分にまた少しへこんだ。

 キティからも「アホニャ。もう知らないニャ」と言われてしまい、牧草地で独り佇む黒猫が泣いていたとか。

 翌々日、リザのフォローで何とかなったけど、パヴァは嫉妬深いと覚えておこう、そう心に誓った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。