第18話 はじめてのお茶会とはやすぎる展開
「う、うぅぅ~~~ん!よく寝たぁー!」
ここ最近、夜会のためのダイエットのおかげでずっと空腹でなかなか寝付けなかった。
ダイエットから解放され、さらにあのクソ野郎との婚約破棄が進められるからか、とーってもよく眠れた。
今日は久々のフリーデー。
やりたいことが溢れている私にとって嬉しい1日だ。
執筆中の小説も書きたいし、悪役令嬢ものも構想練りたいし。
なにから手を付けようかソファーに座って考えていると、ふと明日の皇女様とのお茶会が頭をよぎる。
逃げられないのはわかってるけど、正直気が重い…
皇女様が嫌とかそーゆー問題じゃなくて、お茶会をしたあとが絶対に面倒なことになるのが目に見えているからだ。
だって子爵令嬢が婚約者と泥沼関係ってだけでも十分注目を集めるのに、そのあと皇太子に別室に連れて行かれた挙句戻らないんだよ?
しかも明日以降は『皇女様のお茶会に参加できた子爵令嬢』として新たに注目を集めることになる。
あーーーー!
私は今の『子爵令嬢らしくない生活』がとっても気に入ってるのにーー!!(涙)
コンコンッ
今後のことを考え叫びたい私の気持ちを止めるようにドアを叩く音が部屋に響く。
「はーいー?」
ガチャッ
「お忙しいところ失礼いたします、お嬢様」
「珍しいわね、ベン。あなたが私の部屋にくるなんて」
老執事のベンはジュリエットが幼い頃からいる執事で、30人ほどいる執事やメイドの長だ。
この屋敷で知らないことはないと言われるほどで、お父様の執務の手伝いもしている。
幼い頃はよくベンに面倒を見てもらっていたようだが、今では私にも専属メイド・ミザリーがいるから、あまりベンが部屋に訪れることもない。
ベンは部屋に入ると、私が座るソファーの前までやってきて、オールバックにした白髪の頭を下げる。
そして頭を戻すとモノクルからのぞく紫色の瞳を細めながら声をかけてきた。
「ご執筆中に申し訳ございません。明日、お嬢様が皇女様のお茶会に参加されるとお伺いしまして、老婆心ながらお手伝いができないかと参じた次第です」
おそらくミザリーから聞いて私というか、ジュリエットがお茶会に慣れてないことを心配してきてくれたんだろう。
「ありがとうベン。実は今から憂鬱で仕方なかったんだよねー」
「お嬢様にとって久々のお茶会ですからな。流行りのお菓子から皇女様、おそらく参加されるであろうご令嬢のことをこの老骨めがお伝えさせていただきます」
頼もしい限りだけど……なんか圧を感じるのは気のせい…??
そんな違和感を抑えつつ、ベンのレクチャーを受けることにした。
まさかこんなに早く2回目の地獄を見ることになるとは知らずに…。
ーーそしてお茶会当日。
私はエレノア様の圧に負け、エレノア様とまだ来ていないオリヴィエ様の間というまさかの席に座らされていた。
今日…無事に帰れるよね…?
そんなことを思いながら遠い目をして席に座っていると、
「遅くなってごめんなさいね!」
との声が聞こえた。
全員が立ち上がり、オリヴィエ様を迎えようとしたら、皇太子までいたことに気づく。
慌てながらもカーテシーをし、挨拶をする。
「「フラミューニ帝国の若き太陽にご挨拶申し上げます」」
その様子に皇太子が、声をかける。
「急に来て悪かったな、姿勢を直してくれ」
その言葉にお茶会に参加している全員が姿勢を戻したが、若干困惑しているようだった。
そんな空気を壊すようにオリヴィエ様が私に向かって声をかけてくる。
「ジュリエット!よく来てくれたわね!一昨日からずーっと楽しみにしてたのよ、私!」
前世で飼ってたわんこが出迎えてくれた時のように喜んでくれる皇女様に思わず笑みがこぼれてしまう。
「くすっ、私もお会いできて嬉しいですわ、皇女殿下」
「「っ!?」」
お茶会に集まった全員が息を呑む。
もちろん、皇太子もだ。
「??」
あの元気なオリヴィエ様のことだから、すぐになんか返ってくるかなと思ってたけど、なんにも返ってこない…?
