第22話 魔術特訓には危険がつきもの?
「お、落ち着け!ジュリエット!少しずつ魔力を弱めるんだ!」
皇太子は焦りつつ私を諭そうとする。
しかし――
「魔力を弱めるって、どーやってやればいいのかわかんないー!!涙」
さっきやっと魔術を使えるようになった私がそんなことできるわけもなかった。
時は少し遡る――。
「魔術、教えてやろーか?」
皇太子からまさかの提案を受けた私。
その言葉にありがたいと思う反面、さすがに皇太子やギルバート様にそんなことを頼むわけにもいかない。
「お心遣い大変有難いのですが……」
魔術を使えるようになりたいけど、こんな高位の人たちと一緒にいるのもしんどいし……。
そんなことを思ってやんわ~り断ると、皇太子がニヤリと笑いながらとんでもない爆弾を投げてきた。
「ふ~ん。そっかぁ、俺たちの助けは要らねぇってことかぁ……残念だなぁ~。じゃあ今日のことはルードヴィッヒ子爵に伝えないとなぁ…」
「!?!?!!?」
「お前ほど魔力に溢れた奴が魔術が使えないなんてもったいない、ちゃんと教えてやれって伝えないとだろ?」
はぁ~?!
お父様に言うだぁ~!??!
私がお父様に黙ってやってるって思ってるんだ!
皇太子が子爵令嬢に圧をかけるようなことしていーん!?
焦ったが、そのことを悟られないように私は一拍置いてから笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます、殿下。でもお父様にはもう相談していて、教師の方をご手配いただく予定なんです」
ま、全部嘘だけどね。
フッ……私、元社畜アラフォー編集者ですよ?
作家からの締切相談を乗り切るためにいくつ嘘をついてきたとお思いで!?
穏やかな笑顔を浮かべながら勝ちを確信していた。
しかしその確信は早々に打ち砕かれる。
「っぷ、ククッ……娘が婚約破棄したいと言った翌日にはそれを叶えるような男だろ?ルードヴィッヒは。そんな規格外の男が娘の教師を見つけるのに時間がかかるわけがない。つまり…お前はルードヴィッヒに黙って魔術を使おうとしてるってわけだ」
自信満々にニヤッと笑いながら私を追い詰めてきたのだ。
「僕も殿下と同意見です。『あの』スチュワート子爵が令嬢のことを後回しにするとは思えません」
ギルバート様も続き、2人の自信満々な様子に騙せると思えない私は
「……そーです、お父様は知りません……」
渋々認める羽目に……。
お父様の有能さが仇になるとは…!!!
悔しがる私に、皇太子は言葉をかける。
「使えない魔術を使えるようにしてやるって言ってんのに、なぜ逃げようとする?お前は魔術が使えるようになるだけでなく、仕事も捗るわけだろ?」
いや、フツーに未来の皇帝に教えてもらいたい人なんて、いるわけ……
そんなことを考えたが、ふと皇太子にファンクラブのようなものがあることを思い出した。
いるのか。。
私はゴメンなんですけど……
しかし、ここまでバレて断る理由なんてあるはずもなく……
「……はい、お願いいたします…」
そして始まった皇太子の魔術レッスン。
思ったよりもわかりやすくて、なんとなーくだけど自分の中にある魔力というものを感じられるようになってきた。
「ジュリエット、次はあの木に向かってウィンドカッターを使ってみろ」
「はい、皇た……アレックス様!」
皇太子……アレックス様が親切に教えてくれるおかげか、初級の魔術を使えるようになった。
呼び方を変える必要があったのかは謎だけど。
「まさか全属性が使えるとは……さすが『銀髪』ですね」
私たちの様子を少し離れたところで見ていたギルバート様が何かに納得したように話す。
魔術には色々あるが、基本的には火・水・風・土・光・闇の6つの属性からなるもので、大抵の人は2~3個くらいしか使えないらしい。
全属性を使いこなせるのなんて、金髪である皇族のみだったそうだ。
私の銀髪は基本的に謎に包まれているが『金髪と同じくらいの魔力がある』らしいので、ギルバート様も納得したようだ。
「初級はすべて問題なく使えるようになったな」
そう言いながら微笑んだアレックス様に、なぜかドキッとしてしまった。
きっと疲れてるんだ…!
そんなことを思って頭をブンブン振っていると、
「どーした?疲れたか?」
優しく問いかけてくれるアレックス様に
「な、なんでもないです!もっと強いのもやりたいです!」
誤魔化すようにより強力な魔術を頼んだのだ。
この空回りがこの後の私の首を絞めることになるとは思わずに…。
「お、落ち着け!ジュリエット!少しずつ魔力を弱めるんだ!」
アレックス様から指示をもらうも
「魔力を弱めるって、どーやってやればいいのかわかんないー!!涙」
やり方が分からなくてパニくる私。
こんな大きい炎どーしたらいーの!?
さっきよりちょっと魔力多めに使えって言われただけなのに、なんでこんなに大きくなるわけ?!
森に放てば大火事だし、かといってこのままじゃ私が丸焦げになるー!!!
涙目になっている私に、はぁ~とため息をついたアレックス様から声をかけられる。
「ジュリエット、そのファイアボール、俺めがけて投げろ」
「いやいや!無理に決まってるじゃないですか!死にますよ?!」
必死で止める私。しかしーー
「いいから投げろ。そのまま丸焼きになりたいのか?」
と煽ってくるアレックス様。
もうしらん!
そう思ってアレックス様の言うとおりに彼めがけてファイアボールを投げるとーー
シュワッ!
一瞬にして消えてしまった。
……は?
「…よし、これでファイアボールの件は大丈夫だな。次からは注意しろよ……先に他の属性で試すか……」
「いやいやいや!どーゆーこと!?マジで意味わかんないんですけど?!」
私の叫びがこだまとなって響きわたっていた。




