第3話 冒険者・ジュン誕生!
うっぷ……ここまでの流れを整理しよう。
アラフォー漫画編集者から華麗に子爵令嬢に転生した私は……
やっと冒険者になる準備が整いましたー!
やったー!!!
アイリスからもらった薬で髪の毛の色はオレンジになったし、
瞳の色はブルーから緑に変わった。
ミザリーには出版社で執筆すると言ってあるし、
まぁすぐにバレることはないだろう
たぶん!……たぶん。。
心配してた薬は……飲めないほど苦くはなかったけど……
一応大人ですし。
でも毎回コレ飲むんですか?ってくらいの味はしてる……
しかも4時間くらいしかもたないって言ってたし、長時間の依頼ってなったら1日2回とか飲むってことだよね?
……ガチ??
…魔術で姿変えられるとかないかなぁ!?
……攻撃の魔術なんかよりも先に調べねば…!
まぁ、なにはともあれ準備も整ったとゆーことで!
いきますか!冒険者ギルド!!
と意気込んで重たい木のドアを開いた。
ギルドの中は併設しているカフェで提供しているビールやつまみの匂いがしていて、多くの冒険者たちがガヤガヤと騒がしくしていた。
私がギルドに入るまでは。
そう、私がギルドへ入るまでは……。
なぜか私が入った瞬間、時間が止まったように静まり返ったのだ。
じーーー
チラチラッ
ヒソヒソ
キャッキャッ
居心地わっるーーー!!!
え?なに?見た目も馴染んでるはずなのになぜ……
なぜこんなに注目されてるのー!?涙
えぇ??馴染んでないのか!?
馴染んでないのはお茶会だけで十分なんですけど!?!?
心の中は忙しいけどお茶会で表情管理を学んでいる私は、少し笑みを浮かべたまま、受付にいる濃いピンク色のウェーブがかった長髪で耳下で2つに分けて結んでいる可愛らしい雰囲気の女の子に話しかけた。
「あの…登録したいんですけど……」
ざわっ
なぜかギルド内が騒がしくなった。
なんで??
普通にそれ以外がないだろーがぁー!
なに?みんな私が遊びで来たとか思ってる?
そんなことないからね??
「あのー?」
私がギルドの受付に再度声をかける。
「……ホントに登録するんですか?(嘲笑)
危ない場所に行くことだってあるんですよ?わかってます~??そのおキレイな顔に傷がつく前に帰ったほうがいいんじゃないですか~?」
は?
なんなの、この子……アイドルみたいに可愛いからって、完全に舐めてますよねぇ?
「登録するから来てるんですよ。そんなことも分からないってなると……心配です……」
私は憂いを帯びたような表情で続けた。
「だって……受付に来る人の目的なんて数える程度しかないでしょ?登録したいって言ってるのに理解できないなんて……あ、もしかして耳が聞こえづらいのかしら?いいお医者様紹介しましょうか?それに明らかに初めて来た私のことをみても、登録の可能性を見いだせなかったということは、汲み取ることも苦手なんですかね?誰にでも苦手なことはありますから、お気になさらないでくださいね。でも苦手ならほかの方に相談してやり方を聞くほうがよいと思いますよ。冒険者は特に短気な方も多いと聞きますし…。まぁ私は大丈夫ですけどね、私は」
あなたの嫌味程度で私の心が折れるとでも思った?
前世で上司から嫌味のこもったことを言われながら仕事してた元社畜のこの私の心が?
