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第2話 そうだ、冒険者になろう

首都・アルカディアの町外れのさらに奥。

家もまばらな森近くにある青い屋根の建物を訪ねていた。


バンッ!


「アイリスいるー?聞きたいことあるんだけどー??」


「!?ジュ、ジュリエットさま!?きゅ、急に、ど、どうされたのですか!?」


部屋の奥から白衣のようなものを着ている小柄な女性が姿をみせた。

彼女・アイリスは、白い肌に栗色のパーマをかけたような髪の毛を揺らしながら、肩で息をしていた。

汗で滑って落ちそうになったメガネを戻しつつ尋ねた。


相変わらず小動物みたいだなぁ~

ヒーローに守られるヒロインって感じ

私だったら幼なじみのちょっと意地悪なヒーローと両片想いとかのお話にするかなぁ~!

あ、でも色んなヒーローから迫られるハーレムものもアリか?

でもアイリスの性格的に断るのとかできなさそうな気がするし……

うーーん……



「ジュ、ジュリエットさま…?」


用件も言わずずっと考え込んでしまった私にアイリスが声をかけてきた。


「はっ!きゅ、急に来ちゃってごめんね!びっくりしたよね?実はさぁ作家業関連で冒険者やろうと思ってんだよね。で、見た目変える薬とかアイリス作ってないかなと思って」


「ぼ、冒険者!?ジュリエットさま、本気ですか!?危ないことはご存じですよねぇ!?今からでも考え直してください…!」


さっきのオドオドとした感じが全くなくなったアイリスに笑いながら答えた。


「そんなに心配しないでよー!次なるヒット作を生むには必要なんだもん!そーれーにー!私がそんなに危ないことやると思う?取材がメインだし、危なくない範囲でやるに決まってるじゃん」


まぁミザリーにバレない範囲じゃないとほかの取材もさせてもらえなくなるに決まってるからなんだけど……。



私の言葉を聞いてもなお心配そうなアイリスだったが、私が退かないとわかったようで「あ、あの、少し、お、お待ちください…」と言い残し部屋へ戻っていった。 


いかんいかん…

アイリスをみてるとつい創作意欲が湧いちゃうんだよなぁ

だって…なんかめっちゃヒロインなんだもん!!

まず見た目は可愛いでもう完全にそう

まぁこっちの世界で知り合った人みんな見た目で言ったら確実にヒロインやろって人しかいないけど。

それにアイリスの『ちょっと(?)オタク気質』な性格は前世でめっちゃ流行ってたし!!

そうなったらアイリスで妄想しないなんて、編集者としての名が廃れますわ!!

もとだし、編集者関係ないと思うけどね!(笑)



そんなことを考えながら椅子に座っていると、何種類もの薬を持ったアイリスが部屋から出てきた。


「お、おまたせ、し、しました…」


「あ、あった?ありがとー……ってそんなにあんの!?」


容姿を変える薬って1種類かと思ったんだけど、そんなにあるとは……まじか……


私が驚愕していると、アイリスが目線を合わせずに告げてきた。


「ご、ご要望の、よ、容姿を変える薬は、い、1種類、です。で、でも冒険者になるなら、ほかの薬も、持っていって、いただかないと、容姿を変える薬は、お渡し、できません…!」


