第8話 黒歴史と不幸な手紙
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!!!!!
ギルドから一直線で家に帰り、私はベッドの上で悶えていた。
マジでやらかした…
完全にコミュ障でてたよー!!
普段は社畜してたおかげで培った処世術でなんとかしてるけど、ホントはコミュ障なのよ、私は!!!
だからバレないように頑張ってたのに……
しかし前世で犯した数々の失態を思い出し、先ほどの黒歴史なんて大したことないと自分には言い聞かせることにした。
気にしすぎてもいいことないしね。
もう今日のことは一部だけ記憶を封印して、明日からまたいつもどおりの『ジュン』でギルドに行くことを決めたのだった。
次の日、私は何事もなかったかのようにギルドに訪れていた。
相変わらずギルドは私が行くと時が止まるけど。
一体いつになったら溶け込めるのやら。
その様子にだんだん慣れてきている私は、昨日悩んでいたリドーナ草の採取の依頼を受けることにした。
依頼書を剥がし、受付でチェルシーに普通に対応してもらい、無事に依頼を受けることになった。
しかし、視線を感じる。
まぁこのギルドにいればいつでも感じるんだけど。
周りにいる冒険者たちがするような様子を窺う視線ではなく、監視するような視線だった。
その視線は受付の後方にいるヴィエラからだった。
昨日の話で警戒されてんのかなぁー?
まぁ普通に冒険者できるならなんでもいいんだけどさー
なんかモヤつくよね~
そんなことを思いながら、依頼を遂行するためギルドを出るのだった。
特に向こうから必要以上に話しかけられることもなく、あくまでも適度な距離感で監視しているようだった。
『数百年も姿を見せていない妖精と出会った私』という存在を野放しにはできないのだろう。
そんな日々が続くと、人間は『慣れ』というものがでてくる。
そして私が下した決断は、『気にしない』だった。
気にしてもしょうがないこともあるよね~
締切を守らない作家の『推し活楽しい♪』っておっしゃられてるSNSとか
楽しい♪じゃなくて仕事して?って何度思ったことか、、
でももうそこを気にしたら負けなんだよね
最終的に掲載に間に合えばいいんだから……
途中の私の苦労なんて……ねぇ……
そんなことを思いながら依頼に励むのだった。
冒険者として依頼をこなす日々が続いたあるとき、ふと思った。
あれ?私、人間観察のために冒険者になったんだよね?
全然一人だし、全然取材できてませんけど??
え???
そーいえば、最近冒険者やって疲れてたから全然小説も書けてないし…本末転倒じゃない?!
なにやってんだよ、私ー!!!!
目的を思い出した私は、どうしたら早くほかの冒険者と依頼ができるのか明日冒険者ギルドへ行ったら確認することにした。
そして翌朝、 ギルドに到着するやいなや、私はチェルシーに聞いてみる。
すると「Eランクになればできる」とのことだった。
その返答にルンルンになる私。
Eランクになるにはあと1つ依頼を完了すればいいのだ。
つまり、今日の依頼が終わればついに取材ができるということ。
急いで掲示板にむかい、ライマットの実の採取の依頼を受けることにした。
それが終わればついに!!
そう思うと足取りも軽くなり、新たな一歩を踏み出すような気持ちでギルドの出口に向かおうとすると、フードを被った男が私の前に立ちはだかった。
邪魔だな……
そう思っていると「なんの依頼受けたんだ?」と男から声をかけられた。
登録した日から早2週間、初めて職員以外から声をかけられたので、少し驚いた。
「え…ライマットの実の採取ですけど…」
なんでそんなこと聞かれているのかもわからず答えると、笑いながら言われる。
「その髪色でまだ採取とかやってんのか?なぜ討伐依頼受けない?」
その言葉にイラッとした。
この男にも苛立つが、この上から目線の言い方が『どっかの誰かさん』を思い出させ、より苛立ったのだ。
「私がどんな依頼を受けようとあなたに関係ないですよね?私急いでいるので、失礼します」
有無を言わせないように作った笑顔で圧をかけながらその場を去った。
なんなん、あいつ!!
うざってぇー!イライラするわー!!!
その気持ちが歩き方に出たのか、いつもよりも足音が大きくなりながら依頼に向かうのだった。
その足音のおかげで、その男が笑いながら「…やっぱりおもしれぇなぁ」と言ったことも気づけずに。。。
イライラしながらも無事にライマットの実の採取を終えた私は、自宅に戻っていた。
本当は早く終われば別の依頼を受けるつもりだったのだが、イラつきが止まらなかったのだ。
そんななかではちゃんと依頼を完了できる気がしなかった。
実際ライマットの実の採取も予想以上に時間がかかったから。
そのこともあのフードの男のせいな気がしてきて、さらにイライラがたまっていったのだ。
あーーー!!
もう!あーゆー奴ってどこにでもいるわけ!?
前世にもいたわ!
「なんでこーゆーこともできないの?簡単じゃん」って言ってくるやつ!
うるせぇよ!
こちとら不器用だって言ってんだろ!
どう収めていいかわからず、クッションをボンボン殴っているとドアからノック音が聞こえる。
このイライラを誰かにぶつけるのは違うと分かっているので、心を落ち着けてから返事をしようとしたのに、すぐにドアが開いた。
え?返事してないけど??
開いたドアから現れたのはミザリーだった。
なんとなく『ですよね』感が強い。
ミザリーは悪びれもなく言葉を放つ。
「お返事がなかったのですが、お休み中かと思い勝手に入室してしまいました。申し訳ございません」
頭は下げるものの、声の抑揚は全くなく、まったく詫びる気のないその様子に
……絶対思ってない。
そう思わずにはいられなかった。
ミザリーはこちらの気持ちなんか、まるで気にしていないようにそのまま続ける。
「さきほどビルエッド伯爵邸よりお手紙が届いておりました。差出人のお名前は『レナード・ビルエッド』さまです」
私は『レナード・ビルエッド』という名前を発したミザリーのほうへ素早く向き、表情を歪めた。
「は!?レナードから連絡?!さいあく!!!!」
私の反応にミザリーは鋭い視線を向けながら圧をかけてくる。
「ジュリエットさま、いくら婚約者とは言え、そのようなご冗談は言うべきではございませんよ」
そんなこと言われましても……。
そう思いつつも反論すればめんどくさいことになることは、今までの経験からわかっていた。
だがこのまま手紙を読めば怒りが湧く可能性が高いと分かっている私は、ミザリーに部屋から出るように促す。
「わかった、気をつける。……これから手紙を読むから席を外して、ミザリー」
「……承知いたしました」
不満げなオーラを出しつつ、ミザリーは部屋を後にした。
はぁー。
大きなため息が出た。
でもしょうがないのだ。
あのフードの男のおかげで会いたくもない『どっかの誰かさん』から手紙が届いてしまったからだ。
同族のあの男が呼び寄せたような気がしてならなかった。
ホントになんなの?今日は!
え?なに?厄日?!
ってかなに?
用もないのに連絡してくんなよ、マジで。
嫌々ながらレナードからの手紙を開けると……
『明日、そっちに行く レナード』
「はぁー!?」
私には見たくない文字が書いてあったのだ。
せっかく明日から取材できるようになったってゆーのに…!!!
あいつ、、マジでふざけてますよね?