そんなふうに不思議に思っていると
「ジュリエット、ダメよ!そんな笑顔見せたらどんな男性もすぐに落ちちゃうわ!!」
「は……?」
オリヴィエ様の言葉に困惑しているとエレノア様が続く。
「ホントですわね、オリヴィエ様。こんな可愛い笑顔を見れるなんて今日このお茶会に来た甲斐がございますわ~。そうですわよねぇ、皇太子殿下?」
「な、何言ってんだ。俺はスチュワート子爵令嬢に例の『おねがい』の件で来ただけだ」
そーなん!?
そう思った私が皇太子のほうを向くと、プイッと後ろを向いて
「だが今日はやめておこう。スチュワート子爵令嬢にとっては初めてのお茶会だから邪魔しちゃ悪い。次に会うときまでにちゃんと決めておけよ」
といって去ってしまった。
心なしか頬が赤かった気がするけど……気のせいかな?
ってか今日聞く気がないなら、なんで来たんだか。
うーーん??と疑問を抱いているとオリヴィエ様が声をかけてきた。
「お兄様もいなくなりましたし、お茶会はじめましょー!」
その言葉を合図に本格的にお茶会がはじまったのだった。
「……はぁーーーー疲れた……」
帰りの馬車のなかで私は疲れMAXになっていた。
ベンのおかげでなんとかやり過ごせたけど……
結局何人かはずっと私が気に入らなかったみたいで、いろんなことに気を使いすぎた……
作家との打ち合わせより疲れたんだけど……
しばらくはお茶会はお休みにさせてください……
だから誰からも誘ってこないようにしてください…
お願いしますよ!カミサマーー!!涙
馬車に揺られていると、ようやく自宅に着いた。
一刻も早くベッドにダイブしようと考えていたが、ベンが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ、お嬢様。お茶会はいかがでしたかな?」
「ただいま、ベン。ベンのおかげで無事に終わったよ~!……でもすっっっっごい疲れたからしばらくはお茶会遠慮したい……」
げっそりとした感じで話す私に、ベンは笑いながら答えた。
「ホッホッホ、それはそれはお疲れ様でございました、お嬢様。しかしながら…もうすでにお茶会のお誘いのお手紙が何通も届いておりますよ」
「え?」
「どこからかお嬢様が皇女殿下のお茶会に参加されたのが噂になったようです」
最悪すぎる……ガチかよ……
もう何もする気力がゼロになった私は、
「……もう今日はなんにも考えられないから部屋に行くわ…」
と言って疲れた体を奮い立たせながら部屋へと向かう。
するとベンから言葉をかけられる。
「承知いたしました、お嬢様。ゆっくりお休みください。…あ、そうそう。旦那様から伝言を預かっております」
「伝言?」
階段の手すりに手を置いたまま振り返ると、ベンは笑みを浮かべながら伝言を伝える。
「『婚約破棄がきまった、あとは条件のすり合わせだけ』とのことです」
「……は?」
言ってる意味がわからずフリーズする私をよそにベンは続ける。
「本日皇帝陛下の許可印をいただけたそうで、明日ビルエッド伯爵家で条件のすり合わせを行う予定とのことです。ですのでお嬢様から出したい条件があれば明日の朝食までにーーー」
「待ってベン!え、私が婚約破棄したいって言ったのって、昨日の夜中だよ!?なのにもう許可がとれたってなに!?はぁーー?!どゆことーー?!?!!?」
あまりの展開の速さに混乱が止まらない。
昨日の今日で婚約破棄が成立しちゃうってどーゆーこと!?
お父様、仕事早すぎない!?!!




