第14話 だれかあの暴走列車、とめてくれません?
もやもやしながらも皇太子のあとをついていくと、とある部屋に入るようにうながされた。
パタンッ
ドアを開けると中には、白を基調としたロココ調猫脚ソファーが3脚置いてあった。
ソファーには第二皇子のリュカ様とグレイフォード公爵令息のギルバート様が座っていた。
部屋に入ったのが皇太子と私だとわかると、リュカ様は
「あっ!兄さま!どこに行ったのかと思ってたらスチュワート子爵令嬢をさがしに行ってたんですね!」
と言って笑顔で私たちを迎え入れた。
リュカ様の可愛すぎる笑顔を見た私は、脳内暴走が始まっていた。
リュカ様ってなんかショタみがあって可愛いのよね~!
金髪碧眼で兄のアレックス皇太子とは真逆な中性的なお顔で性格と同じく柔らかそうな髪の毛が少しクルクルしてて、見た目も相まってまじで天使みた~い♡
アイドルとかだったら絶対愛されキャラとして周りの子にイジられて、ファンのお姉様に貢がれてる……
そんな妄想をしていると、皇太子が声をかけてきた。
「おい、いつまで立ってるんだ?こっちにきて座れ」
『おい』?
私への呼び方も気になったが、指定している皇太子の隣に座るなんてことできるわけもなく…
「ではこちらに失礼いたします。皇太子殿下のお隣なんて恐れ多くて座れませんので」
丁重にお断りした。もちろん笑顔を添えて。
その返答に気分を害した皇太子は、ぶすっとした表情を浮かべていた。
そりゃ無理に決まってるでしょ
いずれ皇帝になる男の横に一介の子爵令嬢が座れるわけ!
皇太子が不貞腐れてしまい、部屋の空気が重くなった。
その空気に耐えられなくなったのか、ギルバート様が皇太子に声をかける。
「殿下、スチュワート子爵令嬢から話を聞くために来てもらったんじゃないんですか?」
しかし皇太子は一向に口を開かないでいた。
このまま皇太子の機嫌が直るまで待つか、それとも彼の言葉に従い早々に帰れるようにするほうがいいのか考えあぐねていた次の瞬間、バーンッというドアを開く音が部屋に響き渡る。
そして
「お兄様!女性にそんな態度とるなんて男の風上にも置けませんわ!反省してください!」
と第一皇女であるオリヴィエ様がヴァイオレット公爵令嬢のエレノア様を引き連れて部屋に入ってきた。
オリヴィエ様は長い金髪のツインテールを揺らしながらズンズンと進み皇太子の隣に座るやいなや、女性への接し方について注意していた。
オリヴィエ様は黙っていれば絵本に出てくるようなお姫様そのもので、ふわふわとしたシフォンのピンクのドレスに、青から少し紫がかったグラデーションになっている瞳がとても映えている。
国民からも愛される彼女は令息からもとても人気で、贈り物が後を絶たないんだとか。
一方、オリヴィエ様の隣にいたエレノア様は『お姉様』みたいな印象。
現に今着てるドレスもアイスブルーのマーメイドドレスで、出るところはしっかり出てて締まるところはめっちゃ締まってるというなんとも素敵な体型がとてもよくわかる。
さらに濃い紫色をした髪の毛は前髪も伸ばしていて、全体的にウェーブがかっていて『THEフェミニン』って感じ。
どんなものを食べてたらあの体型を維持できるのか聞きたい気持ちを抑えているとまだ続いていた皇太子とオリヴィエ様の話し声が聞こえてきた。
皇太子は「わかった、わかった」と言いつつ全然聞いていないことでオリヴィエ様がヒートアップしたようだ。
「お兄様!聞いてます!?」
「聞いてるって言ってるだろ」
その様子にびっくりしたが、それよりもびっくりしたのは残りの人物たちの反応だった。
リュカ様はオロオロと2人の話の行方を見守っていた。
そしてエレノア様は2人の様子を楽しそうに見ながらお茶を飲んでいた。
さらに最初から部屋にいたギルバート様というと……現代で言うマッシュウルフのような緑髪の頭をソファーにくっつけながら、まーったく興味がないのか本を読み始めていた。
そんなんでいいわけ??
それにしても……まだかかる?あれ。
最近小説書く時間とれてないし……さっさと話して帰るか
「皇太子殿下、お話中失礼いたします」
私が声を出すと一同が一斉にこちらを向いた。
「私がこちらに連れてこられた理由は先ほどの件かと思いますのでご説明差し上げたいのですが、よろしいでしょうか?」
その言葉に皇太子は先ほどからしている不機嫌な表情を変えずに答えた。
「……あぁ」
その言葉に私は話を続ける。
「まず、会場で起きたことについては先ほど申し上げた通り、私の婚約者であるレナード・ビルエッド伯爵令息とセシリア・カーソン男爵令嬢が感情豊かに怒りだしたことで騒ぎが起きたという部分については追加でのご説明はございません」
何も追加で説明する気がないと勘違いしたのか、皇太子の眉間にシワが寄っていた。
さらに文句を言われてもめんどくさいので、皇太子が言葉を発する前に話を続けた。
「しかしながら会場ではお伝えしていなかったことがございます。2人の関係についてです。2人は以前より懇意にしているようで、お茶会や夜会にもパートナーとして参加していたそうです。私を誘わずに」
にっこりと話を終えると、
「はぁーーー!?!?!!!????」
皇太子ではなく、その隣にいたオリヴィエ様がブチギレていた。
「なんなの!?その男は!!!そいつを罰することはできないの!?」
荒ぶるオリヴィエ様に、ギルバート様が声をかける。
「オリヴィエ様、ひとまず落ち着いてください…!」
しかしその言葉はオリヴィエ様の火に油を注ぐだけだった。
「これが落ち着いていられるわけないでしょ!?そんなこと平気でできる男がいるの!?婚約者がいるのにほかの女性となんて……クズだわ!その男は!!!相手の女もふざけてるー!!!!」
街を破壊しちゃうゴ◯ラのように口からなにか出そうですよ、オリヴィエ様…
「オリヴィエ姉様……」
オリヴィエ様の向かいに座っていたリュカ様が涙を浮かべていた。
私はオリヴィエ様を止められるであろう唯一の人物・皇太子のほうを見るとーー皇太子はなぜか私の方を向いていた。
目が合い、思わずドキッとしてしまったが、心を落ち着かせてこの場を落ち着かせるため、咳払いをした後、あることを口にする。
「皇太子殿下、夜会会場とは別のお願いを聞いていただきたいのですが、よろしいですか?」




