惹かれあう二人 5
花摘みを終えたイェオーシュアはアルフレッドと別れ、彼女の育ての親である老婆のベルベットと共に食後のお茶を嗜んでいた。テーブルに置いた花瓶には摘んできたかすみ草が飾ってあり、彼女がそれを眺めては時折小さなため息をついている。その様子を見ていたベルベットがこう話しかけた。
「どうかしたのかい? ばぁばで良ければ話を聞くよ」
「うん……。実はね、お花摘みにいった時に男の子がいたんだ。その子のことがなんか妙に頭に浮かんでくるのよね……」
「そうかいそうかい、その子はなんて言うんだい?」
「アルフレッドって言うんだけど、耳が栗色で、笑うと目が猫みたいになって、ちょっとからかうとすぐ赤くなって……」
「どうりで、さっきから様子がおかしいと思ってたんだよ」
「え、な、なにが?」
「その子に名前を呼ばれると、しっぽがムズムズするじゃろ?」
「うん」
「その子のためにご飯を作りたくなったんじゃないかい?」
「な、なんでわかるの?」
ベルベットが深いため息をつくと、深刻な様子で彼女に語りかけた。
「イェオーシュア……、おまえはいま、病気にかかってるね」
「な、なんの病気?」
もったいぶるようにゆっくりお茶を一口飲んで、それからベルベットが、
「恋の病さね」
そう言って上品な笑みを浮かべつつ手をピストルのように構えると、イェオーシュアを撃つ真似をした。
「え、そ、そんな、な、なん!」
「顔が赤いよ」
言われて彼女は黙ってうつむいてしまう。そんな様子にベルベットは微笑ましく感じていた。だが次の瞬間、ふいに遠い目をすると、若かりし日のことを思い出すように語り出した。
「あの頃が懐かしいねえ……。若い頃のあの人は凛々しくて、賢くて、颯爽としてて、そりゃあもう美男子で、とにかく憧れの的じゃった。どうにか振り向かせたいとそりゃあ熱烈にアタックしたもんじゃよ」
「どうやって振り向かせたの?」
「なにかと理由を付けては毎日お弁当を渡したんじゃよ。中身も少しずつ豪華にしてね。あとは香水を変えたり、お守りを作っては渡したり……」
「そしたら?」
「祭りの日に告白されたよ。あの時のキッスの味を思い出すと……」
そう言うと、少女のような顔をしたベルベットが急に顔を両手で隠しつつ悶えていた。
* * *
翌朝、アルフレッドはドンカスターと朝食を済ませると、弓の練習をするために準備をしていた。
「アルフレッド、用意を済ませたらわしの部屋に来てくれんかの」
「うん、わかった」
準備を済ませるとドンカスターの部屋に向かった。
「準備はできたようじゃの。おまえに渡したいものがあるんじゃ」
ドンカスターが机の上を指差すと、そこには弓が置かれていた。
「わしが若いころ愛用してたものじゃ。持ってみなさい」
言われてアルフレッドが弓を持ってみる。重量感はほとんど無く、よく見ると不思議な文字が刻まれている。構えてみると柄を持つ手がよく馴染み、軽く弦を弾くと虹色に煌めく光の結晶が出た。
「わしが若いころ愛用してたものじゃ。大昔にエルフの子を助けたその礼としてもらったんじゃよ。わしはもう狩りは随分前に引退してのう。これからはおまえが使ってくれんか」
「いいの?」
「いいもなにも、弓はもうおまえを所有者として認めとるようじゃ。その証拠に、さっき弦を弾いたら光ったじゃろ?」
アルフレッドがもう一度軽く弦を弾くと、弓から光の結晶が散った。
「ほほっ、弓も喜んどるようじゃて」




