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一期一会 第一部  作者: ヤルターフ
第一編 静寧の森
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惹かれあう二人 4

「ふむ……、おぬし達の嘆きは昔からよく知っておる。それに子供達の未来を考え、いまの現状を鑑(かんが)みれば、わしも皆同様に胸が痛む」

「ですから議長! 我らが集まり、人間達に立ち向かえば……」

「しかし暴力による解決は何も生み出さぬ。それに我らを良く思っておる人々もおる。その者らの子供は、我らと同じおもちゃで遊んでおる。そうじゃろう?」


 言ってドンカスターは右手に木彫りのわんわんおを乗せて、皆(みな)に見えるよう差し出した。


「戦争が終わり、時が到れば我らをよく思ってくれる人々は必ず味方になる。その時、我らは言論を持ってして敢然(かんぜん)と闘い、過去の風習達と訣別(けつべつ)しようではないか」


 ドンカスターがゆっくりと手を振ると、乗っていた木彫りのわんわんおがふわりと浮かんだ。


「我らの子と人の子がこのおもちゃで一緒に遊ぶ未来は決して遠くない。その時がくるまで我らはいままでしてきた通りに非暴力を貫いていこうぞ」


 そうドンカスターが言い終えると、木彫りのわんわんおはふわふわと飛んで、先まで興奮していた集長の手のひらに優しく乗った。


「はい、わかりました」

「よろしい。ああ、それあげる。わしいっぱい持ってるからお土産に誰かにあげてちょ」


 とドンカスターがおどけると、場内に笑い声がこだました。それと一緒になって木彫りのわんわんおも静かに微笑みをたたえていた。


「さて、いくつか対策は考えてみた。先ほど出た通り、戦争はどうやら収束しつつあるとわしも見ておる」


 深紅の外套を羽織った族長が発言した。


「では戦争が終わるまでは?」

「うむ、交流や貿易はこれまでより少なくしよう。これについては来年度の予算に関係するので追って議論をする」


 今度は白の法衣を身に着けた族長が発言した。


「集落の合併については?」


「合併についてじゃが、これは次の会議で詳しく検討したい。新しく集落を作る場所、規模、移民の受け入れ、手当て諸々それらにかかる費用についてじゃ。これも予算に計上しないとのう……、他に?」

「結界についてですが、結晶石を使えば……」


 それを聞いて、ドンカスターはしばらく黙考した。そして一つの結論に達すると、こう言った。


「"アレ"は非常手段に使いたい。例えばじゃが……、万が一に一つの大集落が人間達に襲われたとしよう。その時に結晶石を使うのじゃ。効力範囲は一つの結晶石で大集落及び他の集落全域を包みこむ。結晶石は三つあり、それぞれが呼応するようになっておる。つまり、一つの結晶石が使われれば即座に他の二つも反応するわけじゃ。一度発動すると数年は結界が張られ、人間達は入れなくなる。戦争がすぐ終わればいいのじゃが、そうとも限らんからむやみに使えん。それに場所を教えるようなもんじゃからの。発動できるのは各大集落の族長だけじゃ。使う時機は各族長の判断に任せるとしよう。他に?」


 そこまで言うと、場内は整然として誰も発言する者はいなかった。


「では散会とする。次の議会は二週間後としよう」


          *          *          *


「やれやれ、やっと終わったわい」


 執務室に戻るとドンカスターはパイプを手に持ち、それに火を付けて煙を呑み、ゆっくりと鼻から煙を出した。


――アルフレッドの居た集落が焼かれたか。確か集長はトーマスじゃったかのう……。生きていればすぐ連絡が来るはずじゃが……、もう四日経ったから軍隊は撤収しとるはずじゃ。詳細は明日の朝にはわかるじゃろう。それによってはジュストと細かく相談せねば……。


 険しい表情をしながらドンカスターは思案していた。そうして窓を開け、景色を眺めては時折パイプを口にやり、煙をくゆらせていた。

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