いつもとは違い、大きな声で自分の意見を伝えてくるアイリスに、彼女との初対面を思い出してくすりと笑ってしまった。


「な、なにを、わ、笑ってるんですか…!わ、私は、ほ、本気です…!」


バカにされたと思ったアイリスが怒っていた。

自分の意見を伝えつつ、一歩も引かない感じが出会った頃に重なって見えたのだ。


「ちがうちがうー!なんか初めて会ったときのアイリスを思い出しちゃってさぁ~」



私の言葉にアイリスは固まる。


「!!」


「私が書いた本を片手に『このスマホというものやパソコンというものは実現可能なのですか!?』って突撃……」


「わーーーーーー!!そ、そんな、む、昔のことは、わ、忘れてください!!」


私が言い終わる前に慌てたアイリスが顔を真っ赤にして言葉を遮ってきた。


毎回この話をするとおんなじように止めてくるから、ついつい言いたくなっちゃうよねぇ~

なんか好きなこととか興味があることに饒舌になっちゃう感じが、前世の自分を見てるようで共感しちゃう~


昔の思い出に浸る私に、アイリスが咳払いをしながら言葉を続けた。


「こほん!は、話を、も、もどします…!ジュ、ジュリエットさま、ど、どうされますか?」


「はい、持っていきます(笑)」


アイリスは、私が彼女との出会いを思い出していることをわかっているからか、顔を赤くしながら薬の説明を始めた。


「こ、この青い瓶に入っているのが、よ、容姿を変える薬です。こ、こちらの黄色い瓶は、救援信号を送る薬です。そしてこの赤い瓶は、一度だけ攻撃を防いでくれる薬です。私も護身用に持ち歩いています。な、なので冒険に出るときは、か、必ずお持ちください」


「はい!ちゃんと持っていきます!!」


護身用に持っていくってことは、まぁ弱っちい魔獣の攻撃くらいは弾いてくれるってことよね?

ありがたや~!


「こ、この緑の薬は、身体的な能力を高める薬で、む、紫の瓶の薬は魔力を高める薬です。こ、こちらもお役に立つと思いますので、お、お使いください」


「え、すごー!ありがとー!でも緑は使うかもだけど、紫は使わないかもなぁ。魔力なんてほぼないだろうし」


あったとしてもそもそも魔術なんて使えるとは思えん


するとアイリスは驚いたように言う。


「え!?ジュ、ジュリエットさまは、ま、魔力が、ある、というより、か、かなり多いはずです!だ、だって銀色の髪の毛ですし…!」


「??銀髪がなんの関係があるの?」


かわいいから気に入ってはいるけど、他に誰もいないし浮いてるんだよね

まぁこんなに美女なジュリエットですから?

たとえ髪の毛が銀色じゃなくても目立つとは思いますけどねー


「ぶ、文献によれば、髪の毛の色は、古の魔力の影響を、どれだけ受けているのかを表しているそうです。一番影響を受けているのは金色、つまり王族の方々です。その次はオレンジ、さらに黄色、緑、青が続くとされています。通常の魔力があれば緑か青になり、それよりも魔力が多い方がオレンジになるんです。でも、金色とオレンジには圧倒的な差があって、多少魔力が増えようとも敵うことはないんだとか」


「へー」


「でも唯一金色である王族に匹敵する髪色があって、それが、ぎ、銀色なんです!ただなぜか銀色の髪の人は人数がかなり少なく、銀色の髪に関する情報を知る人も全然いないので、わかっていないことも多いとか。たしかに色々な文献を読みましたが銀色の髪については全然載ってないんです。一応はある特定の血筋に現れると噂されているんですが…」


「へー……」


「へー……って、ジュリエットさま!?もっと驚くところですよ!?銀色の髪のジュリエットさまは、言わば絶滅危惧種、つまりドラゴンやフェンリルと同格、下手したらあの伝説の『花の妖精』にも匹敵するほどの存在ということですよ!?」


「驚いてるよ、驚きすぎてなんて言えばいいのか分からないんだよ…」


だってチートすぎない??

漫画で読んでた異世界系のやつって確かに何かしらのチートあったよね

え?なに?転生チートって必ずつくもんなの??

ありがたいけど、転生しないとつかないものなの?

どんな世界線でもついてほしいんですけどー??

カミサマきいてますー??

まぁ私カミサマとか会ったことないんだけどね。。。

はぁー……前世で漫画読んでたときはチート気づかないってある?って思ってたけどあるんだなぁ

まさか私もそっち系だったとは

無自覚系の主人公たち、ごめんよ

心広いだろうから、許して仲間に入れてくださいませね



「……まぁ、魔力があるなら選択肢が広がったってことで!魔術もやってみるかー!」


魔術とか異世界感あっていいよねぇ~楽しみ増えたし、私、転生しましたって感じ~!


「アイリス、ありがとね!」


「い、いえ、お、お役に立てれば、よ、よかったです…」


笑みを浮かべながらそういうアイリスは、やっぱり可愛かった。



「また来るね~」と言い残しアイリスの家を後にするのだった。


なにはともあれ、これで冒険者になれる!

さっそく明日こそ冒険者ギルドにいくぞー!!

……はっ!ってことは、明日薬飲むってことですよね!?

……苦くないって信じてるからね、アイリス~~!!!!!

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