寝言は寝てから言ってほしいわ
相手の力量も見極められないのに喧嘩を売ったこと、ちゃーんと後悔してね
そんな思いを込めながら最後は笑顔で伝えると受付の女の子は怒りを抑えず言ってくる。
「っっあなたねぇ!調子に乗るんじゃ……!」
「申し訳ございません!」
受付の女の子を遮るように謝罪の言葉がとんできた。
その言葉を発したのは、青色で胸くらいまであるストレートな髪の女性だった。
メガネをかけていて、キリっとした雰囲気をまとっていた。
なんというか、『委員長とかやってそうなタイプ』だ。
「登録ですよね?私の方でご対応させていただきますので、こちらへどうぞ。チェルシー、あなたは別の案件を対応して」
「で、でも…!」
「チェルシー!私の言ってる意味が分からない訳ではないわよね?」
「……はい」
その様子を横目に、たぶんチェルシーと呼ばれた子よりも立場が上の人に案内された先に向かった。
早速登録を始めるかと思いきや「先ほどは、私どもの従業員が大変失礼いたしました」と謝ってきた。
「あのー…こちらこそ大人げない対応をしてしまいまして……ホントにすみません……」
さすがに私も謝った。
相手はまだ10代か、いって20代前半くらいだったから、明らかに年下の子なのにやりすぎたよなぁ……
私、見た目は10代だけど、中身はアラフォーだし…
しゅんと、していると上司らしい人がクスッと笑いながら言った。
「あなたもまだまだお若いでしょうに…ふふっ。……コホン。失礼いたしました。私、副ギルドマスターをしておりますヴィエラと申します。この度は本当に申し訳ございませんでした。今後はこのようなことがないようにしっかりと指導させていただきます。それはもうしっかりと」
最後のしっかりとの時の表情がミザリーに似ている気が……
いやいや、気の所為としよう……
「は、はい……よ、よろしくお願いします」
…どうしよう……目が合わせられない……
「本日は冒険者登録にいらっしゃったのでしたよね?私の方でご対応させていただきます。まずは……お名前お伺いできますか?」
!!
ようやく登録できる!
「名前ですか?名前は、ジュリ……………はっ!ジュ、ジュンです、ジュン!!!」
っっあっっっぶねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!
うっかり本名言うところだったー!!
そんなことしたら薬で見た目を変えた意味なくなるじゃん!!
ひとまず前世の名前を拝借したよ……
ジュンって呼ばれても自分のことだと思えるしね
前世の父、こっちでも名前使っていくよー
「ジュンさまですね、承知いたしました。ジョブはなにを?」
「とりあえず魔法師(仮)でお願いします……」
まだ魔力があることしかわかってないから、とりあえずね。
「(仮)?そのオレンジの髪ならとても強力な魔術を使われるのでしょうね。楽しみにしてます」
「アハハハ、アリガトウゴザイマス……」
苦笑しか出なかった。
やっぱりオレンジ髪だもんなぁ……そりゃあそう言われるよね
早めに練習せねば……
「はい、登録完了しました。まずはFランクからですね。ここからどんどんランクアップ目指して頑張ってください!」
念願の冒険者カード!!!
やったぁー!!!
「はいっ!がんばりまぁす!」
ルンルンで答える私にヴィエラは質問してきた。
「今日から依頼を受けることができますが、受けていかれますか?」
「はいっ!!」
「そうしましたら初依頼ならこちらの薬草採取がオススメですよ。地図の見方や冒険への出かたなど学ぶのに最適です」
ニコリと笑いながらおすすめの依頼を出してきたので、せっかくなので受けることにした。
「はい、じゃあそれ受けます!」
私は依頼を受け、ルンルンで冒険者ギルドを後にしたのだった。
「……なぁ、さっきの人……めっちゃくちゃ綺麗だったな!」
ギルドにいた冒険者の男が興奮気味に発する。
するとせきを切ったように男女問わずいろいろな冒険者が続く。
「上品さもあったよね!!」
「簡単には口説いちゃいけない雰囲気纏ってたよな!」
「わかるー!しかもオレンジ髪だろ?」
「オレンジってことは、魔力が高いってことでしょ?」
「そりゃそーだろ!」
「魔術とか、教えてほしい~!!」
「早くランクあがってくんねぇかなぁ……俺、一緒にまわってお近づきになりたい……」
「お前じゃ無理だろ!ガハハハ」
「お前には言われたくないわ!ワハハ!」
ギルド内は謎の新人冒険者・ジュンの話題で持ちきりになっていた。
そんな中、
「ふ~ん…」
意味深な笑みを浮かべる男が1人いた。
ぽ~っと顔を赤くする男数人の様子からわかるように、本人の与り知らないところでいつの間にか高嶺の花として名を轟かすジュリエットなのでした。




