第9話 クソ野郎とのお茶会は突然に
はぁ~……
ほんとに気が重い
誰が好き好んでレナードとお茶会なんてしなきゃいけないのよ
お茶会したいならいつも横に侍らせてるセシリア・カーソン男爵令嬢としろよー
もーーー助けてード◯えもーん!!!涙
はぁ~……こんなこと言ってても明日のお茶会から逃げることはできないんだもんなぁーー
婚約者とのお茶会をバックれたなんて知られた日にはお父様に怒られるだけじゃ済まないだろーしなぁ……
『令嬢』ってめんどくせぇーーー
ベッドにゴロゴロと転がりながら明日のお茶会を恨めしく思っていた私は、どうやったら早く済ますことができるのかだけを考えていた。
そうじゃないと『せっかく取材ができるようになったのに…!』という気持ちがあふれてしまうからだ。
だいたい前日に連絡してくるとか、頭おかしいんか?
いくら婚約者とはいえ、前日に連絡するというのは失礼な行為にあたる。
そんなことを平然としてくるということは、そう、ジュリエットのことをなめているのだ。
なんであんなバカなガキンチョに私が舐められなきゃいけないわけ?
ジュリエットは怒らんかったんか??
まぁジュリエットの日記をみるに、父親に迷惑をかけたくなかったんだよね
優しい子だよ…!!
それなのにあのボンクラは~!!
ジュリエット、待っててね!
いずれこの『借り』は絶対返すから!!
そんなことを意気込み、夜は更けていった。
翌朝、レナードは手紙に書いてあった時間よりも遅くやってきた。
詫びる様子すらなく、ウェーブがかったマッシュの深い緑の髪をかきあげながら「はやく案内してくれないか?」なんて言ってきやがった。
このガキ……
キレそうになる自分を落ち着かせつつテラスへと案内した。
庭にある花から華やかな香りが漂うテラスで、花の匂いがする紅茶を嗜んでいた。
はぁ~いい香り~
やっぱりエルリック商会の商品は間違いないよね~
ほかで買うよりも少し値が張るけど、品質は確かだから話題になるのもわかるよねー
SNSって概念がないけど、口コミで広まってココまでいけるのすごいよね~
今や帝室御用達って噂まであるし
「おい、聞いてるのか!」
せっかくお茶を楽しんでいたのに、不愉快な声のおかげで現実に戻されてしまう。
レナードは、話を聞いていない私に、苛立ちを隠さず怒りをぶつけてきた。
こいつがいなければ、ホントによかったのにな~
しかし私はそんなことも意に介さずお茶をのんびりと飲んでいた。
「バカなお前にもう一度だけ言ってやるから、しっかり聞け!いいか!?1週間後、皇室で夜会が開かれる!今回は次世代を担う令息や令嬢のみの夜会だからお前を連れて行ってやる。しっかりと準備をしておけ!」
「……夜会ですか…?」
は?マジでいきたくないんですけど!!
こーゆーときに頼るべき相手がいるだろ、お前には!!!
セシリア・カーソン男爵令嬢が!!!!
レナードは、不満そうに答えた私に、イライラが収まらない様子で言い放つ。
「俺だって、お前なんかを連れて行きたくもない!しかし皇族が開く夜会に婚約者を連れて行かないなんてできるわけないだろ!」
その言い分に「ただビルエッド伯爵に怒られたくないだけだろ」と思う私だが、こちらとしてもこれ以上変な噂を立てられても困るので承諾することにした。
「……はぁ~……わかりました。準備しておけばいいんですね?ドレスはどうすれば?」
私の質問に「自分で用意しろ!」と言ってきた。
「お前のドレスを準備するほど、俺は暇じゃない」とまで付け加えて。
こいつ、マジでぶん殴ったらまずいか?
心のなかでは「お前はもう死んでいる」の名ゼリフがでるくらいボコボコにはしてるけどね?
「……わかりました。ではしきたりに従って婚約者とわかるようにレナード様の瞳の黄色が入るようなものを準備しておきます」
その言葉を聞くやいなや、ガタッと音を立てて椅子から立ち上がった。
「フンッ!せいぜい俺に恥をかかせないようにしろよ!もう用件は済んだから帰る。俺は暇じゃないんだ。当日は夕方に迎えに来るから今日みたいに待たせるなよ?」
このガキ………
「お前の見送りなんていらない」と失礼なことを言い残し、レナードは帰っていった。
本当に二度と来ないでほしい。
あんなやつと結婚するの?
ホントに??
え……無理なんだけど……
今度お父様に相談してみようかなぁ……
そんなことを考えながらレナードがいなくなったあともテラスでお茶をしていた。
現実に戻りたくなかったからだ。
こっちの世界ではお茶会の他に『夜会』と呼ばれる舞踏会のようなものがある。
そこではダンスを踊らなければいけないのだ。
体がなんとなく覚えているとはいえ、この身体になってから数回しかやったことのないダンスを『あの』レナードと、『皇室』でやらなければならないのだ。
家名に懸けても、ちゃんと踊れないとまずいのだ。
しばらくは冒険者も作家もお休みだなぁー……
そんなことしてる暇ないもんなぁ、、
こーゆーときに要領のよかった同期やなんでもできる先輩を思い出して自分の不器用さを思い出して嫌になる。
昔から要領が悪くて、センスが微妙。
結局なんでも何度も何度もやって物量でどうにかしてきた。
それは転生しても変わらないようだ。
身体の持ち主である『ジュリエット』も器用ではなかったんだろうな、というのが至る所でわかっている。
だからか『ジュリエットのためにも頑張りたい』という気持ちが強いのかもしれない。
その方法が『地道に頑張る』以外見えてこないのが私だよね~呆
まぁ、頑張ってみますか!
そう意気込んだはいいものの、色んなことで地獄を見ることになったのはこの後の話……。




