第23話 固有魔術と気づかない恋心
私の未熟な魔術のプチ(?)暴走をあっさりと消してしまったアレックス様。
なんの説明もしてこないので、気になって仕方ない私はアレックス様に詰め寄っていた。
「どーゆーことなのか説明してください!アレックス殿下!」
私の詰め寄りに視線をそらすアレックス様。
「いやー……」
説明を濁そうとしてくるアレックス様だったが、少し呆れ気味のギルバート様がはっきりと告げる。
「殿下、さすがに誤魔化すのは無理だと思いますよ」
ギルバート様の言葉に観念したのか、アレックス様は「はぁー」とため息をしたあと
「あれは固有魔術だ」
と言ってきた。
「固有魔術…?」
「固有魔術は、ある一定の魔力を持つ者のみに現れるというその人特有の魔術になります。基本的にはオレンジ髪以上でないと現れないと言われているので、ほとんどの人間は知らないし、現れることもありません」
なぜかため息をつきながらギルバート様が説明してくれた。
オレンジ髪以上ってことは……
「あなたの予想通り、おそらくあなたにも現れると思いますよ、スチュワート子爵令嬢」
考えを読まれていたようだ…。
ってか銀髪、チートすぎない?!?
カミサマ銀髪好きとか?
そんなことを思っていると、
「俺の固有魔術は『無効化』だ。あらゆるものを無効化することができる」
「へぇー!便利ですね!」
キラキラしながら感想を伝えるが、どこかアレックス様は気まずそうに答える。
「……そうでもない。普通に魔術を使うより魔力の消費もデカいうえ、自分で選ぶことができるものでもないからな」
「選ぶことができない…ってことは、もう私も決められてるってことですか?」
「さぁな。いつ決まるかはわからないが、自分が欲しい魔術が手に入るとも限らないってことだ」
えーーー
私だったら千里眼的なのもらってラブが生まれそうなところを見つけるとかの能力欲しかったのに……
色々考えながら、ブツブツ言っていると、大きな音が。
パンッ!
アレックス様が手を叩いたのだ。
「いつ発現するかもわからない固有魔術を気にするより、魔力の増やし方を学ぶほうが先だな。ジュリエット、もう1回やるぞ。さっきよりも込める魔力を減らすんだ。何段階も増やすのではなく、1段階だけ増やすイメージだ」
「……はい」
そんなこと言われても、さっきもちょっとってゆーか、1割増くらいしか上げてないつもりなんだけどなぁ……。
さっきの10分の1だけあげるイメージでやってみるかー?
込める魔力量のイメージなんて人それぞれだしな、なんて思いながらそのまま特訓には励むのだった。
この時の私は、威力が上がりすぎた原因が自分の固有魔術『増幅』のせいだとは気づかずに…。
「ーージュリエット!そっちにホーンラビットがいったぞ!しっかり仕留めてみろ!」
魔術特訓の集大成として、数日にわたりアレックス様とギルバート様と冒険に出ていた。
「はいっ!ウィンドカッター!!」
スパッ!
無事にホーンラビットの首にあたり、首と胴体がわかれていた。
「やったー!」
ホーンラビットには申し訳ないと思いつつ、自分の魔術がしっかり当たるようになっていたことが嬉しい。
「よし、よくやった!」
頭をぐしゃぐしゃと撫でながら褒めてくれるアレックス様。
「もー!頭ぐしゃぐしゃになっちゃうじゃないですかー!」
文句を言いつつも嬉しい気持ちを顔に出しきらないように抑えるのでいっぱいだった。
しかしーー
「これで俺たちとの特訓は終わりだな。おつかれさん」
ニカッと笑いながらアレックス様から特訓終了を告げられる。
待ち望んでいた言葉のはずなのに、取材ができるようになるはずなのに、どこかさみしい気持ちが湧いてくる。
その気持ちをみなかったことにするように、私は笑みを浮かべながら、明るい声で話す。
「ホントですか!?ありがとうございます!アレックス様、ギルバート様!これで取材できます~!!」
私のセリフにフッと笑い、アレックス様は声をかける。
「まぁ俺とギルは明日から公務で来れなくなるし、ちょうど良かったな。無茶だけはするなよ?」
「…はい!今度冒険者ギルドでお会いするときは、Cランクになってるかもですよ!」
そんな言葉を交わし、にぎやかな雰囲気でギルドへと戻るのだった。
この楽しい時間を忘れないよう心に刻むかのように。
「はぁーー今日も疲れた……」
依頼完了手続きを終わらせ、ギルド前でアレックス様たちと別れた私は自宅ベッドでここ数日の特訓のことを思い出していた。
「やっと魔術が使えるようになったー!がんばった、私!偉すぎ!!」
喜ばしいはずなのに、喜びきれない自分がいる。
……公務…かぁ……。
次は…いつ来るんだろう……
はっ!何考えてるの、私!!
相手は皇太子で、「おねがい」を聞いてもらっただけだから
もう関わることもないの!
……一介の子爵令嬢が皇太子と話すなんてことが…あり得ないことなんだから……
アレックス様たちとの特訓を思い出し、押し寄せてくる寂しさを打ち消すように気合を入れなおす。
「…よしっ!明日からはついに取材だ!がんばるぞー!」
するとーー
コンコンッ
「失礼します、お嬢さーー……お疲れなのはわかりますが、いささかだらけ過ぎでは…?」
部屋に入るやいなやミザリーに苦言を呈される。
小説を執筆しに行っていると思われているからだとは思うが……解せぬ……。
私が不満そうな表情をしながら体を起こすと、ミザリーは言いにくそうに口を開く。
「大変申し上げにくいのですが……」
「??」
「元婚約者のビルエッド伯爵令息がいらっしゃってます」
「…………はぁ?!」




